
韓国大統領選挙で勝利した、最大野党「共に民主党」前代表の李在明(イ・ジェミョン)氏(61)が4日、大統領に就任した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領による非常戒厳の宣布から半年にわたって続いてきた政治と社会の混乱や分断を、改善することが期待されている。ただ、さまざまな困難が予想されている。
3日投開票された大統領選では、李氏が約50%の票を獲得して当選を決めた。
李氏は4日午前、国会議事堂で就任の宣誓と演説をし、「国民を団結させる」と誓った。また、「経済を再生させ、国民を癒やすことから始める」、「この選挙で誰を支持したかにかかわらず(中略)私は全国民の大統領になる」と述べた。
新大統領の李氏には、課題が待ち受けている。
深い分断
まず、極端に分断した国をまとめる必要がある。
今回の選挙では、尹政権で雇用労働相を務めた、与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)候補(73)を破った。李氏はこれまで、同党と激しく対立してきたが、大統領就任後は、国民の信頼回復と分断修復のため、協力しなくてはならない状況も生まれるだろう。
韓国のコンサルティング会社「ミン・コンサルティング」のパク・ソンミン社長は、尹政権と、その前の文在寅(ムン・ジェイン)政権の下で、「二極化が何年にもわたって進み、韓国の政治状況はひどく分断されている」とし、次のように述べた。
「李氏は国民の連帯を訴えるだろうが、深いジレンマに直面している。和らげようとしている分断を深めることなく、多くの人が反乱未遂とみなしている出来事の責任追及を、どうやって進めるのかということだ」
今回の大統領選で「国民の力」は敗れたが、同党の大統領だった尹氏は依然、非常に強力かつ声の大きい支持基盤を保持し続けている。その状況はすぐには変わりそうにない。
尹氏を支持しているのは、主に若い男性と高齢者だ。右派特有の強い主張に共鳴する傾向があり、尹氏が出した非常戒厳は国を守るために必要だったと信じている。「国民の力」は不正選挙の被害者だと考えている陰謀論者も多い。
尹氏の弾劾案が国会で可決されると何千人もが抗議し、1月に尹氏が拘束されると支持者の一団が裁判所に乱入し、警官に暴行を加えた。
尹氏が政治の表舞台からいなくなった今、支持層に生じた空白を誰が埋めるのかが問題となっている。
刑事裁判
李氏の勝利は驚異的なカムバックといえる。汚職疑惑での捜査や家族間の確執など、李氏は政治的なスキャンダルにまみれていた。
現在も公職選挙法違反に問われており、最高裁で裁判が続いている。
李氏に有罪判決が出た場合、どうなるのかは不明だ。法律では、現職の大統領は内乱や反逆を除き、刑事犯罪で起訴されないことになっている。
政治姿勢
李氏は労働者の家庭で厳しい幼少期を過ごし、苦学して人権派弁護士になり、政治家に転身した。そうした経歴を公言し、忠実な支持層をつくり上げている。
一方で、人を不愉快にさせるとして、李氏のスタイルを批判する人もいる。
2022年に「共に民主党」の大統領候補になると、リベラルな姿勢を打ち出して選挙戦を展開。ジェンダー不平等の問題に取り組むと約束するなどした。
しかし、大統領選で尹氏に敗れた後には一転。中道寄りで多くの人の支持を得られやすい政策を掲げるようになった。
今後はそうした政治家としてのスタイルや姿勢が、これまで以上に注視されることになる。
米トランプ政権
李氏は外交でも難題に直面する。とりわけ重要なのは、アメリカのドナルド・トランプ大統領による関税の打撃を、交渉によって和らげることだ。
トランプ政権下のアメリカとの同盟関係のかじ取りも、喫緊の課題となる。
前出の「ミン・コンサルティング」のパク氏は、「韓国の差し迫った国内課題は、グローバルな力学とますます絡み合っている」と指摘。アメリカが韓国の重要な貿易相手国であり、安全保障の同盟国でもあることから、韓国の経済と国防に影響を及ぼすとみている。
パク氏はまた、需要の低迷と成長の鈍化がすでに韓国経済に打撃を与えているため、アメリカとの貿易協定は最重要課題だとした。
(英語記事 South Korea's new president Lee Jae-myung pledges to 'unite' country/South Korean opposition wins presidency after months of political chaos)