2025年6月22日(日)

BBC News

2025年6月4日

物資を運ぶガザのパレスチナ人

イスラエル国防軍(IDF)は3日、パレスチナ・ガザ地区の物資配給センターへ続く道を「戦闘区域」とみなすと警告した。配給センターは4日、終日閉鎖される。

ガザでは先週から、アメリカとイスラエルが支援する「ガザ人道財団(GHF)」が援助物資を配給している。GHFは、4日に施設を閉鎖して「更新と、組織と効率の改善」を行うと発表した。

IDFは、ガザ住民の配給センターへの立ち入りや、配給センターへ続く道の移動が「禁止される」とした。

GHFは、物資の配給を5日に再開するとしている。

ロイター通信によると、GHFのスポークスマンは、戦闘区域との境界近くを移動する「歩行者を誘導」し、「混乱や事態が激化する」リスクを軽減するよう、IDFに要請したと説明。

「援助を受ける民間人の安全と尊厳を確保することが、我々の最優先事項であることに変わりはない」とした。

GHFの配給センター周辺では3日連続で、民間人が銃撃され死亡する事態が起きている。

南部ラファでは3日早朝、配給センターに集まったパレスチナ人の住民に対しIDF兵が発砲し、少なくとも27人が殺害されたという。イスラム組織ハマスが運営する民間防衛隊が主張した。

これに対してIDFは、配給センターへ行くための「指定されたアクセス・ルートから外れて」IDF兵へ接近しようとした複数の人物を兵士が特定し、発砲したと発表した。

南部ハンユニスにあるナセル病院のアテフ・アル・フート院長は、3日朝に死者24人と負傷者37人が搬送されてきたと話した。いずれも銃創を負っていたという。院長は、イスラエル軍が「ラファ西部で援助物資を待っていた大勢の民間人」に向かってイスラエル軍が発砲したと話した。

ハマス運営の民間防衛隊のマフムード・バサル報道官は3日、援助物資配給センターから約1キロ離れたアル・アラム交差点で、IDFの戦車やクアッドコプター(ドローン)、ヘリコプターが民間人に向かって発砲したと主張した。

現地で働く外国人医療関係者は、「とんでもない流血沙汰」が展開し、医療施設は死傷者であふれていると話した。

IDFは声明で、「ガザの民間人が人道援助物資の配給地点にたどり着くのを(自軍兵が)妨げている」事実はないと述べた。

1日に、ラファの配給センター付近でパレスチナ人が射殺されたことを受け、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は2日、独立した調査を行うよう求めた

GHFは「人道支援の原則を守っていない」

グテーレス氏の報道官のステファン・デュジャリック氏はBBCに対し、配給センターの閉鎖は「GHFがどういう団体なのかということについての透明性の欠如」と、「説明責任の欠如」の表れだと語った。

「これらの配給拠点の周辺に武装した男たちがいるのを、我々は確認している。彼らが何者で、誰が説明責任を負っているのか、誰にもわからない」

イスラエルは5月まで11週間にわたり、ガザへの支援物資の搬入を阻止していた。

この影響で、ガザで暮らす約210万人のパレスチナ人が、飢饉(ききん)の「重大なリスク」に見舞われていると、国連が支援する「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」の最新報告書は指摘している。

イスラエルは、国連がハマスによる物資略奪を阻止していないと繰り返し主張している。国連はこれを否定している。イスラエルとアメリカが支援するGHFは、ガザにおける国連主導の物資配給ネットワークにとって代わることを活動目的としている。

GHFの新たな配給システムでは、ガザ住民はIDFの支配地域にある数少ない配給センターから物資を受け取る必要がある。これらのセンターでは、アメリカの武装警備請負業者が使われている。

この仕組みをめぐっては、住民は徒歩で長距離を移動し、重さ20キロの箱を配給センターから自宅あるいは避難所まで運ばなければならないと、批判の声が上がっている。

国連のデュジャリック報道官は、GHFが「人道支援を行わない方法を実演」していると指摘。戦闘区域にある食料を得るために、長距離移動を強要することで「人々の命を危険にさらしている」と述べた。

また、援助物資の配布が「死のわなと化している」とする、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長の主張に同調。こうした戦略は「容認できない」と、デュジャリック氏は述べた。

国連やそのほかの人道支援団体は、GHFが人道支援の原則を守っていないと非難している。

こうした中、GHFの新代表に、キリスト教福音派の牧師で、ドナルド・トランプ米大統領を支持するジョニー・ムーア氏が就任することが発表された。

ムーア氏は、GHFの仕組みを批判して辞任した初代代表ジェイク・ウッド氏の後任。

ハマスが2023年10月7日にイスラエルに越境攻撃を行い、約1200人を殺害、251人を人質として連れ去ったことを受け、イスラエルは、ガザ地区で軍事作戦を開始した。

ハマスが運営するガザ保健省によると、イスラエルが作戦を開始して以降、ガザで少なくとも5万4470人が殺された。そのうち4201人は、イスラエルが3月18日に攻勢を再開して以降に死亡したという。

(英語記事 IDF says roads to Gaza aid centres are 'combat zones' as sites close for day

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c4ge8y4wg7do


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