
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は5日、パレスチナ・ガザ地区でイスラム組織ハマスに対抗するグループに対し、イスラエルが武器を供与していることを認めた。
この発言に先立ちイスラエルのメディアは、国防当局者の話として、ネタニヤフ首相がガザ南部の特定グループへの武器提供を承認したと報じていた。首相の発言は、報道の直後に出された。
複数のイスラエル政治家は、こうした措置がイスラエルの安全保障を危険にさらすと非難している。
ネタニヤフ首相は、ソーシャルメディア「X」のアカウントに投稿した短い動画で「これの何が問題なのか」と述べ、「これはイスラエル兵の命を救うだけだ」、「これを広めるのは、ハマスを利するだけだ」と語った。
ネタニヤフ首相が言及したのは、イスラエルが首相の承認のもとで、ヤセル・アブ・シャバブ氏という人物が率いるガザ地区のグループに武器を供与しているとの報道。
このグループは、一部では民兵組織または犯罪組織と見なされているが、自分たちはハマスに対抗する勢力だと主張している。
同グループは、ガザへの支援物資を運ぶトラックを保護するのが目的だと主張している。しかし、実際にはその逆で、物資を略奪しているとの批判も出ている。
深刻な政治スキャンダルになる可能性
一連の報道について、ネタニヤフ首相は軽く受け流す姿勢を見せているが、今後、深刻な政治スキャンダルに発展する可能性がある。
イスラエルの国防当局者は、地元メディアに対し、アヴィグドール・リーベルマン元国防相の主張が事実だと認めた。
野党の極右政党「イスラエル我が家」を率いるリーベルマン氏は、公共放送KANに対し、ネタニヤフ首相がアブ・シャバブ氏率いるグループへの武器供与を一方的に承認したと語った。
リーベルマン氏は「イスラエル政府は、イスラム国(IS)と関係があるとされる犯罪者集団に武器を渡している」と非難し、「私の知る限り、この件は閣議の承認を得ていない」と付け加えた。
イスラエルの国防当局者はその後、イスラエルがアブ・シャバブ氏率いる集団に対し、自動小銃「カラシニコフ」を供与していたことを認めた。これには、ハマスから押収した武器も含まれていたという。
この集団は、イスラエル軍の支配下にある南部ラファで活動している。
しかしアブ・シャバブ氏はソーシャルメディア上に声明を投稿し、イスラエルからの武器供与を「断固として否定する」と述べた。
アブ・シャバブ氏は「我々の武器は簡素で旧式なもので、自分たちの仲間の支援によって入手したものだ」と主張している。
ハマス関係者によると、アブ・シャバブ氏と同氏が率いる集団の活動は以前から問題視されており、集団構成員の暗殺をハマスの軍事部門が開始したと、一部のアラビア語新聞は伝えている。
これに対してネタニヤフ首相の事務所は、「イスラエルは安全保障関係機関のトップ全員の勧告に基づき、さまざまな手段を通じてハマスの打倒に取り組んでいる」との声明を発表した。
この取り組みに対しては、イスラエル議会で野党・民主党を率いるヤイル・ゴラン氏から強い批判が出ている。
ゴラン氏は「X」への投稿で、「ネタニヤフはイスラエルの国家安全保障に対する脅威だ。人質解放や市民の安全確保のための合意形成を図るべきところを、ガザに新たな時限爆弾を作り出している」と非難した。
(英語記事 Netanyahu confirms Israel arming clans opposed to Hamas in Gaza)