
マーリン・トーマス記者、エマ・ペンジェリー記者、BBCヴェリファイ(検証チーム)
イスラエル軍は6日、BBCヴェリファイ(検証チーム)の取材に対し、これまで認めていなかったパレスチナ・ガザ地区南部アルマワシ地区への攻撃を認めた。この攻撃により、少なくともパレスチナ人1人が死亡し、30人が負傷したと報告されている。
アルマワシ地区への攻撃は1日に行われた。イスラエル国防軍(IDF)はこれまでこの爆発について発表しておらず、同軍がインターネットで公開している作戦報告にも含まれていなかった。
同日には、南部ラファの新たな援助物資配給センター付近で発生した別の事案で、パレスチナ人31人が死亡したと、ガザのイスラム組織ハマスが運営する民間防衛隊が発表している。BBCヴェリファイは、この事案を映したとされる映像を検証する過程で、近隣のハンユニスにも別の攻撃があったことを突き止めた。
IDFは、BBCヴェリファイの取材を受けて初めて、同軍が砲撃を実施していたことを認め、「技術的および作戦上の誤り」によるものだったと説明。部隊が「標的」に向けて砲撃したが、砲弾が「それて」ハンユニス沿岸部のアルマワシ地区を「誤って攻撃した」と述べた。
ただしIDFは、自分たちのこうした主張を裏付ける証拠は示していない。
IDFがこのような「誤り」を認めるのは、極めて異例。BBCヴェリファイが、メッセージアプリ「テレグラム」のIDFアカウントの声明を分析したところ、2023年10月にガザでの戦闘が始まって以降、「誤り」や「技術的」あるいは「作戦上の」ミスを認める発表は、4件しか確認できなかった。
位置情報から場所や時間帯を特定
ハンユニスでの爆発を捉えた映像は、1日夜遅くに初めて出回り始めた。映像には、テントで生活していたパレスチナ人の居住区で、血まみれの遺体が土煙に包まれる様子が映っていた。女性や子どもたちが走り回り、負傷者が運ばれていくのを見て叫ぶ姿も確認できた。
※警告:動画には痛ましい内容が含まれます
イスラエルによる攻撃は、避難中のパレスチナ人が身を寄せていた地域を直撃した。国連は、ガザ地区の人口約210万人のうち、90%が住居を追われたと推定している。
攻撃直後、現場には負傷者を搬送するために救急車が到着した。BBCヴェリファイは、現場の映像と、負傷者らが治療を受けた病院での映像を照合し、同一人物とみられる複数の負傷者を確認した。
クウェート野戦病院によると、この攻撃でパレスチナ人1人が死亡し、30人が負傷した。
この映像は当初、ラファの援助物資配給センター付近での事案と、誤って関連付けられていた。
しかしBBCヴェリファイは、映像の位置情報から、撮影場所が配布拠点から約4.5キロ離れたハンユニス市内だと特定した。
また、太陽の位置をもとに、この映像が日没直前の夕方に撮影されたことも特定した。現場の映像を撮影した地元ジャーナリストも、1日の現地時間午後7時頃に発生した事案だとBBCヴェリファイに証言している。これは、配給センター付近での出来事から数時間後だったとされる。
IDFの声明では、ハンユニスでの爆発による死者数は明らかにされておらず、「現在、事案を調査中」だとしている。
ハマスが運営する民間防衛隊は、ラファの配給センター付近での「イスラエル軍の銃撃」により、パレスチナ人31人が死亡したと発表している。
イスラエル軍は当初、現場付近でパレスチナ人に発砲していないと主張していたが、その後、軍関係者がBBCヴェリファイに対し、部隊が警告射撃をしたと明らかにした。
ホワイトハウスが誤った主張
この映像は、BBCと米ホワイトハウスとの論争の中心にもなっている。
BBCヴェリファイは2日にこの映像を再検証し、これがラファの配給センター付近での事案と関連しているという主張を否定した。
しかしこの検証結果を受け、アメリカのキャロライン・レヴィット大統領報道官はソーシャルメディアで、BBCが支援拠点での殺害報道を撤回したと、誤って主張した。
BBCはこれについて、レヴィット報道官の発言は「誤解を招くもので」、「二つの別々の事案を混同している」と声明で指摘した。
BBCは、「我々は一切の記事を削除しておらず、自分たちの報道を堅持する」と強調している。
イスラエルは、ハマスによる越境攻撃への報復としてガザ地区で軍事作戦を開始した。この攻撃では約1200人が殺され、251人が人質として連れ去られた。
ハマスが運営するガザ保健省によると、これまでに少なくとも5万4607人が殺害され、そのうち4335人は、イスラエルが3月18日に攻勢を再開して以降に死亡したという。
(英語記事 Israeli army admits to Gaza strike after BBC Verify investigation)