2025年6月22日(日)

BBC News

2025年6月7日

(左から)マオリ党のデビー・ンガレワ=パッカー共同代表とハナ=ラウィティ・カレアリキ・マイピ=クラーク下院議員は、昨年11月19日に議会議事堂前で行われた抗議集会でもハカを披露した

ニュージーランド議会は5日、昨年の本会議中にマオリの伝統舞踊「ハカ」で抗議したとして、議員3人を登院停止処分とした。

野党のハナ=ラウィティ・カレアリキ・マイピ=クラーク下院議員(22)は、最初にハカを始めたとして、7日間の登院停止処分を受けた。また、同議員の所属政党「テ・パーティ・マオリ(マオリ党)」共同代表のラウィリ・ワイティティ議員とデビー・ンガレワ=パッカー議員は、それぞれ21日間の登院停止処分となった。

3人は昨年11月に、19世紀にイギリス王室とマオリの間で交わされた条約を再解釈する「条約原則法案」を支持するかと問われた際に、ハカを行った。

「条約原則法案」はその後、議会で否決されたが、全国的な反発を招いた。昨年11月の初回審議時には、議会議事堂前に4万人以上が集まり、抗議デモを行った

議会委員会は今年5月、3人に対する登院停止処分を提案。議会を一時中断させたハカの実施が、他の議員を「威圧した」可能性があると指摘した。

クリストファー・ラクソン首相は当時、委員会の判断が「人種差別的だ」との批判を否定し、問題は「ハカそのものではなく」、「政党が議会の規則を守らなかったことにある」と述べた。

6月5日の議会では、処分をめぐる審議の中で緊張が高まった。ウィンストン・ピーターズ外相が、マオリ党を「過激派の集まり」と呼び、この国は「彼らにうんざりしている」と発言したことについて、謝罪を求められる場面もあった。

最年少議員でもあるマイピ=クラーク氏は、涙をこらえながら、「私たちは決して沈黙しないし、決して消されることはない」、「私たちの声はこの議場には大きすぎるのか――だから処分されるのか?」と述べた。

ンガレワ=パッカー共同代表はBBCに、自分たちは「マオリであるという理由で罰せられた」と述べ、「私たちは、何も言い訳することなくマオリとしての在り方を貫き、私たちの人々が必要としていること、期待していることを最優先にしている」と説明した。

今回の登院停止処分は、ニュージーランドの議員に対する処分としては過去最長となった。これまでの最長記録は3日間だった。

ニュージーランドは先住民の権利を尊重する国として長らく評価されてきたが、ラクソン首相率いる中道右派の現政権下では、マオリ社会との関係が悪化している。

同政権は、マオリ向け事業の予算削減を進めており、マオリへの医療サービス向上を目的とした組織の解体計画などが批判されている。

一方、ラクソン首相は政権のマオリ政策を擁護。識字率の向上や、緊急住宅からの子どもの移住支援といった取り組みを挙げている。

今回の緊張の中心にあった「条約原則法案」は、1840年にイギリス王室とマオリの指導者たちが締結した、ニュージーランドにおける民族関係の基本文書とされる「ワイタンギ条約」の原則を、法的に定義しようとするもの。

この法案を提出した右派「ACT(アクト)党」などの支持者は、この条約が人種によって国を分断しており、現代の多文化社会を反映していないとして、再解釈が必要だと主張していた。

一方、法案に批判的な立場の人々は、この法案こそが分断を招き、多くのマオリにとって必要不可欠な保護措置を損なうと警鐘を鳴らしていた。

昨年11月には、法案に反対するヒコイ(平和的な抗議)も発生し、北部から首都ウェリントンまで、9日間にわたって行進が続いた。最終的には参加者が4万人を超え、ニュージーランド史上最大規模のデモとなった。

「条約原則法案」は、政府の委員会が審議継続を不適当と勧告した数日後の今年4月、議会で112対11の大差で否決された。アクト党は定数123のニュージーランド議会で6議席を有している。

(英語記事 Three Maori MPs suspended over 'intimidating' haka

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c4g2ypeqe98o


新着記事

»もっと見る