2025年6月17日(火)

BBC News

2025年6月10日

イスラエル外務省は、スウェーデン人の気候変動活動家グレタ・トゥーンベリ氏が10日朝、フランス行きの便に乗りテルアヴィヴから出国したと発表した

パレスチナ・ガザ地区に到達するのをイスラエル軍に阻止された活動団体の支援船が9日、イスラエル南部の港湾都市アシュドドに曳航(えいこう)された。イスラエル当局は10日朝、乗っていた活動家らの送還を開始したと発表した。

イスラエルによるガザの海上封鎖に抗議し、ガザに人道援助物資を運ぶため航行していたヨット「マドリーン号」には、スウェーデン人活動家のグレタ・トゥーンベリ氏ら12人が乗っていた。

イスラエル軍は先に、エジプト沖でマドリーン号に乗り込んだとされる

イスラエル外務省は、マドリーン号がアシュドド港に停泊したと発表。ヨットの乗員は「健康状態を確認するための検査を受けている」と説明した。

同省はその後、トゥーンベリ氏が送還に同意し、10日朝にテルアヴィヴからフランス行きの旅客機に乗ってイスラエルを出国したと明らかにした。

一方、フランス当局は、フランス人の活動家6人のうち5人が相関を拒否しており、イスラエルの司法当局が処遇について判断を示す見通しだとした。

活動団体「自由船隊連合(FFC)」によると、マドリーン号は、米や乳児用ミルクなど「象徴的」な支援物資をガザに運ぶため、1日にイタリアから出航。イスラエル軍が9日早朝、国際水域でマドリーン号に乗り込んだという。

イスラエルは、マドリーン号を「自撮りヨット」と一蹴し、乗員をそれぞれの出身国に送還するとしている。

マドリーン号には、ブラジル、フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、スウェーデン、トルコの市民が乗船している。その中には、フランスの欧州議会議員リマ・ハッサン氏や、中東の衛星テレビ局アルジャジーラのフランス人ジャーナリスト、オマル・ファイアド氏も含まれる。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は9日、マドリーン号に乗船しているフランス人活動家6人の迅速な帰国を呼びかけ、活動家たちを確実に「保護」するようイスラエルに求めた。

ロイター通信は、スウェーデン外務省が声明で、イスラエル当局と連絡を取っていると明らかにしたと伝えた。一方でトルコは、国際水域におけるマドリーン号の阻止は「凶悪な攻撃」だと非難した。

FFCは、9日早朝にイスラエル軍がマドリーン号に乗り込んでから、12人の乗員全員と連絡が取れていないと明らかにした。

マドリーン号は、ガザの飢餓状況への関心を高めることを目的に、1日にイタリアを出航した。

イスラエルは2007年から続くガザ封鎖について、ハマスへの武器移送を防ぐために不可欠なものだと主張している。

FFCが公開した動画には、イスラエル軍がマドリーン号に乗り込む際の様子が映っている。ライフジャケットを着用した活動家たちは、手を上げて座っている。携帯電話などの機器を船外に投げ捨てているのも確認できる。

イスラエル外務省は、マドリーン号に乗り込んだ兵士が、活動家にサンドイッチやペットボトルの水を配る様子を映した動画を公開した

イスラエル軍がマドリーン号に乗り込んだとの報告の後、FFCはトゥーンベリ氏ら一部の活動家が事前に撮影した短い動画を公開した。

その中で、活動家たちは、「あなたがこの動画を見ているということは、私たちはイスラエル軍あるいはイスラエルを支援する勢力に阻止され、拉致されたということだ」と述べている。

イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は8日、ガザの封鎖を破ろうとするいかなる試みに対しても、イスラエルは行動を取ると警告していた。

カッツ国防相は、「私はIDF(イスラエル国防軍)に対し、『マドリーン号』の憎悪船団がガザ沿岸に到着するのを阻止するため、必要に応じてあらゆる措置を講じるよう指示した」と、ソーシャルメディアに投稿した。

これに対してFFCは、イスラエルによる海上封鎖は違法だと指摘。カッツ国防相の発言について、民間人に対する不法な武力行使を脅すもので、「その暴力を、中傷によって正当化しようとしている」と非難。FFCのハイ・シャ・ウィヤ広報担当は、「我々は脅しには屈しない。世界が注視している」と述べていた。

「マドリーン号は民間船で、武装しておらず、国際海域を航行している。人道支援物資と、世界各国の人権擁護者を乗せている。イスラエルには、我々のガザ到達を妨げる権利はない」とも同広報担当は主張していた。

イスラエルの特殊部隊は2010年、ガザに向かう支援船団を率いていたトルコ船「マヴィ・マルマラ号」に乗り込み、10人を殺害した。

イスラエルはガザ地区を3カ月にわたり封鎖した後、イスラエルとアメリカが支援する「ガザ人道財団(GHF)」による物資配給を優先する形で、ガザ地区への限定的な援助再開を5月末から認めた。GHFによる物資支給は、国連を回避しており、多くの人道団体から非難されている。

国連のフォルカー・テュルク人権高等弁務官は先週、パレスチナ人が「飢餓で死ぬか、わずかに提供される食料を得ようとして命を落とすかという、最も過酷な選択」を迫られていると述べた。

イスラエル外務省は9日未明には「X」への投稿で、「グレタ氏らが行ったのは、宣伝目的だけのメディア向け挑発行為で、積載されていた支援物資はトラック1台分にも満たなかった」と主張。「過去2週間で1200台以上の支援トラックがイスラエルからガザに入っており、ガザ人道基金は、ガザの民間人に対して約1100万食を直接配布している」と述べていた。

さらに、「ガザ地区に支援を届ける方法は存在する。それはインスタグラムの自撮り写真ではない」と付け加えた。

イスラエルが2023年10月7日のハマスによる前例のない越境攻撃を受け、ガザで軍事作戦を開始してから、まもなく20カ月が経過する。この攻撃では約1200人が殺害され、251人が人質として連れ去られた。

ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、それ以降、ガザでは少なくとも5万4880人が殺されている。

(英語記事 Gaza-bound activist boat carrying Greta Thunberg towed to Israel

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c9q0r47x4d7o


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