2025年6月17日(火)

BBC News

2025年6月10日

アメリカとイスラエルが支援する「ガザ人道財団(GHF)」は、9日にガザ南部と中部の施設で「何事もなく」食料を配布したとしている。画像は、南部ラファのGHF施設から受け取った物資を運ぶパレスチナ人(9日)

パレスチナ・ガザ地区南部ラファで9日、援助物資の配給センターへ向かっていたパレスチナ人がまた銃撃を受けたと、複数の住民が訴えている。

ガザ地区でアメリカとイスラエルが支援する「ガザ人道財団(GHF)」の物資配給センター周辺では、民間人が死傷する事態が相次いでいる。

複数の住民は、ラファのタル・アル・スルタン地区にあるGHF施設近くで、武装したパレスチナ人集団から銃撃されたとしている。地元の武装集団から銃撃されたのは初めてだという。また、イスラエル軍からも発砲されたという。

イスラム組織ハマスが運営するガザ保健省は、物資配給のための区域で6人が殺害され、99人が負傷したと発表した。

イスラエル軍はこれらの報告について調査中だとした。

GHFは、9日はタル・アル・スルタン地区の施設を開いていなかったとし、ほかの2施設では何事もなく物資を配布したと説明した。

この4日前には、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、ガザでハマスに対抗するグループに対し、イスラエルが武器を供与していることを認めていた

先月26日に、GHFがガザでの物資配給を開始して以来、ほぼ毎日、GHFが設置した4施設のいずれかの近くで死傷者が出る事案が続いている。

タル・アル・スルタン地区の施設がある、イスラエルの軍事区域を通るルート上では、これまでにパレスチナ人数十人が、同施設に向かっていたところを殺害されている。

過去の事案について、複数の目撃者はイスラエル軍が群集に向けて発砲したと証言している。イスラエル軍は民間人に発砲した事実はないと否定している。ただし、警告射撃を無視して兵士に接近してきた「容疑者」に対しては発砲したとした。

武装パレスチナ人集団、イスラエル軍と連携か

9日の出来事を現場で目撃した人々は、銃を手にした複数のパレスチナ人と、イスラエル軍が、自分たちに向けて発砲したと訴えている。

目撃者らは発砲したパレスチナ人について、イスラエル軍の近くで活動した後にイスラエルの軍事区域に戻ったとし、イスラエル軍と連携しているように見えたと主張した。

目撃者の1人は、GHF施設から食料の入った箱を受け取るために現場に到着した際、民間人のような服を着て、顔全体を隠した若者の集団を見かけたと、BBCアラビア語の番組に語った。

「はじめは、彼らはパレスチナ人の若者で、配給作業を手伝っているのかもしれないと思った。でも突然、私たちに向けて発砲し始めた」と、ヒシャム・サイード・サレム氏は述べた。

「物資の箱を手に入れた人も標的にされ、撃たれた。この襲撃者が何者なのかはわかっていない。彼らは私たちから何もかもを奪った。混乱の中で、私たちから物を盗んだ人物もいた」

目撃者のモハメド・サクート氏は、「私のすぐ後ろで、若い男性が数人射殺された。私はかろうじて死を免れた。自分の頭からわずか数センチのところを、いくつかの銃弾が飛んで行った」と語った。

「当初、民間人を撃っていたのはイスラエル軍だった。でも今日は、ギャングや民兵がいることがわかり、私たちは衝撃を受けた」と、男性は付け加えた。

現場から近い、南部ハンユニスのナセル病院では、銃撃で首に重傷を負ったモハメド・カバガ氏が治療を受けていた。「私たちのことを整理していた覆面武装集団が、私たちに直接発砲し始めた」のだと、ガバガ氏はAP通信に語った。

「私たちは援助物資をもらいに行って、列に並ぶよう言われた。列に並んでいたら突然、こっちに向かって発砲し始めた。立っていたら銃弾があたって、驚いて、めまいがして倒れてしまった」

イスラエル国防軍(IDF)はこうした報告について調査中だと、BBCに述べた。

「何事もなく物資配布」と

GHFは声明で、9日にラファと中部ワディ・ガザ(ガザ渓谷)にある二つの施設を開き、「いずれの施設でも、何事もなく援助物資の配布が進められた」と説明した。

ラファのタル・アル・スルタン地区をめぐる報告についてBBCが尋ねると、GHFのスポークスマンは、「我々の施設周辺では何も起きていない」とした。

しかし、GHFのフェイスブックアカウントには9日午後、タル・アル・スルタン地区にある配給センターが「群衆の混乱」が生じたため閉鎖されたと投稿されている。

GHFのジョン・アクリー暫定代表は、GHFが稼働してからの2週間で、「GHFの配給施設で負傷者が出たり、重大事案が発生したりすることなく」1100万食以上を配給してきたと述べた。

これと同じ期間内に、「援助物資配給エリア」から計127人の死者と1287人の負傷者が病院に搬送されたと、ガザ保健省は発表している。

イスラエルとアメリカが支援するGHFは、ガザにおける国連主導の物資配給ネットワークにとって代わることを活動目的としている。GHFの施設では、アメリカの武装警備請負業者が使われている。

国連やそのほかの援助団体は、GHFの新しい配給システムは中立、公平、独立という人道主義の原則に反するものだとして、協力を拒否している。

イスラエルは5月まで11週間にわたり、ガザへの支援物資の搬入を阻止してきた。この影響で、ガザで暮らす約210万人のパレスチナ人が、飢饉(ききん)の「重大なリスク」に見舞われていると、国連が支援する「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」の最新報告書は指摘している。

アメリカとイスラエルの両政府は、新しい配給システムは、ハマスが援助物資を盗むのを防ぐためのものだとしている。ハマス側は物資略奪を否定している。

イスラエルが2023年10月7日のハマスによる前例のない越境攻撃を受け、ガザで軍事作戦を開始してから、まもなく20カ月が経過する。越境攻撃では約1200人が殺害され、251人が人質として連れ去られた。

ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、それ以降、ガザでは少なくとも5万4927人が殺されている。

(英語記事 Palestinians say local gunmen and Israeli forces opened fire near Gaza aid site

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cev4wd1j249o


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