
ワクチンに懐疑的なアメリカのロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官が9日、予防接種に関して米政府の公式勧告を出す諮問委員会のメンバー17人全員を解任したと明らかにした。
ケネディ氏は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄せた9日付の意見記事で、この措置を公にした。
記事でケネディ氏は、「予防接種実施に関する諮問委員会(ACIP)」における利益相反が、予防接種への信頼を損なっていると主張。「米国民が可能な限り安全なワクチンを受けることを保証」したいとした。
委員17人のうち8人は、ジョー・バイデン政権末期の今年1月に任命されていた。委員のほとんどが、主要大学の医療センターに関係する現役医師や専門家。
ケネディ氏は長年にわたり、いくつかのワクチンについて安全性と有効性を疑問視している。医師や保健の専門家らは、この姿勢を批判している。
ただ、長官に指名された後の上院での承認公聴会では、ケネディ氏は「(ワクチンを)奪うつもりはない」と述べていた。
記事でケネディ氏は、もし現在の委員たちを解任しなければ、ドナルド・トランプ大統領は2028年まで、委員の過半数を任命することができなかったはずだと主張。
「この委員会には根深い利益相反が絶えずあり、どんなワクチンも安易に認める程度の存在でしかなくなっていた」と書いた。
また、保健当局と製薬会社が「国民の信頼の危機」を招いたとし、一部の人々はそれを「誤情報や反科学的態度のせいにすることで」説明しようとしているとした。
ケネディ氏はさらに、「ACIPの委員のほとんどが、ワクチン販売会社を含む製薬会社から多額の資金提供を受けている」と書いた。
米医師会は批判
ケネディ氏の今回の措置は、同氏が上院での承認のための公聴会で示した「保証」に反しているようにみえる。
医師でもあるビル・キャシディ上院議員(共和党、ルイジアナ州)は、ACIPが「変更なしに」維持されるとの確約を、ケネディ氏から得ていたとしていた。
キャシディ氏は9日、「もちろん、いま恐れているのは、ワクチンについて疑う以外何も知らない人々で、ACIPが満たされてしまうことだ」とソーシャルメディア「X」に投稿。「たったいまケネディ長官と話したが、そうならないよう、彼と話を続けていく」とした。
ACIPの委員は、利益相反の開示が義務付けられており、オンラインでその内容が公開されている。
ケネディ氏は今回の記事で、「問題は必ずしもACIPの委員が腐敗していることではない」と主張。「自分たちの理解する公益に奉仕しようとしていることである場合が多い」と書いた。
そして、「業界寄りの狭い正統性を強制する、業界と連携したインセンティブとパラダイムの仕組みに、委員らがどっぷり漬かっていることが問題だ」と主張した。
米医師会のブルース・スコット会長は、委員の一斉解任について、「無数の命を救ってきた透明なプロセスを覆す」ものだと声明を発表。「はしかの流行が続き、子どもの定期予防接種率が低下している状況で、今回の動きはワクチンで予防可能な病気の広がりをいっそう助長する」とした。
ケネディ氏は、後任の委員を誰にするかは明言していない。ACIPは今月25日からの会議で、新型コロナウイルス、インフルエンザ、髄膜炎菌感染症、RSウイルス(RSV)などの病気におけるワクチン勧告について、投票する予定となっている。
BBCは、保健福祉省とACIPのヘレン・キップ・タルボット委員長にコメントを求めている。