2025年6月19日(木)

BBC News

2025年6月11日

炎と煙が上がるウクライナ・キーウ

ポール・アダムス外交担当特派員、BBCニュース(キーウ)

ウクライナ各地の都市に対する、ロシアの大規模なドローン(無人機)攻撃が増加傾向にある。

ロシアは9日夜から10日かけて、またしてもウクライナに空爆を仕掛けた。記録的な規模ではなかったが、「新常態」を象徴するものだった。

首都キーウ上空をドローンが絶え間なく飛び回った。こうした状況は、真夜中を過ぎて数時間にわたり続いた。

ドローンはほぼすべての方角から飛来しているようだった。探照灯が空をくまなく照らし、街中に配備された防空部隊から、オレンジ色の曳光(えいこう)弾が打ち上がった。

ドローンが接近するたびに、重機関銃の低い発射音が街中に響き渡った。

私たちがいるホテルからは、遠くの方で燃え盛る炎が見えた。満月に近い、燃えるようなオレンジ色の月が、まるで競うのを拒むかのように、ゆっくり見えなくなっていった。

大きな爆発音がした。迎撃が成功したか、あるいはドローンが目標に到達したのだろう。

こうした劇的な状況下にいると、大局的な判断力を保つのは難しい。

ドローン攻撃が急増

公式の声明ではいつも決まって、「大規模」という言葉が使われる。

しかし、統計データを見てみると、疑いようのない状況がうかがえる。前線から離れた場所において、ロシアによる全面侵攻の初期以降で最も継続的な爆撃が実施されており、ドローン攻撃も急増しているのだ。

ウクライナ軍参謀本部の報告によると、昨年7月までの3カ月間に、ロシアは計1100機のドローンを発射した。

そして、昨年8月には818機、9月には1410機、10月には2000機以上と、発射されるドローンの数は急増した。

その後も、ドローン攻撃は増え続けている。

今年5月には、初めて4000機を超えた。そして、今月はその記録を上回る勢いだ。

ウクライナ空軍がまとめたデータによると、ロシアは今月に入ってから、24時間あたり平均256発の飛翔体を発射している。

飛翔体の大半はドローンで、シャヘド型攻撃ドローンや、ウクライナの防空システムを混乱させるための、さまざまなおとりも含まれる。

ロシアは2022年末に、イランが提供したシャヘド・ドローンを使い始めた。「シャヘド」は「殉教者」を意味する。

しかし、ロシアは2023年夏ごろまでに、中部タタールスタン共和国エラブガにある経済特区で、「ゲラン」という名の独自のシャヘド型ドローンを製造するようになった。

ウクライナ保安庁(SBU)のアルテム・デフチャレンコ報道官によると、ロシア国内ではこれまでに2万5000機のドローンが製造された。また、それ以前に提供されたイラン製部品を使い、2万機が組み立てられたという。

9日夜の空爆で検知されたドローン315機のうち、実際に攻撃を仕掛けられるのは250機だったと、ウクライナ空軍のユーリ・イフナト報道官は述べた。

「その大半はキーウを標的としていた」と、イフナト報道官はウクライナ・メディアRBCに語った。

国内でドローン製造、継続的に改良か

9日の攻撃では、ドローンに加えて、計7発の弾道ミサイルと巡航ミサイルがキーウに向けて発射された。

それは、長期にわたり苦しんでいるキーウ市民にとって、またしても眠れない夜を告げるものとなった。

「激しさを増している」と、キーウ在住のカティアさんは私に語った。

「前はもっと、感情的に楽だった。なぜか今は、これまで以上にしんどくなっている」

ウクライナでの戦争における変化は、ロシアの攻撃の強度だけではない。ロシアは戦闘能力を向上させている。9日のような夜を数百回も経験してきたキーウ市民は、ロシアの技術のわずかな変化を感じ取っている。

「以前とは違う音のするドローンが増えている」と、カティアさんは話した。

SBUのデフチャレンコ報道官は、ロシアが継続的に改良を加えていると指摘する。

「ロシアのエンジニアたちは、破壊力を強化し、破壊の規模と民間人の被害を最大化するよう命じられている」と、同報道官は説明する。

「加えて、ウクライナの防空システムに対するゲラン・ドローンのぜい弱性を改善するよう、取り組んでいる」

9日の空爆では、複数の集合住宅やオフィスビルなどが被害を受けた。キーウ政府は、軍事目標とみなされる可能性のあるものが損害を受けたかどうか、言及を避ける傾向にある。

ウクライナ文化省は声明で、キーウ市内の聖ソフィア大聖堂が初めて被害を受けたと発表した。

ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録されている聖ソフィア大聖堂は、ウクライナで最も重要な文化的・宗教的遺産の一つだ。11世紀の壮大なモザイク画やフレスコ画で知られる。

爆発の衝撃波で、大聖堂の東側のファサードの、漆喰(しっくい)のコーニス(帯状の装飾)が損傷したが、内部は影響を受けていないとされる。

しかし、「爆発で起きる振動は、構造物の健全性に重大な脅威をおよぼす可能性がある」と、文化省は声明で述べた。

(英語記事 Record number of drone attacks signals dangerous shift in war

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c1w3xrp0jnxo


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