2025年7月16日(水)

BBC News

2025年6月16日

ブレイズ・メトレウェリ氏

イギリス対外情報部(MI6)を、創設から116年で初めて、女性が率いることになった。政府が15日、明らかにした。

18代目のMI6長官になるのは、1999年にMI6に加わったブレイズ・メトレウェリ氏(47)。今秋にも、現職のリチャード・ムーア長官の後を継ぐ。

キア・スターマー首相は、この人事を「歴史的」だとし、「私たちの情報機関の活動がかつてないほど重要」な時期に行われるとした。

また、「ブレイズが私たちの国を守り、私たちの国民の安全を守るために必要な優れたリーダーシップを発揮し続けると確信している」と付け加えた。

現在、MI6の技術・イノベーション部門の責任者「Q」を務めているメトレウェリ氏は、長官任命を「誇りと栄誉に思う」と話した。

また、「MI6は、MI5(情報局保安部)やGCHQ(政府通信本部)と共に、英国民の安全を守り、海外でのイギリスの国益を促進する上で、非常に重要な役割を担っている」と説明。「MI6の勇敢なオフィサーやエージェント、そして多くの国際的なパートナーと、この仕事を続けていくことを楽しみにしている」と抱負を述べた。

MI6はイギリスの安全保障の向上を目的に、国外で情報を収集している。テロの阻止、敵対国の活動の妨害、サイバーセキュリティーの強化などを主な役割としている。

MI6の長官は一般的に「C」と呼ばれ、MI6の職員で唯一、氏名が公表される。上司は外相。なお、Cには部下に「殺しのライセンス」を与える権限はないが、外相にはある。

Cは他省庁のトップや政府高官らと共に、政府の合同情報委員会(JIC)のメンバーを務める。JICは機密情報を受け取り、進行中の状況を分析し、首相に助言する。

メトレウェリ氏は、英ケンブリッジ大学で人類学を学んだ。MI6の姉妹機関のMI5で長官レベルの役職を歴任し、キャリアの大半を中東とヨーロッパで過ごした。

MI5在籍中の2021年12月には、「ディレクターK」の偽名で英紙テレグラフの取材を受けた際、イギリスの国家安全保障に対する脅威は「実に多様」だと主張。

「ロシアそのものではなく、ロシアの国家活動が、依然として脅威となっている」、「(中国が)世界のあり方を変えつつあり、そのことはイギリスに驚くべき機会と脅威をもたらす」などと話した。

複合的な課題に直面

MI6は、過去に類を見ない複合的な課題に直面している。地理的には、ロシア、中国、イラン、北朝鮮が主な原因だ。これら4カ国は緊密に連携し、世界各地でイギリスと西側の利益を損なおうとしている。

また、技術面での課題もある。

MI6の任務には、敵対する国やアルカイダなどなどの非国家集団から機密情報を盗み取る諜報員の採用もある。急速なデジタル革新が進み、多くの情報がオンラインや宇宙から収集されるようになっている現在、敵の先を行って存在意義を保つため、MI6はより速い動きが求められている。

5年間の任期を終えて秋に退任するムーア現長官は15日、メトレウェリ氏の「歴史的な任命」を「心から喜んでいる」とした。

そして、「ブレイズは高度に熟達した情報機関員であり、リーダーだ。また、テクノロジーに関して、私たちの組織の第一人者だ」、「MI6初の女性トップとして彼女を迎えることを、とても楽しみにしている」とした。

メトレウェリ氏が仕えることになるデイヴィッド・ラミー外相は、メトレウェリ氏を「理想的な」候補者だと称賛。イギリスを、「世界的な不安定と新たな安全保障上の脅威」という課題に取り組めるようにするだろうとした。

(英語記事 MI6 appoints first female chief in 116-year history

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cz707xv1553o


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