
セバスチャン・アッシャー記者(エルサレム)
イスラム組織ハマスが運営するパレスチナ・ガザ地区の保健省は16日、アメリカの支援を受けた「ガザ人道財団(GHF)」の配給所付近で、イスラエル軍の銃撃により少なくとも30人のパレスチナ人が殺されたと発表した。
イスラエル国防軍(IDF)はBBCに対し、「自軍に接近し脅威を与えた容疑者らに対して警告射撃を行った」と説明している。
これまでにも、GHFの配給所に食料を求めて集まった住民が、数百人規模で殺されている。GHFの配給所は、国連が「ガザ住民を飢餓寸前に追い込んだ」と警告していた3カ月間の封鎖をイスラエルが一部解除した後に、イスラエルによって設置された。
国連のフォルカー・テュルク人権高等弁務官は、「イスラエルの戦争手段と方法は、ガザのパレスチナ人に恐ろしい、そして到底容認できない苦しみを与えている」と述べた。
国連人権理事会で16日に演説したテュルク氏は、イスラエルが食料を兵器化していると非難し、GHFの拠点付近での攻撃について全面的な調査をあらためて求めた。国連機関は、GHFとの協力を拒否している。
IDFはこれまでにも、支援拠点付近で発砲した事実を複数回認めている。
GHFは15日、治安上の懸念から一時閉鎖していた配給所を再開した。
ガザの保健省によると、16日には南部ラファのアルアラムにあるGHFの配給センター付近で28人が殺された。また、中部ネツァリム回廊にあるGHF拠点では、救助隊が2人の死亡を確認した。
アルアラムで死傷した人々の多くは、近隣のハンユニスにあるナセル病院に搬送された。病院には家族が集まり、イスラム教の伝統に従い、到着から数時間以内に多くの遺体が埋葬された。
ナセル病院のアフメド・アルファラ医師はロイター通信に対し、「配給システムは100%、完全に失敗している」と述べた。
「誰もその配給を受け取ることができない」
「国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)やNGOが再び配給を担い、パレスチナの人々のために再分配を試みるべきだ」
アルファラ医師によると、16日の死傷者の多くは銃創を負っており、頭部に被弾した人もいたという。
この日にGHFの拠点で食料を得ようとしたアフメド・ファヤド氏は、GHFの運営を「わな」だと表現した。
ファヤド氏はロイター通信に対し、「子どもたちに食べさせるための援助物資をもらおうと行ったが、実際にはわなで、殺害だった。みんなに忠告する。あそこには行くな」と語った。
配給開始以降300人以上死亡とガザ当局
アルアラムでは、GHFの食料配給システムが稼働を開始して以降、同様の死亡事案が何回も発生している。
ガザの保健省によれば、5月26日にGHFがガザでの活動を開始して以降、配給拠点付近で少なくとも300人が死亡し、2600人以上が負傷した。
これに対し、IDFは死者数に異議を唱えるとともに、暴力の多くはハマスによって引き起こされたと主張している。
イスラエルはBBCを含む国際報道機関のガザ入りを認めておらず、現地の状況を独自に検証することは困難な状況にある。
イスラエルが2023年10月7日に発生したハマス主導の越境攻撃を受けて、ガザで軍事作戦を開始してから20カ月が経過した。越境攻撃では約1200人が殺害され、251人が人質として連れ去られた。
ガザの保健省によると、それ以降、ガザでは少なくとも5万5297人が殺されている。
(英語記事 Dozens killed by Israeli fire near Gaza aid sites, Hamas-run ministry says)