2025年7月10日(木)

BBC News

2025年6月17日

G7首脳の集合写真。中央に開催国カナダのカーニー首相、左隣りにフランスのマクロン大統領、右隣にトランプ米大統領らが並ぶ。日本の石破茂首相は左から2人目(16日)

主要7カ国首脳会議(G7サミット)が16日、カナダ・カナナスキスで開幕した。G7は同日遅く、イランとイスラエルに軍事衝突の緩和を促す共同声明を出した。同日夜に、予定より1日早く帰国したアメリカのドナルド・トランプ大統領も署名した。

各地で激しい紛争などが起き、世界が分断される中、開催国カナダのマーク・カーニー首相は会合の冒頭、G7のリーダーシップに世界が期待を寄せていると語った。しかし、トランプ米大統領は、中東情勢の緊張の高まりを理由に、同日夜にサミットを離脱した。

トランプ氏は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領とそれぞれ予定していた会談を見送ることになる。

ホワイトハウスは、トランプ氏の早期帰国について、中東情勢に対応するためだと説明した。

複数メディアによると、トランプ氏は帰国後に国家安全保障会議(NSC)を開催するよう指示したという。

今回のG7サミットは、欧州や中東で暴力的な衝突が続く中で開かれた。

カナダのカーニー首相は、妻ダイアナ・フォックス・カーニー氏と共に各国首脳を歓迎した。

円卓を囲んだ全体会合の冒頭で、カーニー氏は「我々は歴史の転換点の一つに集まっている。(中略)この会合のリーダーシップに世界が期待を寄せている」と述べた。

そして、世界がこれまで以上に分断され、危険な状態にあるとし、今後が「この瞬間にかかっている」と述べた。

カーニー氏の両隣には、トランプ米大統領と、エマニュエル・マクロン仏大統領が座った。

カーニー氏はまた、G7サミットの参加国すべてが軍事力を強化しているが、経済の繁栄なくして安全保障はありえないとも述べた。

そして、協力が「新たな繁栄の時代」につながっていくとした。

カーニー氏はさらに、G7首脳が2日間にあらゆる問題について合意に達するとは限らないが、「オープンで率直な」議論を行うだろうと述べた。

トランプ氏、1日早く帰国へ

G7各国の首脳は、国際貿易やロシアによるウクライナ侵攻などの問題について、トランプ氏が全面的な関心を寄せることを期待していた。

しかし、イランとイスラエルの紛争が激化していることを受け、トランプ氏は予定より1日早く帰国すると発表した。

米ホワイトハウスは、サミットに先立って行われた米英首脳会談で貿易協定を締結したことなど、トランプ氏が今回の滞在中に多くの成果を上げたと強調した。

トランプ氏の離脱後も、カナダのカーニー首相はイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、日本の各首脳や、招待国のインド、オーストラリア、ブラジルなどとの協議を進める。

共同声明

G7の共同声明は、トランプ氏がカナダを離れるころに発表された。

G7は、イスラエルは自衛権を保有するとした一方、イランはテロの根源で、核兵器を保有すべきではないと指摘。その上で、中東での敵対行為の広範な緩和につながるような、危機の解決を求めた。これは、G7の団結を維持しつつも、声明の持つ影響力を弱める、外交的な譲歩といえる。

ロシアによるウクライナ侵攻や、イスラエルとイランの紛争をめぐっては、サミットを前に、G7各国の間で意見の相違がみられていた。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースは、トランプ氏は当初、イスラエルとイランの紛争に関する共同声明に反対するつもりだったと報じた。

しかし16日夜には、各国首脳が最終的に合意した共同声明が出された。G7は声明で、「イスラエルの安全保障に対するG7の支持をあらためて表明する」とした。

声明には、「イランは地域の不安定な情勢とテロの根源」であり、「イランが核兵器を保有することは決して許されないとの立場を、我々は一貫して明確に示してきた」とも書かれている。

米国が停戦実現なら「非常にいい」と仏大統領

トランプ氏の早期離脱が明らかになったのと同じころ、マクロン仏大統領は記者団に対応していた。

その中で、イランとイスラエルの停戦に向けた交渉が進行中だと、トランプ氏から「先ほど」聞いたと、マクロン氏は述べた。

「アメリカが停戦を実現できるなら、非常にいい」、「フランスはそれを支持する」と、マクロン氏は続けた。

トランプ氏がサミット初日に帰国することについて問われると、マクロン氏は、アメリカはより広範な協議につながる可能性のある停戦を提案しているとし、「それはいいことだと思う」と述べた。

G8からのロシア排除は「間違い」とトランプ氏

カナダとアメリカの首脳は、サミットに先立って会談を行った。

カーニー氏はその際、G7は「アメリカのリーダーシップなしには、あなたの個人的なリーダーシップなしには、存在し得ない」とトランプ氏に伝えた。

トランプ氏はこれに対し、G7はかつて、ロシアを含めたG8だったと指摘。当時のバラク・オバマ米大統領とカナダのジャスティン・トルドー首相が、ロシアの参加を望まなかったと述べた。

また、ロシアが今も含まれていれば、ウクライナでの戦争は起きなかっただろうとも述べた。ロシアがサミットに参加しないことで、状況が「より複雑」になっているとした。

そして、再びロシアをG7に招待するには、「元に戻せないことが多すぎる」と、トランプ氏は述べた。

米英貿易協定を発表、「英国は保護」とトランプ氏

トランプ氏はイギリスのキア・スターマー首相とも、サミットを前に首脳会談を行った。

両首脳は会談後に記者団の取材に応じた。トランプ氏は合意文書を掲げて記者団に見せた。

トランプ氏は、両国に多くの雇用と利益をもたらす貿易協定だと語った。

スターマー氏は、自動車関税や航空宇宙分野を含むアメリカとの「非常に重要な合意」だと述べた。

そして、「真の強さの表れ」であり、両国にとって非常に良い日になったと付け加えた。

将来的な関税措置について質問が及ぶと、トランプ氏はイギリスはそうした関税から「しっかり保護される」と答えた。

「その理由がわかるか? 私がイギリスを好きだからだ」とトランプ氏が述べると、スターマー氏は笑った。

トランプ氏はまた、スターマー氏について、同氏の前任者たちが6年にわたって試みてきた貿易協定の締結という素晴らしい仕事を成し遂げたと述べた。

米英貿易協定の主要なポイントは次の通り。

アメリカはイギリスから輸入する自動車に対する税率を、年間10万台まで10%に引き下げる

両国は、特定の航空宇宙製品への関税を免除し、航空宇宙分野および航空機製造のサプライチェーンを強化する

イギリスが一定の条件を満たせば、アメリカはイギリスから輸入する鉄鋼およびアルミニウム製品について、最恵国待遇の税率を適用する割当制度を設ける

(英語記事 Trump to cut short G7 visit, citing Middle East, after signing deal with StarmerG7 leaders urge 'de-escalation' but stop short of calling for Israel-Iran ceasefire

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c20n7n29y9lo


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