2025年7月16日(水)

BBC News

2025年6月17日

先週発生したエア・インディア機の墜落事故をめぐり、調査当局がコックピット・ボイス・レコーダー(CVR)を回収した。事故原因の解明に向けた重要な一歩とされている。

墜落したのは、インド西部アーメダバードを出発しロンドンに向かっていたエア・インディアのボーイング「787-8型ドリームライナー」。現地時間6月12日午後1時38分に離陸した直後に墜落した。この墜落で、乗客乗員と地上にいた人々ら、少なくとも270人が死亡したとされている

CVRは操縦室内の音声を記録する装置で、パイロットの会話や警報音、周囲の環境音などが含まれている。

一方、飛行中の高度や速度、エンジンの性能といった重要な飛行データを記録するフライト・データ・レコーダー(FDR)は、事故翌日の13日に機体の残骸から回収されていた

CVRとFDRは、一般に「ブラックボックス」として知られる装置を構成しており、航空機事故の調査において不可欠な手がかりとなる。これらの装置は、飛行の最終局面を再現し、事故原因を特定するために専門家が活用する。

「ブラックボックス」という名称とは異なり、実際にはCVRとFDRの二つの装置は、墜落後の回収を容易にするために共に明るいオレンジ色に塗装されており、反射材が施されている。両装置とも、墜落の衝撃に耐えられるよう設計されている。

今回の墜落事故の原因調査は、インドの航空機事故調査局(AAIB)が主導しており、アメリカおよびイギリスの調査チームが支援している。

15日には、米国家運輸安全委員会(NTSB)の職員が墜落現場を視察した。

この日に発表された声明でNTSBは、「AAIBが詳細な調査を開始しており、またアメリカ製の航空機であることから、NTSBも国際的な取り決めに基づき並行して調査を行っている」と説明した。

インドの複数メディアは関係筋の話として、墜落機を製造したボーイングの関係者と、米連邦航空局(FAA)の職員も現場を訪れたと伝えている。

一方、インド政府が設置した高官級の委員会は、墜落事故の原因を検証するため、16日に初会合を開いた。

オール・インディア・ラジオによると、同委員会は今後3カ月以内に予備報告書を提出し、同様の事故を防ぐための新たな標準作業手順(SOP)を提案する見通しだ。

犠牲者の身元確認作業に遅れ

調査が続く中、現地では遺族らが依然として深い悲しみと衝撃に苦しんでいる。

この墜落事故では、アーメダバードのサルダール・ヴァッラブバーイー・パテール国際空港を離陸して60秒もしないうちに高度を失い、バイラムジー・ジージーボイ医科大学および市民病院の医師らの居住施設に激突した。

乗客乗員242人のうち、イギリス人男性(40)1人を除く全員が死亡した。地上での死者の特定も進められており、当局はDNA鑑定による身元確認作業を慎重に進めている。

週末の時点で、現場からは270体の遺体が収容されたと、医師らが明らかにしている。

アーメダバード市民病院のラジニシュ・パテル医師は16日、DNA鑑定によって90人以上の身元が確認されたと述べた。また、確認された遺体のうち47体が、遺族に引き渡されたとした。

関係者がBBCに語ったところによると、身元確認の作業は非常に遅れており、慎重に進められている。これは、多くの遺体が激しく焼損していたためで、少人数ずつのグループに分けて作業が行われているという。

身元が確認された犠牲者の中には、グジャラート州のビジャイ・ルパニ元州首相も含まれていた。ルパニ氏の葬儀は16日に執り行われた。

一方、アーメダバード市民病院の外でめいの身元確認を待っていたミストリー・ジグネーシュ氏は、14日にBBCの取材に対し、当局から「遺体の引き渡しにはさらに時間がかかる可能性がある」と告げられたと語った。

ジグネーシュ氏は当初、DNA鑑定は通常72時間で終わるため、15日までには遺体が引き渡されると説明を受けていたという。

「まだ行方不明者がいるのに、15日までにDNA鑑定が終わるはずがない。もしめいの遺体がまだ見つかっていなかったらどうするのか。この待ち時間が私たちを苦しめている」と、ジグネーシュ氏は語った。

(英語記事 Investigators find cockpit voice recorder from crashed Air India flight

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/ckgjwj4lvpyo


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