
イスラエルとイランの攻撃の応酬が続くなか、アメリカが過去3日間に、少なくとも30機の米軍機を国内基地からヨーロッパに移動したことが、BBCヴェリファイ(検証チーム)による航空データの分析で判明した。
これらの米軍機はすべて、戦闘機や爆撃機に燃料を補給する給油機。航空機を追跡するウェブサイト「フライトレーダー24」によると、少なくとも7機(すべてKC-135給油機)がスペイン、スコットランド、イングランドの米空軍基地に寄航した。
アメリカのこの動きが、イスラエルとイランの軍事衝突に直接関係しているのかは不明。しかし、英王立防衛安全保障研究所(RUSI)上級アナリストのジャスティン・ブロンク氏は、給油機の移動は「かなり異例」だとBBCヴェリファイに述べた。
そのうえで、アメリカが今後数週間のうちに中東地域で「集中的な戦闘を支援する」有事計画を実行していることを「強く示唆する」ものだとした。
BBCヴェリファイが追跡した米軍機7機は、その後移動し、17日午後の時点でイタリア・シチリア島の東を飛行していたのが飛行追跡データで確認された。6機は目的地を明確にしていないが、残る1機はギリシャのクレタ島に着陸した。
こうした動きについて、アイルランド国防軍の元トップのマーク・メレット氏は、アメリカがイランに核協議での譲歩を迫る「戦略的あいまいさ」政策の一部である可能性があると述べた。
イスラエルは13日にイランの核関連施設への攻撃を開始した。アメリカのドナルド・トランプ大統領がイランに求めた、核開発計画の停止に関する合意の形成期限が切れた翌日だった。
米軍をめぐっては、空母ニミッツを南シナ海から中東に移動したという報道も出ている。
船舶を追跡するウェブサイト「マリーントラフィック」によると、ニミッツは17日の早い時点で、マラッカ海峡をシンガポールに向かっていた。この空母は戦闘機を搭載し、数隻の誘導ミサイル駆逐艦に護衛されている。
ロイター通信が米国防当局者3人の話として報じたところでは、米軍は戦闘機F-16、F-22、F-35を中東の基地に移動したという。ここ数日でヨーロッパに移った給油機は、これらの戦闘機に燃料を補給できる。
大型貫通爆弾を使う可能性
アメリカのJ・D・ヴァンス副大統領は17日、イランの核開発を終わらせるためにトランプ大統領が「さらなる行動を取る必要があると判断するかもしれない」とソーシャルメディアに投稿。アメリカとしてイスラエルの作戦を支援する可能性を示唆した。
イランには、主要な地下濃縮施設が2カ所にあると考えられている。その一つのナタンズは、すでにイスラエルに攻撃されている。もう一つのフォルドは、コム市近郊の山岳部の地下深くにある。
西側の軍幹部2人は、アメリカがこの施設に被害を及ぼすには、大型貫通爆弾(MOP)の「GBU-57A/B」を使わなければならないだろうとBBCヴェリファイに話した。MOPは「バンカーバスター」とも呼ばれる、3万ポンド(1万3600キロ)級の巨大爆弾。
この爆弾は、通常兵器としては唯一、最大60メートルのコンクリート層を破砕できるとされている。この爆弾を搭載できる軍用機はB-2ステルス爆撃機だけだ。
アメリカは最近、インド洋のチャゴス諸島のディエゴ・ガルシア島にある基地に、B-2爆撃機の部隊を配備した。同島からはイランへの攻撃が十分可能だ。
B-2爆撃機がディエゴ・ガルシア島に駐機しているのは、3月末の衛星画像で初めて確認された。ただ、最新の衛星画像では同爆撃機は確認できない。
元英王立空軍(RAF)作戦副長官のグレッグ・バグウェル氏は、B-2爆撃機は24時間の連続航行が可能で、ホワイトハウスが攻撃開始を決定した場合、米本土からも発進できると指摘した。