
カスラ・ナジ、BBCペルシャ語特別記者(ロンドン)
イランの首都テヘランにいる私の女きょうだいの声からは、恐怖とストレスが明らかに感じられる。メッセージアプリ「ワッツアップ」は、音が割れ、途切れることもあるが、奇跡的にまだ時々機能している。
彼女が、ロンドンにいるBBC記者の私に求めるのは、明快な答えだ。
「これからどうなる? 私たちは何をすべき?」。彼女は尋ねる。テヘランにいる人々には、アメリカのドナルド・トランプ大統領が避難を呼びかけている。「彼は本気?」。
テヘランでは12日夜から、イスラエル軍機による砲撃が繰り返されている。イスラエル機は首都上空を自由に飛び回っているようにみえる。対空砲が発射されているが、ほとんど効果がない。
高層ビルの上層階にある彼女の自宅の窓からは、その様子がよく見える。気持ちを落ち着かせるのは難しい。
イスラエル軍は、彼女の自宅がある数キロメートル四方地区の人々に避難を命じた。しかし、彼女は残ることを選んだ。
彼女の自宅近くには、彼女が知る限り軍事的な標的はないという。
それでも彼女は、近くの商業施設が標的になるかもしれないと心配していた。その施設の会社が何をしているのかは知らないということだった。
多くの住民は、隣人が誰なのかや、近くに軍事目標があるのかといったことを知らない。イランの革命防衛隊(IRGC)はその活動の多くを、隠れた場所で秘密裏に行っているからだ。
テヘランの多くの地域では、電気と水はまだ利用できる。だが、食料が不足し始めている。
多くの店が閉じており、今後もそうする店が増えるとみられる。ベーカリーさえ閉店している。小麦粉が不足していたり、店主が避難したと思われたり、理由はさまざまだ。
すでに何十万、もしかすると何百万という人々が避難しているが、私の女きょうだいはテヘランを離れようとしない。行く場所がないというのが大きな理由だ。
ここ数日で多くの住民が、道路渋滞とガソリン不足の中で避難した。
かつて車でごった返していたテヘランの通りは、今では不気味なほど静かだ。
市内に残っている人々は、攻撃を恐れ、ほとんど外出しない。
最近の報道によると、ガソリンスタンドの長い列は緩和され始め、首都から出る道路の混雑も減っているという。
核関連施設の近くに住む住民は、放射性物質の拡散という新たな恐怖に直面している。イスラエルはこのところ、それらの施設を繰り返し攻撃している。
国際的な核監視団体は、13日の攻撃で被害を受けた二つの核施設について、施設の外の放射線レベルは今のところ変わっていないとしている。
イランの人々は、この事態がどこに向かい、いつまで続くのか、知りたがっている。
多くの人は、国外に拠点を置くペルシャ語テレビ局を頼りに、ニュースを得ている。
BBCペルシャ語のテレビサービスとウェブサイトは、重要な情報源となっている。ウェブサイトへのイランからのアクセスは、インターネットの通信が非常に遅いにもかかわらず、ほぼ一夜で倍増した。
トランプ氏はイランに降伏を求めている。しかし、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、イランが降伏することはないと宣言している。
現体制に共感するイラン国民はわずかだが、体制が大きく揺れれば混乱と無法状態が訪れるのではないかと、多くの人が恐れている。
(英語記事 'What should we do?' Seeking clarity in Tehran as Israeli jets fly overhead)