
パレスチナ・ガザ地区で18日、イスラエル軍による銃撃で少なくとも33人のパレスチナ人が殺害された。うち11人は、支援物資を手に入れようとしていた人たちだった。救助隊員や医療関係者が証言した。イスラム組織ハマスが運営するガザ保健省は同日午後、過去24時間で少なくとも140人が銃撃や空爆で殺されたと発表した。
ハマスが運営する民間防衛隊の広報担当者は、ガザ地区を南北に縦断する主要道路「サラハ・アルディン通り」で、食料支援を求めて列を作っていた数千人に対し、イスラエル軍が「発砲し、複数の砲弾を撃ち込んだ」と述べた。
イスラエル軍は、ヌセイラト地区で活動中の部隊が、脅威となる可能性のある形で接近してきた集団に対し、夜間に警告射撃を行ったと説明した。ただし、負傷者の報告については把握していないとしている。
民間防衛隊によるとこの日、ガザ地区の北部および南部であったイスラエル軍による空爆でも、19人が死亡したという。これには、ガザ市ザイトゥン地区の住宅への攻撃で死亡した8人が含まれている。
イスラエル軍は空爆について、ガザ地区における「ハマスの軍事能力を解体するための作戦を実施している」と説明している。
ガザ保健省によると、前日の17日には南部ハンユニスで援助物資を待っていた51人が殺された。一方で国連は、医療支援に関わる提携団体の情報として、死者数は60人を超えたとしている。
目撃者はBBCの取材に対し、イスラエル軍の戦車やドローン(無人機)が、慈善団体のコミュニティーセンターや国連世界食糧計画(WFP)の倉庫付近に集まった人々に向けて発砲したと話した。
イスラエル軍は、部隊がこの付近にいたことを認めており、この事案の詳細を調査中だと述べている。
ガザの民間防衛隊は、17日にガザ市北西部のラシッド通りで援助物資を求めていた7人が殺され、多数が負傷したと発表した。
ガザ市のアル・シファ病院の医師はロイター通信に対し、死者はイスラエル軍による空爆の犠牲者であり、負傷者は銃撃によって傷を負ったと語った。
ウム・フィダ・マスウード氏は、「息子は小麦粉を取りに行き、(負傷して)袋に入れられて戻ってきた」と述べた。
現地のジャーナリストの1人は、いとこが家族のために小麦粉を手に入れた後に喜ぶ様子の動画を投稿した。
「50キロの袋だ。トラックの下から引きずり出した。死と紙一重だった」と、この人物は語っている。
援助物資を求めて死んだ人400人に
ガザ地区の保健省によると、イスラエルとアメリカの支援を受けて設立された「ガザ人道基金(GHF)」が5月26日に最初の配給センターを開設して以降、援助物資を求める中で死亡した人は400人近くに上るという。
GHFは、アメリカの民間警備会社を活用し、国連を介さずにガザ地区の210万人のパレスチナ人に支援を届けることを目的としている。
国連や支援団体は、この新たな支援体制が「中立性、公平性、独立性という人道原則に反する」と指摘し、協力しない方針を示している。
さらに、イスラエルによる11週間にわたる全面封鎖が1カ月前に一部緩和されたにもかかわらず、ガザの住民が壊滅的な飢餓状態に直面していると警告している。
アメリカとイスラエルは、GHFの支援体制によって、ハマスによる支援物資の横流しを防ぐことができるとしているが、ハマス側はそうした行為を否定している。
国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ代表は18日、GHFを「いい加減で、中世のように古く、人を死に追いやるもの」と非難した。
ラザリーニ氏はソーシャルメディアに、「飢えた人々を死に追いやることは戦争犯罪だ。このシステムの責任者は責任を負わなければならない」と投稿。
「これは恥辱であり、我々の集団意識に泥を塗るものだ」
GHFはコメントを発表していないが、声明の中で、これまでに三つの配送センターで3000万食を「無事に」配布したと述べている。
声明は、「我々は、ガザの人々に食料を供給するという唯一の使命に集中し続け、さらに多くの困窮者に届くよう、努力の規模を拡大することを約束する」としている。
一方、WFPは、過去4週間に流通した9000トンの食料援助は、ガザで必要とされている量の「ほんの一部」だと警告した。
また、食料を切実に必要としている人が多いために、主要な輸送ルート沿いに大勢が集まり、輸送中の援助物資を横取りしようとする動きが見られると指摘した。
そのうえでWFPは、「食料配給を大規模に拡大することだけが、状況を安定させ、不安を静め、より多くの食料が来るというコミュニティー内の信頼を回復することができる」と述べている。
ガザで人道問題を担当するイスラエルの軍事組織、イスラエル占領地政府活動調整官組織(COGAT)は17日、トラック85台に積まれた援助物資がケレム・シャロームとエレズ西の両検問所から、それぞれガザ南部と北部に入り、そのうち66台分が回収されたと報告した。さらに380台分の援助物資が国連による回収を待っているという。
イスラエルは2023年10月7日のハマスによる越境攻撃への報復としてガザ地区で軍事作戦を開始した。越境攻撃では約1200人が殺され、251人が人質として連れ去られた。
ガザの保健省によると、それ以降、ガザでは少なくとも5万5637人が殺されている。
(英語記事 Eleven killed by Israeli fire while seeking aid in Gaza, rescuers say)