2025年7月16日(水)

BBC News

2025年6月19日

中国海軍の空母「遼寧」(2018年撮影)

日本近海で、中国海軍が数週間にわたり活動を続けている。日本政府は懸念を示し、中国側に抗議する事態となっている。17日夜には日本の防衛省が、中国海軍艦艇の直近の動向を公表するという、異例の対応を取った。

中国海軍の空母「山東」と「遼寧」の2隻が、数週間にわたり、太平洋上の海域で同時に演習を行ったことが確認されている。これは前例のない動きだ。

両艦からは戦闘機が数百回発着した。うち数機は海上自衛隊の哨戒機に接近し、日本政府が中国側に「深刻な懸念」を表明した。

中国側は、自国の活動は国際法に沿ったものだと主張。「危険な動き」を取っているのは日本の方だと非難している。

防衛省が中国海軍空母の航路を公開

防衛省は17日夜、5月25日以降の、中国海軍空母の動向を公表。「遼寧」と「山東」の航路を地図で詳しく示した。日本政府が、他国の軍の詳細な動向を明らかにするのは異例。

公表された地図によると、両空母は日本の諸島に接近し、日本の排他的経済水域(EEZ)内を航行したこともあった。EEZは沿岸国が海洋資源の探査・開発に関する権利を有する海域だが、他国の船舶の航行の自由は認められている。

「遼寧」が、アメリカの外交政策における、「第2列島線」と呼ばれる防衛ラインを越えて航行したことも、地図で示されている。「第2列島線」とは、日本から米領グアムに至る防衛ラインで、中国の空母がこれを越えたのは初めてだと、日本メディアは報じている。

防衛省は、今回の演習期間中に戦闘機やヘリコプターの発着を500回以上確認したと発表した。

日本政府によると、7日には、「山東」から発進した中国の戦闘機が、海上自衛隊の哨戒機を約40分間追尾。翌8日にも、中国機が海上自衛隊機に約80分間接近し続け、前方を横切るなどしたという。

林芳正官房長官は12日、「特異な接近は偶発的な衝突を誘発する可能性がある」として、中国側に懸念を伝えたと明らかにした。

これに対し、中国外務省の林剣報道官は、「関連海域および空域での活動は国際法および国際慣行に沿ったもの」だと主張。両国は既存の外交ルートを通じて意思疎通を図っているとした。

さらに、「通常の軍事活動を行う中国(機)に対する、日本の艦艇や航空機による接近偵察こそが、海と空の安全にとってのリスクになっている」とし、「日本はこうした危険な行動をやめるべきだ」と主張した。

こうした中、中国軍は18日、最新空母「福建」について新たな情報を発表した。海上試験が順調に進んでおり、年内の就役が見込まれているという。

「福建」は、中国初の電磁式カタパルトを採用する空母で、現在この技術を保有しているのはアメリカの空母のみとされる。

この技術により、空母からはより多様な航空機の発進が可能となり、戦闘機の発進速度も大幅に向上する。

中国国営メディア「環球時報」によると、「福建」からは、戦闘機が満タンの燃料と武器を搭載した状態で発進できる。さらに、従来の空母と比べて出撃回数が「大幅に増加する」という。

中国海軍は2月にも、オーストラリアとニュージーランドの間のタスマン海で演習を行い、両国の懸念を招いた。

両国政府は、中国が事前通告を十分行わずに演習を実施したと不満を表明した。一部の民間航空機は急な航路変更を余儀なくされた。

リチャード・マールス豪国防相は後に、中国海軍の演習は国際法に沿ったものだと認めつつ、「極めて異例な軍備増強」の理由について、より透明性を確保するよう中国に求めた。

(英語記事 Chinese navy drill near Japan sparks concern and protest

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c4gd94r1yd9o


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