2025年7月17日(木)

BBC News

2025年6月20日

イランのミサイル攻撃を受けたイスラエルのソロカ病院(19日)

イスラエル南部ベエルシェバにある病院が19日、イランからのミサイル攻撃を受けた。多数の負傷者が出たもよう。両国の衝突は7日目に突入している。

イランは、標的は病院に隣接する軍事施設であり、病院自体ではないと主張している。イスラエルは、国内各地で報告された攻撃により、271人が負傷したと発表した。

一方イスラエル軍は、イランの核関連施設を標的とした攻撃を行ったと明らかにした。攻撃対象には「稼働停止中」のアラク重水炉や、ナタンズの施設が含まれている。

イスラエルによると、今回の衝突が始まって以来、国内で少なくとも24人が死亡した。他方のイラン国営メディアは、6月15日時点での死者数を224人と報じており、それ以降は情報が出ていない。

米首都ワシントンに拠点を置く「人権活動家通信(HRANA)」は、13日以降にイラン国内で639人が死亡したと発表した。

イスラエルは13日、イランの核関連施設を攻撃し、複数の軍高官や核科学者を殺害。これに対してイランが報復攻撃を行い、紛争に発展した。

イランの攻撃を受けたソロカ病院を取材したルーシー・ウィリアムソン中東特派員は、病院の被害は甚大で、爆発の後も長時間にわたってがれきや煙が空中を漂っていたと報告した。

ウィリアムソン特派員が取材したアロン・ウジ氏は、攻撃が発生した際に救急外来で治療を受けていたが、避難用シェルターに向かう時間はなかったと語った。

「ベッドに横になっていたら、大きな爆発音が聞こえた」とウジ氏は話した。「何かをする間もなく、爆発が起きて天井の一部が崩れ、白い粉に覆われた」。

「ベッドから出る時間もなかった。ちょうど準備をしていたところで、笛のような音が聞こえた」

産科病棟の責任者であるアシェル・バシリ教授は、自身のオフィスから被害の様子が見えたと語った。

「信じられない光景だった」

「建物の上部に亀裂が入り、最初の数時間はそこから火が出ていた。すべてが壊れているように見える」

バシリ教授によると、戦争が始まった時点で、すべての患者をより安全な場所へ移していたという。

「私たちは本当に、本当に運が良かった」

「もっとひどいことになっていたかもしれない。しかし、我々はいまだに信じがたい状況の中にいる。終わっていない。明日何が起こるのか、明後日どうなるのか、まったく分からない。ただ、生きていることに感謝している」

病院当局によれば、火災が建物の一部に広がり、複数の病棟が完全に破壊された。窓ガラスが割れ、天井が崩落したとされている。

イスラエル保健省は、これまでに71人が負傷したと発表している。

ソロカ病院の最高責任者であるシュロミ・コディッシュ教授は、約200人の患者を他の医療機関へ移送する予定だと明らかにした。

ハメネイ師に警告

イスラエルのシャレン・ハスケル外務次官は、19日にイランがソロカ病院を攻撃したことについて、「意図的かつ犯罪的な行為だ」と非難した。

ハスケル次官はXへの投稿で、同病院が南部ネゲブ地域全体の主要な医療拠点だと述べた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「テヘランの暴君たちに全ての代償を支払わせる」と強調した。

イスラエルは、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師にも警告を発した。イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は、ハメネイ師は「もはや存在を許されるべきではない」と述べた。

ガラント国防相は記者団に対し、「ハメネイはイスラエルの破壊を公然と宣言し、自ら病院への攻撃命令を出している」と語った。

ハメネイ師はイランの最高指導者として、国内のあらゆる政策に対して最終決定権を持っている。

イスラエルのネタニヤフ首相は、同国の民放「ニュース12」から、ハメネイ師を標的にするかと問われると、「誰も免責されないよう指示している」と答えた。

ソロカ病院を訪れたネタニヤフ首相は記者団に対し、イスラエル軍が「イランの核計画に非常に大きな」損害を与えたと語った上で、イランには「他にも核関連の標的」や「核ミサイル」が存在すると主張した。

さらに、「私が約束した通り、我々は核の脅威を排除する。この作戦が終了するまでに、イスラエルに対する核の脅威も、弾道ミサイルの脅威もなくなる」と強調した。

ネタニヤフ首相は公共放送「カン」に対しても、イスラエルがイランのミサイル発射装置の「半数以上」を破壊したと述べたほか、核施設の破壊には「あらゆる支援」が歓迎されると語った。

イスラエルはイラクの重水炉などを攻撃

イスラエル軍は、19日にアラク重水炉を攻撃する前に、周辺のアラクおよびホンダブの住民に対し、「できるだけ早く」退避するよう呼びかけたと発表した。

重水炉は、濃縮ウランと同様、原子爆弾の核部分に使用できるとされているプルトニウムを生成する施設。

イラン国営メディアは、同施設付近に2発の飛翔体が着弾したと報じたが、放射線による脅威は確認されていない。

イスラエル軍は別の発表で、ナタンズ地域の施設も攻撃したと明らかにした。攻撃対象には「核兵器の開発に使用される特殊な部品や装置」が含まれていたと主張している。

イスラエルは、イランが最近になって濃縮ウランの備蓄を「兵器化する措置を講じた」と非難している。濃縮ウランは発電にも核兵器にも使用可能だが、イランは一貫して自国の核計画は完全に平和目的だと主張している。

イラン軍は、イスラエルによる攻撃への報復について「制限はない」と警告している。

イラン国営メディアは、イラン政府が国連の国際原子力機関(IAEA)に対し、イスラエルが「核施設への攻撃を禁じる国際法に反する行為を継続している」として正式に抗議を申し立てたと報じた。

国連のフォルカー・テュルク人権高等弁務官は、今回の衝突において「民間人が副次的被害として扱われている現状は、極めて痛ましい」と述べた。

テュルク氏はまた、「民間人に危害を加える意図があることを示す、憂慮すべき扇動的な言動」に対して警鐘を鳴らした。

「この悪循環の激化から抜け出す唯一の道は、最大限の自制、国際法の完全な尊重、そして誠実な交渉への復帰だ」

国際赤十字委員会(ICRC)はソーシャルメディアで、病院は国際法の下で「尊重され、保護されなければならない」と訴えた。

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長も声明を発表し、「すべての当事者に対し、医療施設、医療従事者、そして患者を常に保護するよう求める」と呼びかけた。

アメリカは動くのか

こうしたなか、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、イスラエルの軍事作戦への直接関与を検討している。

ホワイトハウスは19日午後、トランプ大統領が今後2週間以内に決断を下す見通しだと発表した。大統領は、「イランとの交渉の可能性が相当程度ある」と考えているという。

これに先立ち、イランのカゼム・ガリババディ外務次官は、アメリカがイスラエルを支援する形で介入した場合、「侵略者に教訓を与えるための手段を行使せざるを得ない」と警告した。

イランの最高指導者ハメネイ師は、トランプ大統領による降伏の呼びかけを拒否し、アメリカが中東地域に展開する軍事拠点への攻撃を示唆している。

トランプ大統領はこれまでのところ、次の一手について明確な方針を示していない。BBCがアメリカで提携するCBSによると、大統領はイランへの攻撃計画を承認しているものの、実行に関する最終決定は保留しているという。

トランプ大統領は18日、イランへの関与について記者団から問われた際、「やるかもしれないし、やらないかもしれない」と述べた。

追加取材:トム・ベネット記者(エルサレム)

(英語記事 Israeli hospital hit by Iranian missile strike'I was lying in bed... The ceiling fell in': At the scene of Israeli hospital hit by Iran strike

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cy8k79rnynjo


新着記事

»もっと見る