
イランは20日、イスラエルによる攻撃が続く限り、自国の原子力開発をめぐる交渉は再開しないと表明した。この数時間前にはイスラエル国防相が、紛争が「長期にわたる」可能性があると警告していた。
両国の軍事対立はこの日も激化した。イランはイスラエル北部に向けてミサイルを発射し、イスラエルはイラン国内の数十カ所を攻撃するなどした。
イスラエル軍参謀総長のエヤル・ザミール中将はビデオ声明で、国は「長期的な戦い」に備える必要があるとし、「困難な日々」が続く可能性があると警告した。
一方、イランのアッバス・アラグチ外相は、スイス・ジュネーブで欧州各国の外交官と会談。欧州側は、アメリカとの外交努力を再開するようアラグチ氏に促した。
これに対しアラグチ氏は、イスラエルの「侵略行為がやんだ」時にのみ、外交努力を検討する用意があると述べた。
そして、イランの原子力開発計画は平和目的のものだが、イスラエルの攻撃は国際法に違反していると主張。イランは「正当な自衛権を行使」し続けると付け加えた。
「イランの防衛能力については交渉の余地がないことを、はっきりさせておく」とも、外相は強調した。
イスラエルの国連大使は、イランが「集団虐殺のアジェンダ」を掲げ、継続的な脅威を与えていると非難。核関連施設が「解体」されるまで攻撃をやめるつもりがないのだと付け加えた。
欧米の反応
こうした中、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、イランにはアメリカの空爆を回避するための「最大」2週間の猶予があるとしている。トランプ氏は19日の時点で、イスラエルとイランの紛争にアメリカが直接関与するか、今後2週間以内に決める考えを示していた。
「私は(イランに)時間的猶予を与えている。最大でも2週間だろう」と、トランプ氏は記者団に述べた。
その狙いについて、トランプ氏は「彼らが正気を取り戻すかどうか見極めるため」だとした。
また、イランのアラグチ外相と、イギリス、フランス、ドイツ、欧州連合(EU)の外相らとの協議についても、否定的な見方を示した。
「イランは欧州と話がしたいと思っていない」とトランプ氏は述べた。「(イランは)我々と話したがっている。欧州はこの問題で力にはなれないだろう」。
イギリスのデイヴィッド・ラミー外相は、「危険で極めて深刻な」状態にある中東における危機を解決するために、アメリカが「短い期間」を設けたと述べた。
フランスのジャン=ノエル・バロ外相は、イランの外相に対し、「攻撃停止を待たずにアメリカを含むすべての関係国との交渉を検討」するよう求めたのだと、明らかにした。
バロ氏はさらに、「イランの核問題について、軍事的手段による決定的な解決策は存在しない」とし、「体制転換を強いるのは危険だ」と警告した。
戦闘激化、双方で死者
イスラエルは20日、北部ハイファにイランがミサイル20発を発射したと発表した。
この攻撃でイスラエル人女性1人が心臓発作で死亡。この紛争によるイスラエル側の死者は25人となった。
イスラエル国防軍(IDF)も、イラン西部にある弾道ミサイルの貯蔵庫と発射基地を攻撃した。
軍事対立が始まってからの1週間で、イスラエルの空爆によりイランの軍事施設や兵器は破壊され、軍幹部や核科学者も大勢死亡している。
イラン保健省は、国内の死者が15日時点で少なくとも224人に上ったとしている。一方で人権団体は、19日時点での死者を639人と推計している。
イランは報復として、イスラエルに数百発の弾道ミサイルを発射している。