2025年7月16日(水)

BBC News

2025年6月23日

米軍攻撃後のイスファハン核施設。攻撃による破壊の跡と思われる様子が見える(22日)

アメリカ軍がイラン3カ所の核関連施設を攻撃した事態を受けて、ドナルド・トランプ米大統領は22日夜、自分のソーシャルメディアで「なぜイランに体制転換があってはならないのか??? イランを再び偉大にしろ!!!」と書いた。これに先立ちトランプ政権幹部は、会見や米メディアへのインタビューなどで、目的はイランの体制転換ではないと繰り返していた。

同日には国連安全保障理事会で緊急会合が開かれ、イランの国連大使がアメリカを非難すると、イスラエル大使が「国際社会はアメリカに感謝すべきだ」と反論した。

他方、国際原子力機関(IAEA)は同日、フォルド核施設の損害規模について、「確定的には判断できない」との見方を示した。

アメリカによる攻撃後も、イスラエルとイランは23日未明までに、交戦を続けている。

トランプ大統領は、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、「『体制転換』という言葉は政治的に正しくないとされているが、現在のイラン政権が『イランを再び偉大にする(MAKE IRAN GREAT AGAIN)』ことができないなら、なぜ体制転換があってはならない???  MIGA!!!」と投稿した。

これに先立ち、ピート・ヘグセス米国防長官は、今回の攻撃はイランによる核兵器取得を阻止することが目的で、「体制転換が目的ではない」と明言していた。

トランプ大統領はこの後も、「トゥルース・ソーシャル」に投稿し、アメリカはイランの「全ての核施設」を攻撃し、「とてつもない損害」を与えたと主張した。

トランプ氏は「『抹消』というのは正確な表現だ」とも書いた。

さらに、人工衛星画像について共有しないながらも言及し、「表示された白い構造物は岩盤に深く埋め込まれている」、「炎から完全に遮蔽(しゃへい)されている」とした上で、「最大の損害は、地下深くで発生した」と主張した。

大統領は「命中!!!」とも書いた。

トランプ氏はこのほか、イラン攻撃を実施したB-2爆撃機が米ミズーリ州に帰還したことを明らかにした。

さらに、「イランの核施設に対する損害は『甚大』だとされている。攻撃は強力かつ正確だった。我が軍は素晴らしい技術を示した。ありがとう!」と述べ、軍の行動を称賛した。

ただしIAEAは、フォルド施設内でウラン濃縮設備の並ぶ地下ホールにおける損害の程度について、「確定的には判断できない」との見解を示している。

イランの高濃縮ウランは

他方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は同日、イランの60%濃縮ウランの所在に関する「興味深い情報」を得ていると発言した。

ウランを兵器利用するには濃度90%以上が必要とされている。IAEAによると、イランは60%濃縮のウランを約400キロ保有しているとされる。

ロイター通信は22日、イラン政府の「高官筋」の話として、フォルド核施設に保管されていた高濃縮ウランの大部分がアメリカの攻撃前に運び出されていたと伝えた。

ウランの所在についてネタニヤフ首相は、「我々は(高濃縮ウランの)状況を注視している。それは核開発計画の重要な構成要素だ。唯一の要素ではないし、それだけでは不十分だが、重要な要素だ。それについて我々は興味深い情報を得ているが、詳細は差し控える」と述べた。

IAEA、攻撃を確認 被害程度は不透明

IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は同日、アメリカによる夜間の空爆で、イラン国内のフォルド、ナタンズ、イスファハンの各核関連施設が攻撃され被弾したことを確認したと明らかにした。

グロッシ事務局長によると、イスファハンとナタンズの施設は、以前にもイスラエルによる攻撃で損傷を受けており、今回の新たな攻撃によってイスファハンでは「広範囲にわたり、新しく損害」が発生したという。

また、地下深くにあるフォルドの施設については、攻撃の「直接的な影響」を受けたことは「明白」だとした上で、「濃縮設備のある地下ホールの損傷の程度については、現時点では確定的に判断できない」と述べた。

イランの規制当局はIAEAに対し、今回の3施設への攻撃後、「周辺地域における放射線レベルの上昇は確認されていない」と報告している。

国連安保理で非難の応酬

ニューヨークの国連本部では同日、安全保障理事会の緊急会合が開かれた。ロシア、中国、パキスタンが、中東地域における「即時かつ無条件の停戦」を求める決議案を準備していると明らかにし、理事国15カ国に採択を呼びかけた。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、アメリカの攻撃は「ただでさえ混乱状態にある地域にとって、危険きわまりない転換点だ」と述べ、「新たな破壊の連鎖」を終わらせるよう訴えた。

常任理事国・中国の傅聡国連大使は、アメリカの攻撃を「強く非難する」と表明。同様に常任理事国・ロシアのワシリー・ネベンジャ国連大使は、アメリカは「パンドラの箱を開けた」と述べ、アメリカ政府は「明らかに外交に関心がない」様子だと批判した。

イランのアミル・サイード・イラヴァニ国連大使は、アメリカが「捏造(ねつぞう)されたばかげた口実の下」でイランに「戦争を仕掛けた」と非難し、「アメリカの露骨な侵略行為」に対して「自衛権を持つ」と主張した。その上で大使は、「イランの相応な対応」の時期、性質、規模は、イラン軍が決定すると述べた。

イラヴァニ大使はまた、イスラエルのネタニヤフ首相がアメリカを「またしても根拠のない高コストの戦争」に引きずり込んだと非難。アメリカとイスラエルの行動は「国際法にはなはだしく違反している」と主張した。

さらに、イランが「核兵器取得の瀬戸際にある」などどいう「欺瞞(ぎまん)に満ちた虚偽の言い分」をイスラエルが積極的に広めていると指摘。加えて、「国際機関およびフランスやイギリスを含む一部の西側諸国の沈黙、二重基準、共謀も、同様に非難に値する」と強調した。

イラヴァニ大使は、国連安全保障理事会に対し、アメリカとイスラエルの「全面的な責任」を問うよう求めると呼びかけた。

続けて発言したイスラエルのダニー・ダノン国連大使は、世界はドナルド・トランプ氏に感謝すべきだと力説した。

ダノン大使は「本日ここで、全世界が『ありがとう』と言うべきだ」、「多くがためらっているなか、行動してくれたドナルド・トランプ、ありがとう」と続けた。

また、国連の一部ではアメリカとイスラエルを「非難」する声があるものの、「イランが民生利用をはるかに超えてウランを濃縮し、我々の抹殺に備えて山の下に要塞(ようさい)を築いたとき、あなた方はどこにいたのか」と問いかけた。

さらに大使は、「すでに外交は試し済み」だったことは無視できないとしつつ、イランは「交渉を茶番に変え」、それを「カモフラージュ」として利用し、ミサイルの製造とウラン濃縮の時間稼ぎをしていたと主張した。

ダノン大使は、イランが「守るつもりなどまったくない」合意内容について交渉を重ねたと批判。「自由世界は(イランに)あらゆる機会を与えた」とし、行動しなければ代償は「死刑宣告」だったはずだと強調した。

続く攻撃の応酬

アメリカによるイラン核施設攻撃後も、イスラエルとイランの交戦は続いている。

イスラエル国防軍(IDF)は現地時間23日未明、イランからのミサイル発射によりイスラエル中部で警報が鳴っているとソーシャルメディアで発表した。

これに先立つ24時間の間に、イランは少なくともミサイル27発を2回に分けて発射。一部はイスラエル北部や中部に着弾した。被害を受けた地域には、テルアヴィヴ、ハイファ、ネス・ジオナ、リション・レジオンなどが含まれる。

対するイスラエルはこの間、戦闘機20機を派遣し、テヘラン、ケルマンシャー、ハメダン各地に対して「情報に基づく攻撃」を実施したと発表した。

イスラエル当局によると、攻撃対象にはミサイルの保管・発射施設、レーダーおよび衛星システム、テヘラン近郊の地対空ミサイル発射装置などが含まれていたという。

ホルムズ海峡は――ゴンチェ・ハビビアザド、BBCペルシャ語記者

アメリカの空爆を受け、イランが戦略的要衝のホルムズ海峡の封鎖を検討しているとの未確認情報が、イラン国内で取りざたされている。ただし、現時点では具体的な動きは確認されていない。

ホルムズ海峡はオマーンとイランの間に位置し、世界で最も重要な原油輸送の要衝に位置づけられる。

イランのアッバス・アラグチ外相は22日、海峡封鎖の可能性について問われ、「さまざまな選択肢が検討されている」と述べるにとどめた。

精鋭部隊のイスラム革命防衛隊(IRGC)は、海峡封鎖に使用可能な高速艇を備えている。封鎖が実施されれば、世界市場に必要な原油供給に大幅な遅延が生じ、原油価格の上昇を招く恐れがある。

ホルムズ海峡は最も狭い地点で幅約40キロしかなく、世界の原油の約2割がこの海峡を通過している。

影響を受ける可能性があるのは、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェートなどの湾岸諸国にとどまらない。

海峡を通過する原油の主要輸入国には、中国、インド、日本、韓国も含まれる。特に中国は、原油価格の上昇や海上輸送ルートの混乱を決して望まないはずだ。

もっとも、ホルムズ海峡はイランにとっても主要な輸出ルートのため、それを封鎖すればイラン経済にも深刻な打撃となる。

アメリカのマルコ・ルビオ国務長官は22日、海峡封鎖についてイランにとって「経済的自殺行為になる」と述べた。

高濃縮ウランは――フランク・ガードナー BBC安全保障担当編集委員

「イランが戦略的要衝のホルムズ海峡を封鎖するかどうか」という懸念に加えて、さらに深刻で、しかもほとんど誰も答えを知らないのは、イランの高濃縮ウランについてだ。

「イランは依然として、高濃縮ウランを秘密の地下施設に隠し持ち、それを兵器化するための知識と手段を持ち、今まさに粗末ながらも核兵器の製造に踏み切る決断を下す可能性があるのかどうか」という点だ。

言い換えれば、アメリカとイスラエルによる連携攻撃は、イランによる核兵器保有の脅威を取り除いたのか、それともその可能性を高めてしまったのか。それが今、問われている。

私が話を聞いた一人の軍事専門家は、もしイランが十分な量の高濃縮ウランを保持していた場合、科学者たちが妨害なしで作業を進められるなら、中性子発生装置を使った簡易な第一世代型の「ガンバレル型核爆弾」を試せるようになるはずだと話した。このタイプの装置は、より複雑な「爆縮型装置」よりも技術的に簡単だとされる。

イランが核兵器を手にすれば、サウジアラビアをはじめとする中東諸国も同様に核兵器の取得を目指すと長年考えられてきた。これに伴い、地域全体で核軍拡競争が引き起こされる可能性がある。

(英語記事 Iran condemns US strikes on nuclear sites as Trump talks of 'regime change'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cy4npe9jj00o


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