2025年7月16日(水)

BBC News

2025年6月25日

ヌセイラトのアル・アウダ病院には、銃で撃たれた人たちが運び込まれ、混乱した光景が見られた(24日、パレスチナ・ガザ)

ヨランド・ネル中東特派員

パレスチナ・ガザ地区の中部や南部で24日、援助物資を待っていた人々にイスラエル軍が発砲し、少なくとも46人が死亡した。救助隊や病院などが発表した。

国連機関は、アメリカとイスラエルが支援する「ガザ人道財団(GHF)」による食料配給制度を非難している。ある高官は、このシステムは「忌まわしい死のわなだ」と語った。

こうした死傷事案はこのところ、ほぼ日常的に発生しているが、イスラエルがイランを攻撃して以降、ガザ地区外では比較的、注目を集めていない。

国連は、GHFが5月下旬に活動を開始して以来、イスラエル軍による銃撃や砲撃で死亡したパレスチナ人が410人超に上ると報告している。これには最新の死者数が含まれていない。

GDFは死傷事案を否定

「なぜ私たちの子どもの命は、こんなに軽く見られているのか」と、ウム・ラエド・アルヌアイジ氏は訴えた。アルヌアイジ氏は夫を亡くしており、空腹の家族のために夜通し食料を取りに行った息子が、銃撃を受けて負傷したという。

「息子は、自分ときょうだいが食べるために、わずかな小麦粉を手に入れようとしただけだ。それなのに今、集中治療室にいる」

ある映像には、ガザ中部ヌセイラトにあるアル・アウダ病院の混乱した様子が映っている。銃撃を受けた若者たちが次々と運び込まれ、うめき声を上げながら血まみれの状態で治療を受けている。

まもなく病院のベッドはすべて埋まり、負傷者たちは床に横たえられた。

ある高齢の男性は死亡した状態で運び込まれ、妻がその顔を抱きながら泣き崩れている。

病院関係者と、ガザのイスラム組織ハマスが運営する民間防衛隊によると、24日の発砲で少なくとも21人が死亡し、約150人が負傷した。

目撃者によれば、イスラエル軍の管理区域内にあるGHFの施設付近に数千人が集まっていたところ、イスラエル兵が発砲したという。

イスラエル国防軍(IDF)は、「ネツァリム回廊で活動中の部隊の近くで」集団を確認したと発表した。

また、「同地域でのIDFの発砲により負傷者が出たとの報告を受けており、詳細を調査中だ」と述べた。

一方GHFは、「今朝、当団体のいかなる施設付近でも事案は発生していない」と発表している。

救急隊員や救助関係者によると、24日朝、同じくGHFが運営するガザ南部の施設付近でも、少なくとも25人が死亡したという。

目撃者の一人はBBCに対し、午前5時にラファ北部の施設に到着したが、午前10時の開場直前にイスラエル軍の戦車が接近し、何の警告もなく発砲してきたと証言した。

「銃撃は市民に直接向けられ、あたり一面が血まみれになった」と、ハテム・アブ・ルジレ氏は語った。

「周りの人がみんなけがをした。誰にも助けられなかったけが人が30人以上はいたかもしれない。私たちは親族だけを何とか助け出して、逃げた」

IDFはBBCに対し、「報道されている内容とは異なり、IDFはラファの援助配給所で発生したとされる事件について把握していない」と回答している。

イスラエルは1カ月前にガザ地区の全面封鎖を緩和。その数日後に、GHFが活動を開始した。同団体によれば、それ以降に提供した食事は4100万食に上るという。

GHFは公式には民間団体とされているが、資金の出所は不透明で、アメリカとイスラエルの支援を受けている。また、武装した民間警備会社を使用している。

国連や主要な援助団体は、GHFがイスラエルの対ハマス戦争における目的に協力し、人道原則に反しているとして、協力を拒否している。

一方、イスラエルはGHFを、ガザ地区に残るハマスの支配を弱体化させる新たな援助計画の中核と位置づけている。

最新の事案が報じられる中、国連人権高等弁務官事務所のサミーン・アル・ヒータン報道官は、ジュネーヴで記者会見を行い、現在の援助体制を非難した。

「イスラエルの軍事化された人道支援の仕組みは、援助配分に関する国際基準と矛盾している」とアル・ヒータン氏は述べた。

「食料を市民に対する兵器にしてしまったことに加え、生命維持に必要なサービスへのアクセスを制限または遮断することは、戦争犯罪に当たる」

報道官は、戦争犯罪が成立するかどうかは司法の判断に委ねられるべきだと付け加えた。

一方、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は、独ベルリンで記者会見を行い「新たに創設された、いわゆる支援メカニズムは、必死に生きようとする人々を侮辱しおとしめる、忌まわしいものだ。命を救うどころか、命を奪う死のわなだ」と語った。

こうした国連による批判に対する見解を、BBCがIDFに尋ねたところ、IDFは「GHFがガザ住民への援助配分を独立して行うことを承認している。また国際法にのっとって、その安全かつ継続的な配分を確保するために取り組んでいる」と回答した。

イスラエルは数週間前、ガザ地区での戦争の新たな段階を発表したが、まだ実行に移していない。

この計画では、GHFだけが援助配給拠点を運営することが想定されている。

イスラエルは現時点では引き続き、国連や他の援助団体向けの援助物資を積んだトラック数十台のガザ入りを許可している。

21日には、非営利団体「ワールド・セントラル・キッチン(WCK)」が、12週間以上ぶりにガザの現地チームに援助物資が届き、一部の拠点での炊き出しを再開できたと発表した。

しかし、食料の供給量は依然として不十分で、専門家らはガザが飢饉(ききん)の瀬戸際にあると警告している。

ガザ市では、4人の娘を持つ父親が「家族はパンと塩だけでしのいでいるが、GHFの援助センターに命をかけて行くつもりはない」と語った。

「あそこは『死のゾーン』と呼ばれている」と、マフムード・アル・グーラ氏は述べた。「息子はすでに殉教した」。

「小麦粉1袋を取りに行けば、自分がその袋に入れられて戻ってくるのではないかと恐れている。毎日、人々がそこへ行って命を落としている。私たちはどうすればいいのか」

(英語記事 UN condemns Gaza aid 'death trap' as dozens reported killed by Israeli fire

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cn86971l5xwo


新着記事

»もっと見る