
北大西洋条約機構(NATO)首脳会議(サミット)は25日、オランダ・ハーグで2日間の日程を終え、加盟各国が防衛費を国内総生産(GDP)の5%まで引き上げることで合意した。アメリカのドナルド・トランプ大統領からの数カ月にわたる圧力に応じた格好となった。
トランプ氏はサミットでの決定を、「ヨーロッパと(中略)西洋文明にとっての大きな勝利」と呼び、サミットについても「大成功」だとした。トランプ氏がNATOサミットに出席したのは2019年以来で初めてだった。
合意では、加盟各国は2035年までに、GDPの少なくとも3.5%を防衛費の中核部分に充て、最大1.5%を安全保障インフラに緩やかに関連する投資に支出する。
スペインはサミットの開催前に、5%の目標への反対を表明していた。カルロス・クエルポ経済相は、スペインは2.1%の目標の達成に向け「多大な努力」をしており、「何パーセントかという議論は見当違いだ」と述べた。
サミットでは、恒例の「家族写真」撮影の際、スペインのペドロ・サンチェス首相は首脳らの一番端に立った。
それでもサンチェス氏はその後、共同声明に署名。スペインが少ない支出で約束を果たすうえで、声明は「十分で、現実的で、両立可能」だとした。
ベルギーもサミット前に難色を示していたが、バルト・デウェーフェル首相はその後記者団に、「10年以内に3.5%というのは現実的な目標だ」と述べた。
スロヴァキアも防衛費の大幅引き上げに懸念を示していた。だが、ペテル・ペレグリニ大統領は、同国が合意の邪魔をすることはないとした。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、欧州連合(EU)とトランプ氏が貿易関税で対立していることを指摘。「同盟国同士で、もっと出費が必要だと言い合い、(中略)貿易戦争を仕掛け合うことはできない。理にかなわない」とし、合意を呼びかけた。
ロシアのウクライナ侵攻は非難せず
共同声明では、加盟各国が「深刻な」安全保障上の課題に対して団結しているとし、「ロシアによる長期的な脅威」とテロリズムを課題として挙げた。
NATO指導者らは、加盟国への攻撃には同盟全体で対応する原則への「鉄壁のコミットメント」を再確認した。
マルク・ルッテ事務総長は、「私たちの安全保障が脅かされた場合の、私たちの能力や決意を誰も疑うべきではない」、「私たちの指導者らは、より強く、より公平で、より殺傷力のある同盟を築き始めた」と述べた。
一方で共同声明には、1年前のサミットでは明記された、ロシアのウクライナ侵攻に対する非難は含まれなかった。
トランプ氏はサミット前、集団的自衛権の行使について定めた北大西洋条約の「第5条のさまざまな定義」を取り上げ、安全保障体制について疑問を呈していた。しかし会議の後には、「私は(第5条を)支持する。そのためにここにいる」と述べた。
何人かの首脳らは、今回のサミットを歴史的と評している。ルッテ氏は25日の決定について、ウクライナ支援の継続と、和平の推進も含まれるとした。
NATOトップがトランプ氏たたえる
サミットでルッテ氏は、イランとイスラエルの紛争に対するトランプ氏の対応をたたえた。
トランプ氏が、イランとイスラエルは「校庭にいる2人の子ども」のようにけんかをしていたと述べると、ルッテ氏は「ダディー(お父さん)は時には強い言葉を使わなければならない」と口を挟んだ。これは、トランプ氏が24日、停戦が危うい状態になったことへのいら立ちを罵倒語を用いて表現したことへの言及だった。
トランプ氏はサミットの傍ら、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した。会談後の記者会見でトランプ氏は、ウクライナでの停戦実現は予想以上に「困難」だとし、ウクライナにさらなる防空を提供する可能性を示唆した。
トランプ氏は、「ゼレンスキーは、少し難しいが、いいやつだ」、「(ロシア大統領のウラジーミル・)プーチンとはたくさん話してきた。(中略)彼は自発的にイランを支援した。私は、頼むからイランではなく、ロシアに関して私たちを助けてくれと言った」と話した。
NATO加盟国は共同声明で、「ウクライナの安全保障は私たちの安全保障に貢献する」とし、ウクライナへの支援を強調した。また、ウクライナの国防と防衛産業への直接的な貢献は、加盟各国が防衛支出として計上できるとした。
イギリスのキア・スターマー首相は、NATOはこれまで同様、いまも重要な役割を担っていると強調。「私たちは非常に不安定な世界に生きており、今日はNATOの団結とその強さを示すものだ。私たちは以前よりも大きく、以前よりも強くなっている」と述べた。
(英語記事 Trump says Nato's new 5% defence spending pledge a 'big win')