
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は26日、イスラエルとの停戦が24日に合意されてから初めて公に演説し、アメリカはイランの核施設への攻撃で「何の目的も果たせなかった」と主張した。一方、アメリカは、攻撃でイランの核開発への野心を大きくくじいたと強調している。
テレビ演説でハメネイ師は、アメリカのドナルド・トランプ大統領がイラン核施設の攻撃の影響を「誇張している」とした。そして、アメリカの攻撃はイランの核開発計画を中断させることにおいて、「何ら重要なことを成し遂げ」なかったと述べた。
また、イランによるカタールの米空軍基地への報復攻撃について、「大打撃」を与えたとした。
そして、「この出来事(米軍基地攻撃)は今後も繰り返すことが可能だ。(イランに対する)攻撃が実施されれば、敵と攻撃者の代償は間違いなく非常に大きなものになる」と述べた。
ハメネイ師はさらに、イスラエルとアメリカの両方に勝利したと宣言した。
今月13日にイスラエルとイランの直接衝突が始まって以来、ハメネイ師は公の場からほぼ姿を消していた。地下壕に避難し、通信を制限しているとされ、所在について憶測を呼んでいた。
イラン当局は、この日の演説をどこでしたか明らかにしなかった。政府高官は、ハメネイ師は安全な場所にいたとした。
カタールの米軍基地への攻撃で、アメリカは死者は出ておらず、基地の被害もなかったとしている。トランプ氏はイランから事前に通告があったとしている。
米国防長官「大きなダメージ与えた」
イランの主要核施設3カ所に対する攻撃をめぐっては、トランプ氏はこれまで、「(それらの施設を)完全に抹消した」としている。
米メディアは、複数の匿名の政府関係者の情報提供をもとに、施設の被害は予想より小さかった可能性があると報じているが、トランプ氏はこれに激しく反発している。
アメリカのピート・ヘグセス国防長官は26日朝、米軍統合参謀本部のダン・ケイン議長とともに国防総省で記者会見し、アメリカとイスラエルが収集した情報から、今回の作戦は「核開発計画に大きなダメージを与え、何年も遅らせた」ことがわかると主張した。
ヘグセス氏はまた、作戦は「歴史的な成功」を収め、「(イランの)濃縮施設を作動不能にした」と述べた。
記者団との質疑応答は、時に激しいものとなった。フォルドの核施設から攻撃前に濃縮ウランが移されていた可能性があるとされることについては、「そうした情報は知らない」とヘグセス氏は述べた。山中の地下深くにあるフォルド核施設への攻撃では、アメリカは地中貫通爆弾(バンカーバスター)を使用した。
BBCが提携する米CBSニュースによると、ホワイトハウスはイランを交渉のテーブルに戻すため、ウラン濃縮を伴わない民生用の核開発プログラムを資金面で支援することなど、さまざまな選択肢を検討しているという。
しかし、イランのアッバス・アラグチ外相は26日、アメリカとの協議は予定されていないと、国営テレビで話した。
イランの核開発をめぐっては、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、「阻止しなければ、イランはごく短期間で核兵器を製造し得る」と主張。今月13日にイランを空爆し、直接衝突に発展した。
その前日には、国際原子力機関(IAEA)の理事会がイランについて、過去20年で初めて核拡散防止の義務に違反していると非難する決議を採択していた。
イランは、自国の核開発は民生目的しかなく、核兵器開発を目指したことはないと主張している。
イランは25日、IAEAとの協力関係を終了させる議会の法案を承認した。IAEAによる核施設の査察を認めないことになる。
イラン保健省は、イスラエルの空爆が続いた12日間で610人が殺害されたと発表した。イスラエル当局は、28人が殺されたと発表した。
アメリカは先週末、イランのフォルド、ナタンズ、イスファハンの核施設を空爆し、紛争に直接関与した。その後、トランプ氏はイスラエルとイランの停戦を仲介。以降、停戦は維持されている。
IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は25日、アメリカの攻撃前に、イランが高濃縮ウランの大半を別の場所に移した可能性があるとした。
(英語記事 US gained nothing from strikes, Iran's supreme leader says)