
ウクライナ軍の総司令官オレクサンドル・シルスキー将軍は26日、北東部スーミ州で、ロシアの進軍を阻止したと発表した。
シルスキー総司令官は前線を視察した際、戦線が「安定し」、ロシア軍の夏の攻勢は「阻止された」と述べた。
一方で、スーミ州の要塞の状況を直接確認した結果、さらなる強化が急務だと判断したとも付け加えた。
ウクライナ当局は最近、スーミ州でロシアの圧力が弱まっているとの声明を出していた。シルスキー氏の発言はそれを裏付けるものだ。
しかし、ウクライナ国境警備隊のアンドリー・デムチェンコ報道官は今週初め、情勢は依然として「不安定」なままだと述べていた。
スーミ州の戦況と防衛
スーミ州はロシア・クルスク州と国境を接する。クルスク州の一部は昨年8月、ウクライナが突然の越境攻撃を仕掛けて掌握したものの、数か月後にはほぼ全面的な撤退を余儀なくされた。
クルスク州への越境攻撃は、ロシアにとって屈辱的な出来事だった。ウラジーミル・プーチン大統領は4月、ウクライナ北東部ハルキウ、スーミ、チェルニヒウ各州と接するロシアの国境地域に「追加の支援」を提供する目的で、国境沿いに「安全保障の緩衝地帯」を設ける計画を発表した。
以来、ロシア軍はスーミ州での活動を強化している。5月下旬には、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、ロシアの「最大かつ最も強力な」5万人の部隊が国境沿いに集結し、10キロメートルにわたる緩衝地帯を作ろうとしていると述べた。
スーミ州の一部地域をめぐっては、要塞化が不十分だとの批判の声が上がっている。シルスキー総司令官は26日の声明で、要塞の整備の遅れに対する国民の懸念を鎮めようとした。
「追加の要塞、いわゆる『キル・ゾーン』の設置や、兵士を守り、部隊への物流をさらに確保するための対ドローン回廊の整備は、当然必要な任務であり、現在進行中だ」と、シルスキー氏は説明した。
そのうえで、こうした改善措置がより良く、より効果的に行われる必要があることを認めた。
ロシアによる全面侵攻が始まった直後は、ウクライナの一部地域の要塞化が不十分だった。そのため、北部国境や、ロシアが2014年に一方的に併合した南部クリミア半島からの、ロシアの進軍を許してしまった。
スーミ州で安全かつ迅速に要塞化を進める「好機」は、2024年秋に訪れた。当時、ウクライナ部隊はロシア西部クルスク州への進軍で優勢を保ち、スーミ州は比較的平穏だった。
しかし現在は、そうはいかないかもしれない。ロシアは間違いなく、前線の手薄な区間を把握しているからだ。
この数カ月間で、ロシア政府はウクライナの複数の村を掌握したと主張し、スーミ州の州都に激しいミサイル攻撃を仕掛けて数十人を殺害している。4月13日には、弾道ミサイル1発による攻撃で少なくとも34人が殺害され、117人が負傷した。
ウクライナの前線での最新動向を監視するグループ「DeepState」は、情報筋の話として、スーミ州の要塞化が進んでいない複数の地域で戦闘が激化していると報告。「待ち望まれている要塞」の整備の遅れや、「一部の塹壕の質の低さ」をもはや見過ごせない状況だと指摘している。
ロシアのプーチン大統領は先週、サンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムで、ウクライナに対する夏の攻勢について問われると、「スーミ州の掌握が目標ではないが、その可能性は排除しない」と答えた。また、ロシア軍がすでに、8~12キロメートルにわたる緩衝地帯を確保したと述べた。
ドローン攻撃が増加、各国の支援は
2022年2月に始まったロシアのウクライナ全面侵攻は、4年目に突入している。
ウクライナ各地の都市に対するロシアの大規模ドローン攻撃は増加傾向にある。ここ数週間では、首都キーウが記録的な数のドローン攻撃の標的となった。ドローンがウクライナの防空システムを突破し、複数の爆発が起き、死傷者が出た。
ウクライナとロシアの間では、直近の交渉での合意に基づいて、捕虜交換が複数回行われた。しかし、これまでのところ停戦に向けた具体的な進展は見られていない。
北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長は今週初め、NATO加盟国のうち欧州諸国とカナダで計350億ユーロ(約5兆9000億円)相当の対ウクライナ支援をすると発表した。
しかし、アメリカのドナルド・トランプ大統領の、ウクライナをめぐる問題への取り組みの度合いや、ゼレンスキー大統領との不安定な関係性について、ウクライナ政府には不安が残っている。
こうした中、トランプ氏は25日、オランダ・ハーグで開かれたNATO首脳会議に合わせてゼレンスキー氏と会談。「これ以上ないほど素晴らしい」会談になったと、トランプ氏は述べた。
その後の記者会見で、BBCウクライナ語サービスのミロスラワ・ペツァ記者の質問を受けた際、トランプ氏はロシアの攻撃からウクライナが自衛できるよう、アメリカの地対空迎撃ミサイル「パトリオット」のウクライナへの提供を検討していると語った。
トランプ氏は「いくつか提供できるかどうか、検討していく」としたうえで、「手に入れるのがとても難しい」とも述べた。
(英語記事 Ukrainian forces halt Russian advance in Sumy region, says army chief)