2025年7月16日(水)

BBC News

2025年6月28日

物資の入った袋を運ぶパレスチナ人男性(5月29日、ガザ南部ハンユニス)

パレスチナ・ガザ地区の複数の物資配給拠点の周辺で、支援を求めるパレスチナ人の民間人が銃撃されるなどして死傷する事態が相次いでいる。配給拠点を運営する団体の代表は27日、すべての死傷事案が拠点のすぐ近くで起きているのではないとし、ガザ住民に食料を届けるために活動していると主張した。

ガザでアメリカとイスラエルが支援する「ガザ人道財団(GHF)」のジョニー・ムーア代表は、BBCワールド・サービスのラジオ番組「ニューズアワー」の取材に応じた。その中で代表は、GHFの配給拠点近くで死者が出ていることは否定しないとしつつ、「全ての死亡事案が、GHFの拠点のすぐ近くだったために起きたとする主張は、事実ではない」と主張した。

そして、国連や他の国際機関は「自分たちで検証できていない情報を拡散している」と非難した。

GHFによる食料配給制度は、国連機関から非難されている。アントニオ・グテーレス国連事務総長は27日、「本質的に安全ではない」制度だと述べた。

「支援を切実に求めている民間人を軍事化された区域に誘導するような活動は、そもそも安全ではない。食料を求める行為が死刑宣告になってはならない」と、グテーレス氏は述べた。

配給拠点近くで500人以上犠牲か

イスラム組織ハマスが運営するガザ保健省によると、GHFがガザでの物資供給を担うようになった5月下旬以降、パレスチナ人500人以上が食料を求めて配給拠点に向かう途中で殺害され、4,000人以上が負傷している。

GHFの活動開始から数日後の6月1日と3日に、パレスチナ人数十人が殺害される事件が発生し、国際的な非難を招いた。

以降、GHFの拠点周辺でパレスチナ人が殺害される事案がほぼ毎日のように報告され、国連や支援団体は懸念を表明している。これらの拠点は、イスラエル国防軍(IDF)が設定した軍事区域内に位置する。

目撃者や医療関係者は、IDFの兵士が配給拠点近くにいる群衆に発砲したと、複数の事案について証言している。

イスラエル紙「ハアレツ」は27日、群衆を追い払ったり解散させたりするために、非武装の民間人に発砲するよう命じられたと、複数のIDF兵が匿名で話したと報じた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、この報道を「悪意ある虚偽」だと強く否定した。

IDFはBBC宛ての声明で、「配給センターに近付く人々を含む民間人に意図的に発砲するよう命じた事実はない」と説明。支援区域での「作戦上の対応」の改善を目指していると、IDFは付け加えた。最近では、新たなフェンスや標識を設置し、物資供給区域への新ルートも設置したとした。

GHFのムーア氏は、「死傷事案はすべてIDFによるものだとする主張があるが、我々が知る限り、それも事実ではない」とした。

IDFはこの1カ月間、「容疑者」と呼ぶ相手や、IDF兵に脅威を与えた人物に対して「警告射撃」を行ったと、繰り返し説明している。

配給拠点に向かう途中で殺害、「偽情報」とGHF代表

配給拠点近くで数百人のパレスチナ人が殺害される中、ムーア氏はGHFの支援活動を擁護した。

「実際に何が起きたのか、そして何かが起こったのなら、それを再び起こりにくくする方法はあるのかを、時間をかけて理解しようとしてきた」と、ムーア氏は述べた。

そして、「我々はほとんどの事案で、何が起きたのか特定できていない」と続けた。

「GHFの拠点に向かっている人々が殺されているというのは偽情報だということを、皆が理解する必要がある。我々の拠点の近くでそうした事案があったという証拠はない」

イスラエルは、BBCを含む海外メディアがガザにジャーナリストを派遣するのを許可していない。そのため、現地の状況を独自に検証するのは難しい。

ムーア氏は、GHFが活動を始める以前は、国連の支援トラックの大半が、武装勢力に銃を突きつけられハイジャックされていたとも主張した。

国連は、大規模なハイジャックが起きたことを示す証拠はないとしている。BBCがこのことを伝えると、ムーア氏は「国連は正直ではない」と反論した。

物資不足について

イスラエルは3月2日、ガザへの人道支援物資と商業物資の搬入をすべて停止させた。封鎖は11週間続き、5月に一部が緩和された。それでも、ガザへ流入する物資は依然として不足している。専門家たちは、ガザが飢饉(ききん)の危機に瀕していると警告している。

GHFはガザで5000万食分を供給することを目指している。これは、GHFが活動を開始してからの期間でみると、1人あたり1日1食にも満たない計算になる。

最も必要としている人に食料が届いているのかと問われると、ムーア氏は活動が「不十分」だと認めつつ、5000万食は1カ月前の供給量より多いと主張した。

ムーア氏は、GHFは規模を拡大する必要があり、国連のような組織との連携を希望していると語った。

そして、「我々の任務は明確だ。ガザの人々に食料を届けたいだけだ」と付け加えた。

米国務省は26日、GHFに対して3000万ドル(約43億円)を拠出すると発表した。米政府が同団体に直接的な支援を行うのは初めてとみられる。

GHFのムーア代表は広報を専門とするキリスト教福音派の牧師で、ドナルド・トランプ米大統領を精力的に支持してきた。前任の初代代表ジェイク・ウッド氏は、GHFの仕組みを批判して辞任した。

イスラエルは、2023年10月7日にハマス主導の越境攻撃を受けた。この攻撃で約1200人が殺され、251人を人質に取られた。イスラエルは対抗し、ガザで軍事作戦を開始した。

ハマスが運営するガザ保健当局によると、この戦争でガザではこれまでに5万6000人以上が殺害された。

(英語記事 GHF boss defends Gaza aid operation after hundreds of Palestinians killed near sites

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cy5wrv2ggp3o


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