2025年7月16日(水)

BBC News

2025年6月28日

MI6の次期長官に任命されたメトレウェリ氏

イギリス対外情報部(MI6)の新長官に任命されたブレイズ・メトレウェリ氏について、父方の祖父が「ブッチャー」と呼ばれた旧ナチスのスパイだったと英大衆紙が報道したことを受け、MI6は、次期長官はその父方の祖父を全く知らないとコメントした。メトレウェリ氏は創設116年のMI6で、初の女性長官となる

メトレウェリ氏の経歴について詳細はあまり知られていないが、複数の資料によると、父方の祖父はコンスタンティン・ドブロウォルスキと言い、ソヴィエト連邦時代の赤軍から脱走し、ウクライナ・チェルニヒウでナチス側で働く情報提供者になった。

これについて最初に伝えたデイリー・メールによると、ドイツ・フライブルクの公文書館で発見された数百ページに及ぶ文書から、ドブロウォルスキ氏が当時、ドイツ国防軍の司令官たちから「ブッチャー」あるいは「エージェント30」と呼ばれていたことが判明したという。

これに対して、MI6の広報を担当する英外務省は、メトレウェリ氏が「父方の祖父を知らず、会ったこともない」と述べた。

外務省報道官はさらに、「ブレイズの家系には、東欧系の先祖を持つ多くの人と同じように、対立と分断が散見され、その全容は部分的にしか理解されていない」、「まさにこの複雑な家の歴史があるからこそ、(メトレウェリ氏は)MI6の次期長官として、現代の敵対国家からイギリス国民を守ることに、強い使命感を抱いている」のだと述べた。

次期長官自身は、今回の報道についてコメントしていない。

デイリー・メールによると、メトレウェリ氏の祖父はナチスの上官に宛てた書簡に「ハイル・ヒトラー」と署名し、「ユダヤ人の絶滅に『個人的に』関与した」と書いていた。

公文書館の文書によると、ドブロウォルスキ氏はホロコースト犠牲者の遺体から金品などを奪い、現地のユダヤ人の殺害に関与し、女性囚人への性的暴行を見て笑っていたとされている。

ソ連国家保安委員会(KGB)が1969年に作成した「最重要指名手配リスト」にドブロウォルスキ氏の名前があったことを示す証拠を、BBCニュースは確認した。このリストには同氏の過去の活動が記されているほか、同氏が1960年代まで生存していた可能性が示されている。

「極秘」と記されたこの文書は、研究者から提供されたもので、460ページに及ぶ。「外国の諜報員、祖国への裏切り者、反ソ組織の構成員、懲罰者およびその他の指名手配犯罪者」の名前が、アルファベット順に並べられている。

ドブロウォルスキ氏に関するとみられる記述には、「ソ連市民の処刑に関与した」とあり、「同時に、彼はドイツ諜報機関のレジデント(現地工作員)だった」と記されている。「1943年9月、ドイツ軍と一緒に脱出した」と書かれていることなども、BBCは確認した。

ドブロウォルスキ氏の妻バルバラ氏と生後2カ月の息子コンスタンティン・ジュニア氏は戦後、イギリスに逃れ、バルバラ氏は1947年にデイヴィッド・メトレウェリ氏と結婚。コンスタンティン・ジュニア氏は後に、継父の姓「メトレウェリ」を名乗るようになった。BBCが1966年7月付の帰化証明書を確認したところ、この時点の姓は「ドブロウォルスキ」のままで、「メトレウェリ」は「別名」として記載されている。

コンスタンティン・ジュニア氏は後に放射線科医となり、さらにはイギリス軍の退役軍人となった。娘のブレイズ・メトレウェリ氏は1977年に生まれ、22年後に、イギリスの国外諜報活動を担当するMI6に入局した。

メトレウェリ氏は現在、MI6で技術とイノベーションを担当。リチャード・ムーア現長官の後任として、今年中に第18代長官に就任する予定となっている。任命の際には、「この任務を託されたことを誇りに思い、光栄に感じている」と声明を発表した。

メトレウェリ氏は英ケンブリッジ大学卒業で、ボート競技の漕ぎ手としての経験があり、中東および欧州での作戦任務に従事した。

(英語記事 MI6 distances its new chief from Nazi grandfather

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cwyqn0qp4g4o


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