
リーズ・ドゥーセット国際担当主任編集委員(テヘラン)、アレックス・ボイド(ロンドン)、BBCニュース
イランのマジッド・タフテ=ラヴァンチ外務副大臣がBBCのインタビューに応じ、アメリカは外交交渉の再開を望むのであれば、今後イランを攻撃する可能性を排除しなければならないと述べた。
イランの核開発などをめぐる同国とアメリカの交渉は、今月15日にオマーンの首都マスカットで6回目が予定されていた。だが、イスラエルが13日未明にイランへの軍事作戦を開始し、交渉は流れた。その後、アメリカはイランの核施設3カ所を空爆し、イスラエルとイランの紛争に直接関わった。
タフテ=ラヴァンチ氏はBBCのインタビューで、仲介者を通してアメリカのドナルド・トランプ政権から、交渉に戻りたい意向を伝えられていると述べた。ただ、交渉中の新たな攻撃という「非常に重要な問題」について、米政権は「立場を明確にしていない」とした。
同氏はまた、イランは平和目的でのウラン濃縮を「主張していく」と述べ、イランがひそかに核爆弾の開発に向かっているとの非難は不当だとした。
そして、イランは研究のための「核物質を入手できない」状態なので、「自分たちで調達する」必要があると主張。「その程度や生産量は協議可能だが、濃縮すべきでない、濃縮はゼロにすべきだ、同意しないなら爆撃する、と言うのは弱肉強食の世界だ」とした。
イスラエルとイランの軍事衝突は、13日から12日間続いた。トランプ米政権は米東部時間21日夜、米軍がイランのフォルド、ナタンズ、イスファハンの核施設3カ所を空爆したと発表した。
アメリカの攻撃で、イランの核開発計画にどの程度の損害が生じたかは不明。タフテ=ラヴァンチ氏は、正確な評価は示せないとBBCに話した。
トランプ氏は、イランの核施設が「完全に抹消された」と宣言している。
一方、国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は、米軍の攻撃でイラン核施設に深刻な被害が出たが、「完全なものではない」と28日に発言。イランについて、「数カ月のうちに」ウラン濃縮を再開する能力があるとした。
この点についてタフテ=ラヴァンチ氏は、その通りなのかはわからないとBBCに話した。
イランとIAEAの間では緊張が高まっている。イラン議会は25日、IAEAをイスラエルとアメリカの味方をしていると非難し、協力を停止する法案を承認した。
情報次第で再度の空爆も検討とトランプ氏
トランプ氏は、イランが懸念されるレベルまでウランを濃縮できるとの情報を得れば、再度の空爆を「間違いなく」検討すると述べている。
同氏はまた、交渉が今週中に行われる可能性を示唆している。これについてタフテ=ラヴァンチ氏は、交渉再開の日程は合意されておらず、何が議題になるかもわからないとBBCに話した。
タフテ=ラヴァンチ氏はまた、「私たちは今、この問いへの答えを求めている。対話をしている間に、攻撃が繰り返されるのか?」と疑問を表明。アメリカが「この非常に重要な問題についての立場」と、「そうした対話に必要な信頼を得るために、私たちに何を提供するのか」を明確にする必要があると述べた。
制裁緩和やイランへの投資などと引き換えに、イランが核開発計画の見直しを検討する可能性はあるかと問われると、タフテ=ラヴァンチ氏は、「なぜ私たちがそのような提案に同意しなければならないのか」と述べた。
同氏はまた、ウランを60%まで濃縮するなどのイランの計画は「平和目的」だと改めて強調した。
2015年にイランと主要国との間で締結された核合意では、イランは商業用原子力発電所の燃料に必要な3.67%以上の濃度にウランを濃縮することを禁じられた。フォルド施設での濃縮活動も15年間は禁止された。
しかし、アメリカのドナルド・トランプ大統領は1期目の2018年にこの合意から一方的に離脱。合意は核兵器開発への道を十分に封じるものではないとして、対イラン制裁を再発動した。
これに対しイランは、特に濃縮に関する制限を次々と破る形で報復措置を取り、2021年にはフォルドでの濃縮活動を再開した。IAEAによると、イランは現在、60%濃縮ウランを核兵器9個分に相当する量まで蓄積しているとされている。
「米批判できないなら黙るべき」
タフテ=ラヴァンチ氏はBBCのインタビューで、欧州や西側の指導者にイランへの信頼感が欠けていることについて問われると、一部の欧州指導者がアメリカとイスラエルの攻撃に対して「ばかげた」支持をしていると非難。イランの核開発計画を批判する人々は、「私たちの扱われ方を批判すべきだ」とし、アメリカとイスラエルを批判した。そして、「アメリカを批判する度胸がないのなら、攻撃を正当化しようとはせずに、沈黙を守るべきだ」と述べた。
同氏はまた、イランが仲介者を通し、アメリカはイランの最高指導者アリ・ハメネイ師を標的にして「イランの政権交代に関わることを望んではいない」とのメッセージを受け取ったと述べた。
イランの体制転換をめぐっては、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がイラン国民に向けて、「自由のために立ち上がり」、ハメネイ師による支配を崩壊させるよう呼びかけている。一方、トランプ氏は先週、停戦が成立したあとに、そうしたことは望んでいないと述べた。
タフテ=ラヴァンチ氏は、それは実現しないし、そうした考えは「無益に等しい」と主張。イラン国民の中には「政府の一部の行為に批判的な人もいるかもしれないが、外国からの攻撃となれば国民は団結して立ち向かう」と述べた。
イスラエルとの停戦に関しては、続くかどうかは「はっきりしない」と同氏は説明。ただ、「私たちに対する軍事攻撃がない限り」、イランは停戦の順守を続けると述べた。
同氏はさらに、湾岸地域のイランの友好国が「対話に必要な雰囲気を整えようと最善を尽くしている」とした。現在の停戦では、カタールが仲介で重要な役割を果たしたことが知られている。
「私たちは戦争を望んでいない。対話と外交を望んでいるが、再び驚かされないように、準備と用心をしなければならない」と同氏は付け加えた。
ドゥーセット編集委員は、イラン国民らが視聴できるBBCペルシャ語サービスで取材内容を報道しないことを条件に、イラン国内での取材活動を許可されている。イラン当局が設定したこうした条件は、同国内で活動するすべての海外メディアに適用されている。
(英語記事 US must rule out more strikes before new talks, Iranian minister tells BBC)