
タイの首都バンコクで28日、ペートンタン・シナワット首相(38)の辞任を求める抗議集会があり、何千人もが参加した。首相に対しては、カンボジアのフン・セン前首相との電話の音声が流出したことをきっかけに、批判が噴出している。
電話では、両国の国境での衝突について話し合われた。ペートンタン氏は、フン・セン氏を「おじさん」と呼び、タイ軍の司令官について「格好をつけたかっただけで、役に立たないことを言った」と述べた。
この電話は国民の怒りを買った。ペートンタン氏は謝罪したが、電話での発言は「交渉術」だったと弁解した。さらに同氏は28日の集会については、「平和的である限り、抗議するのは(国民の)権利だ」と記者団に話した。
この日の抗議集会は、2023年に与党・タイ貢献党が政権を握って以来、最大規模のものとなった。
モンスーンによる降雨にもかかわらず、何千人もがバンコクの戦勝記念塔の近くに集まり、道路を封鎖した。参加者らはタイの国旗を振り、「首相は国家の敵だ」などと書かれたプラカードを掲げた。
抗議運動を率いる一人、パーンテップ・プールポンパン氏は、首相は「辞任すべきだ。彼女が問題なのだから」と述べた。
抗議に参加するため、タイ北部からバスで一晩かけて来たというセリ・サワンムエ氏(70)は、「タイの主権を守るため、そして首相は不適格だと言うため」ここにいるとAFP通信に話した。また、「私は何度も政治的危機を経験してきた。これからどうなるか分かっている」と述べた。
ペートンタン首相は、今後フン・セン氏と電話することはないとしている。しかし、パーンテップ氏は、多くのタイ国民が、首相と元首相の父親がフン・セン氏に操られていると感じていると、ロイター通信に話した。
ペートンタン氏は、タクシン・シナワット元首相の娘。タクシン氏は15年間の亡命生活を経て、昨年8月にタイに帰国した。ペートンタン氏は、おばのインラック・シナワット元首相に次ぐタイ2人目の女性首相で、10カ月前に就任したばかり。
抗議デモ参加者らは、シナワット体制の終結を求めている。
この日の集会は、20年以上にわたって引き継がれているシナワット政権に抗議する連合体が組織した。
ロイター通信によると、連合体は群衆に向けて声明を読み上げた。その中で、行政府と議会は「民主主義と立憲君主制の利益のために」仕事をしていないと訴えた。
憲法裁判所は7月1日にも、ペートンタン氏の罷免を求める上院議員らの請願を受理するかを決定する。この請願は、フン・セン氏との電話が首相にふさわしいものではなかったとして提出された。
フン・セン氏は、電話の音声を80人の政治家に共有したと明かし、そのうちの1人が流出させたと述べた。その後、自分のフェイスブックページに17分間の通話全体を公開した。
タイとカンボジアの関係は現在、過去10年以上で最も悪い状態にある。緊張関係は、5月に国境地帯で起きた衝突でカンボジア兵が死亡したことをきっかけに一気に高まった。
カンボジア政府は、タイからの果物や野菜、電力、インターネットに至るまでの輸入を禁止した。また、国境紛争を受けて、タイのドラマをテレビや映画館で放送・上映することも禁止した。
両国はまた、互いに国境通行を制限している。
国境をめぐる対立は、カンボジアがフランスの植民地支配を受けた後に国境線が引かれたことに起因し、100年以上前にさかのぼる歴史的な問題でもある。
こうした緊張関係にもかかわらず、シナワトラ家とフン家との友好関係は数十年来のもので、タクシン元首相とフン・セン氏は、互いを「義兄弟」と呼び合う仲だという。
(英語記事 Thousands protest in Bangkok calling for Thai PM to resign)