
ダニー・ヴィンセント記者、香港
香港の民主派政党「社会民主連線」は29日、党を解散すると発表した。今年に入り、香港で解散を発表した主要野党はこれで三つ目。3反政府的な動きを取り締まる中国の「香港国家安全維持法」の施行から30日で5年を迎える香港では、反体制派が政治的迫害に直面しているとする非難の声があがっている。
社会民主連線の事務所の壁には、裁判所の傍聴券を並べて漢字を作った「自由」の文字が並んでいた。
党のメンバーたちは「塵(ちり)となるより灰となれ」と中国語で書かれた横断幕の前に立ち、交代でマイクに向かい、スピーカーを通じて発言した。約20年前に設立されたこの政党は、香港で最後の抗議団体として知られている。
同党の陳宝瑩主席はBBCに対し、「今ではあらゆるところに『越えてはならない一線』が引かれている」、「解散を決めたのは、多くの圧力に直面していたからだ」と述べた。
その上で陳氏は、香港では今やすべてが政治化されているため、詳細な理由については説明できる立場にないと付け加えた。
街頭での抗議活動で知られるこの団体は、メンバーに対する「影響」を避けるために、「慎重な熟慮の末」に解散を決断したと説明。一方で、解散の時期について詳しく説明することはできないとしながらも、「強い圧力」に直面していたと述べた。
「この19年間、内部対立や、指導部のほぼ全員が収監されるという困難を乗り越えてきた。同時に、市民社会の崩壊、草の根の声の消失、あらゆる場所に引かれた『越えてはならない一線』、そして反体制派に対する過酷な弾圧を目の当たりにしてきた」と、同党は声明で述べた。
当局は国安法について、2019年の度重なる暴力的な抗議活動の後、秩序を回復するために必要だったと主張している。しかし、施行から5年が経過した現在、この法律が反体制派を解体するために利用されていると批判の声があがっている。
国務院香港マカオ事務弁公室の夏宝竜主任はこれに先立ち、依然として敵対勢力が香港に干渉していると主張し、「反中勢力と、香港を攪乱(かくらん)しようとする勢力が、いまだに容赦なく、さまざまな形でソフトな抵抗を繰り返していることを、我々は明確に認識しなければならない」と述べていた。
国安法は、国家転覆などを犯罪と定めている。2024年には、香港立法会(議会)が、国安法を補完する「国家安全条例(23条)」を可決し、扇動罪や反逆罪なども新たに規定された。現在、香港の政治的反対勢力の大多数は、すでに香港を離れるか、拘束されている。
社会民主連線の周嘉発副主席はBBCに対し、「もはや政党を運営すること自体が安全ではないと思う。香港では政治的権利がほぼ完全に失われた」と語った。
12日には、党のメンバー3人が、街頭で許可なく募金活動を行い、横断幕を掲げたとして、簡易裁判所から罰金を科された。
周氏によると、2023年には党の銀行口座が閉鎖された。また、過去5年間で、党のメンバー6人が収監されたという。
「意味のある政党が存在しない場所では、人々はやがて、自分たちが団結し、声を上げることでどれほどの力を持てるかを忘れてしまう」、「何もしないのなら、私はなぜ香港にいるのか」と周氏は語った。
周氏は、たとえ政治的に活動していなくても、警察の標的となり、香港を離れるよう当局から圧力を受ける可能性があると懸念している。
「市民としての未来は非常に厳しい。市民としての権利を行使しようと思うなら、非常に厳しい。政治家や活動家だけでなく、一般市民でさえ、慎重にならざるを得ない」と周氏は言い、「ただ活動家だというだけで、香港でこのようなジレンマに直面するとは思っていなかった」と話した。
(英語記事 One of Hong Kong's last major pro-democracy parties disbands)