
カナダ政府は29日、関税をめぐるアメリカとの協議を再開するため、アメリカの大手テクノロジー企業に対する課税を施行直前に撤回した。
ドナルド・トランプ米大統領は27日、カナダのデジタルサービス税を「露骨な攻撃」だと非難し、カナダからの輸入品に対する関税引き上げを警告するとともに、「カナダとの貿易に関するすべての協議を終了する」とソーシャルメディアに投稿していた。
これを受けてカナダ政府は、30日に施行予定だった課税を撤回すると発表した。
カナダの「デジタルサービス税(DST)」は、アマゾン、メタ、グーグル、アップルなどアメリカのIT大手に対し、カナダ国内で年間2000万カナダドルを超えるデジタルサービス収入に3%の課税を行う内容だった。
カナダのフランソワ=フィリップ・シャンパーニュ財務相は声明を発表し、このDSTを撤回すると明言した。また、「多くの大手テクノロジー企業がカナダで事業を展開しながら、カナダ人から得る収益に対して、これがなければ納税しないという状態に対応するため、2020年に発表」したと、DSTについて説明したうえで、「カナダは常に、デジタルサービス課税をめぐり、むしろ多国間合意を望んできた」と述べた。
世界中に数百万の顧客や広告主を持ちながら、企業構造の仕組みにより法人税負担が軽減されている大手の多国籍テクノロジー企業については、イギリスを含む多くの国々が課税方法を見直している。
経済団体は、アマゾン、アップル、グーグルなどのアメリカ企業の負担は年間20億米ドルを超えると試算していた。
トランプ大統領は第2期政権下で、IT大手各社の幹部と親密な関係を築いており、こうした課税に強く反発している。
大統領はカナダの政策を「とんでもない」と批判し、「経済的に我々はカナダに対して実に強い力を持っている」と述べていた。
カナダの輸出品の約76%はアメリカ向けで、その総額は年間4000億ドルを超える。一方、アメリカの総輸出のうちカナダへの割合は約17%にとどまる。
カナダは今回、アメリカとの関係が数カ月にわたり激動し続ける中で、譲歩を選んだ。トランプ氏は就任直後、包括的な新関税の導入や、カナダの「併合」すらほのめかしていた。
対米関係の悪化は、カナダとイギリスの中央銀行総裁を歴任したマーク・カーニー首相率いる自由党の政権復帰を協力に後押しする材料となった。カーニー新政権が発足すると、両国は関係修復に向けた動きを見せ、7月21日までに新しい貿易条件の合意を目指すと発表していた。