2025年7月16日(水)

BBC News

2025年7月1日

イタリアの高級ファッションブランド「プラダ」はこのほど、新作サンダルのデザインについて、「インドにルーツ」があると認めた。このサンダルをめぐっては、インドの伝統的なコルハプリ・サンダルに酷似しているなどとして、数日前からインドで「文化盗用」の論議が巻き起こっていた。

先週ミラノで開催されたミラノ・ファッションウィークで披露された、オープントウの新作サンダルは、編み込みのデザインが特徴。インド西部マハラシュトラ州や南西部カルナータカ州で作られてきた伝統的なコルハプリ・サンダルとよく似ている。

プラダは当初、「レザー」サンダルと説明していたが、インドに起源があることについては言及していなかった。インド国内では、批判の声や、文化盗用だとする指摘が噴出した。

この論議を受け、プラダはBBC宛ての声明で、新作サンダルはインドの伝統的な履物から着想を得たものであることを認めた。

プラダの広報は、同社は「常に職人の技や遺産、デザインの伝統をたたえてきた」とし、「本件について、マハラシュトラ州の商工農業会議所と連絡を取っている」と付け加えた。同会議所はマハラシュトラ州の主要業界団体。

同会議所の責任者は先週、プラダに書簡を送り、何世代にもわたってその遺産を守ってきた職人たちの貢献を評価することなく、そのデザインを商業化したと指摘した。

これに対し、プラダの社会的責任部門の責任者ロレンツォ・ベルテッリ氏は、サンダルのデザインは「初期段階にある」と述べたと、ロイター通信は報じた。

さらに、プラダは「現地のインド人職人たちとの有意義な対話の機会」に前向きで、さらなる議論のためのフォローアップ会議を主催するつもりだと付け加えた。

コルハプリ・サンダルとは

マハラシュトラ州にある都市にちなんで名づけられたコルハプリ・サンダルの歴史は、12世紀にまでさかのぼる。

このレザーサンダルは、伝統的に手作業でつくられる。インドの暑い気候によく適した丈夫なつくりが特徴。レザーを天然染料で染めることもある。

2019年にはインド政府から、地理的表示(GI)の認定を受けた。

世界貿易機関(WTO)によると、地理的表示は特定の地域や場所に由来することを証明する、製品の真正性の証となる。

今回の論議を受け、マハラシュトラ州コルハプリ市の多くの職人は、プラダが伝統的なデザインを正当に評価せずに、そのデザインを使用したことに、落胆の声を上げた。

「このサンダルは、コルハプリの革職人たちの努力の結晶だ。コルハプリの名前をつけるべきだ。他人の労働を利用しないで」と、職人のプラバ・サトプテさんはBBCマラーティー語に語った。

コルハプリ・サンダルは、インド国内で数百ルピー(数百円)で販売されている。そのデザインに酷似したサンダルを、高額商品を展開するプラダが販売することに、憤る人もいる。プラダのウェブサイトには販売価格が記載されていないが、プラダのほかのサンダルは、イギリス国内では600~1000ポンド(約11万8000~約19万7000円)で販売されている。

実業家のハルシュ・ゴエンカ氏は、同じ商品を手作りする地元の職人はほとんど利益を得られていないと指摘する。「職人が利益を失う一方で、国際的ブランドは我々の文化を使って利益を得ている」。

相次ぐ「文化盗用」への非難

国際的ブランドがインドの伝統的な製品を、そのルーツを明示せずに盗用したとして非難されるのは、今回が初めてではない。

2025年のカンヌ国際映画祭では、インドの俳優アーリヤー・バット氏がグッチが手掛けた「サリー」を着て出席した。しかし、グッチはこれを「ガウン」(丈の長いドレス)と紹介し批判を浴びた。

5月には、南アジアの伝統的なスカーフ「ドゥパッタ」を、「スカンジナビア風スカーフ」と呼ぶことがTikTokでトレンドになり、批判的な声が上がった。

一方で、コルハプリ市では、今回の動きによって自分たちに誇りを持てるようになったと話す人もいる。

「職人たちは、自分たちの仕事が認められたと喜んでいる」と、地元の実業家ディリープ・モレ氏はロイター通信に語った。

(英語記事 Prada acknowledges footwear design's Indian roots after backlash

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c1mzz8e0v52o


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