2025年7月16日(水)

BBC News

2025年7月1日

ショーン・ディリー、BBCニュース編集委員

盲導犬と共に26年間を過ごしてきた私は、猛暑の中で犬が疲れたように荒く息をする音を聞くたびに、胸が締めつけられる思いがする。

英王立動物虐待防止協会(RSPCA)によると、犬が暑い屋外で運動をした場合に熱中症にかかるリスクは、自動車内で高温の中に置かれた場合の10倍に上るという。どちらも、犬にとって極めて悪い環境だ。

これは、犬の体温調節能力が非常に限られているためだ。

犬は人間のように汗をかくことができず、肉球からわずかに発汗する程度だ。また、多くは密集した毛に覆われていることから、高温下では体温が急激に上昇しやすい。

あえぐような呼吸、呼吸困難、過度のよだれ、無気力や眠気などは、犬の体温が上がりすぎている主なサインだ。

ひどい場合には嘔吐(おうと)し、最終的に意識を失う。犬の体調に異変があった場合についてRSPCAは、犬を日陰の涼しい場所に移動させ、冷たい水を頭部を避けながら体にかけるよう呼びかけている。ただし、非常に冷たい水は避けた方がよいという。

一方で、体温がこもってしまう恐れがあるため、濡れタオルを犬の体にかけるのは避けるべきだという。可能なら、犬に少量ずつ冷たい水を飲ませ、引き続き冷水を体にかける。ただし、犬が震え始めるほどの量は避ける必要がある。呼吸が落ち着いたら、そのまま動物病院へ連れて行くべきだという。

私から犬の飼い主へのお願いは、暑い天候の中で犬を散歩させたり運動させたりしないでほしいということだ。これは決して過剰な警告ではない。犬は、ほんのわずかな時間で体温が上がってしまう。しかし、多くのケースで、それは防ぐことができる。

私は先週末、信じられない状況に遭遇した。気温30度という猛暑の中、目が見えない私はガールフレンドのガイドで外出していた。あまりに暑くて、盲導犬を外に出せなかったのだ。

午後1時ごろだったが、私たちは犬の散歩をしている人々と十数人近くすれ違った。自分たちの「親友」を危険にさらしているとは気づいていないようだった。

すべての人が犬の扱いに慣れているわけではないことは理解している。しかし、直射日光の下で犬が明らかに不快そうにしている様子――激しいあえぎ、足を引きずるような歩き方、苦しそうな呼吸――を見て、どうして気づかないのか、私には想像もできなかった。この日は私たちですら、日差しの強さに耐えかねて、冷たい水のボトルに手を伸ばしていたのに。

では、暑い天候の中で私たちはどうすれば動物たちを守れるのか。

まず気温が20度に達したら、私はアスファルトの上に手の甲を置き、そのまま快適でいられるかを確認している。これは、犬の肉球が安全かどうかを判断する良い目安になる。

また常に、折りたたみ式の携帯用水飲みボウルと、冷水や氷水を持ち歩いている。気温が24度を超えると「外出しても大丈夫か」と自問し始め、25度以上になったら、玄関から冷房の効いたタクシーまで数メートル歩かせる以外は、犬を歩かせないと決めている。

では、運動はどうすればよいのか。

犬にとっては散歩よりも命の方が大切だ。猛暑の日には犬を屋内にとどめ、可能であれば冷房の効いた部屋や、扇風機のある涼しい場所で過ごさせるべきだ。

数日間散歩をしなくても、犬は問題なく過ごせる。散歩の代わりに、室内でおもちゃを投げて遊ばせるなどの方法で運動させることもできる。

散歩をさせる場合は、早朝か夜遅い時間帯に行うべきだ。極端な暑さの中で犬を散歩させることは、犬の命をまさに危険にさらす行為だ。犬はかけがえのない存在だ。安全に、涼しく、屋内で過ごさせてほしい。

追加取材:モリー・スタツィッカー

(英語記事 How dog walks can become deadly when the heat rises

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c5ylldr18z7o


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