
ロシア中部の軍事工業都市イジェフスクで1日、ウクライナによるドローン(無人機)攻撃があり、3人が死亡、45人が負傷した。ロシア当局が同日発表した。イジェフスクはウクライナとの国境から1000キロメートル以上離れている。
イジェフスクがあるウドムルト共和国のアレクサンドル・ブレシャロフ首長によると、負傷者のうち6人は重傷。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に攻撃について報告したという。ウドムルト共和国ではその後、緊急事態が宣言された。
ウクライナのドローンは、ロシアの地対空ミサイルシステム「トール」やレーダー装置を製造しているとされる、クポル電気機械工場を標的にしたと報じられている。
ウクライナ・メディアによると、同工場は、ロシアの防空システム「オサ」の製造にも特化し、ドローン開発も行っているとされる。
ウクライナ当局者はBBCウクライナ語に対し、ウクライナ保安庁(SBU)が長距離ドローン2機を使い、約1300キロメートル離れた地点からクポル電気機械工場を攻撃したことを認めた。
「このような特殊作戦は、敵の攻撃能力を低下させ、軍需品の製造の連鎖を断ち切るとともに、ロシア領の深部にも安全地帯は存在しないことを示すものだ」と情報筋は述べたと、ウクライナ・メディアは伝えた。
BBCが検証した、ソーシャルメディアに投稿された映像には、工場の屋根付近で爆発が起き、煙突から黒煙が立ち上る様子が映っている。
ロシア連邦航空局(ロサヴィアツィア)は、イジェフスク空港での航空機の運航を一時制限したが、数時間後に解除された。
クポル電気機械工場がウクライナのドローン攻撃を受けるのは、昨年11月以来2度目。前回の攻撃では死傷者は出なかった。
一方、ロシアはウクライナを攻撃し続けている。6月29日には、ウクライナの首都キーウや西部の街リヴィウを含む複数の場所に対し、合わせて537ものドローンとミサイルを発射した。1日あたりとしては過去最多。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は6月30日、ロシアからの攻撃を阻止しようとして死亡したF-16戦闘機のパイロット、マクシム・ウスティメンコ中佐に、「ウクライナ英雄」の称号を授与した。
こうした中、ロシアのプーチン大統領は7月1日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領と電話会談を行った。両首脳が最後に電話で協議したのは2年以上前だった。
マクロン氏は、「ウクライナの主権と領土保全に対する、フランスのゆるぎない支持を強調」したと、仏大統領府は声明で説明した。
マクロン氏はさらに、ウクライナとロシアとの間で「堅固かつ永続的な紛争の解決」を目指す停戦と交渉が行われるよう求めたという。
クレムリン(ロシア大統領府)は、プーチン氏が「ウクライナにおける紛争は、西側諸国がロシアの安全保障上の利益を長年無視してきた結果だと改めて強調」したと、声明で説明した。
そして、いかなる和平合意も「包括的かつ長期的なもの」でなければならず、「ウクライナ危機の根本原因を排除し、領土に関する新しい現実に基づくもの」であるべきだと、声明は主張した。
2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始したロシアは、現在、ウクライナ領の約20%を占領している。これには、ロシアが2014年に一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島も含まれる。
ウクライナ国内の戦況は、北東部スーミ州でロシア軍の進軍が停滞しているとされる。ロシアはその一方で、東部ドニプロペトロウシク州への攻勢を強めているとみられる。ロシア・メディアが報じた未確認情報によると、ロシア軍は同州の村を初めて制圧したとされる。
5月以降、アメリカのドナルド・トランプ大統領の求めで、ウクライナとロシアの間で停戦に向けた協議が2度行われたが、具体的な成果は出ていない。
先週にはプーチン氏が、ロシアは新たな和平交渉に応じる用意があると表明したが、ロシアとウクライナの提案は「まったく相いれない」ものだとも述べた。
ゼレンスキー氏は6月30日、「プーチン氏は、開戦からの全ての期間に加えて、実質この半年間、外交の時間を奪い続けている」と述べ、プーチン氏の意図に疑問を投げかけた。
「ロシアは計画を変更していないし、この戦争から抜け出す方法を模索していない。むしろ、欧州諸国の領土を含む、新たな作戦の準備を進めている」
アメリカのキース・ケロッグ・ウクライナ担当特使も、ロシアは「ウクライナの民間人を標的とした爆撃を行いながら、時間稼ぎを続けることはできない」と6月30日にソーシャルメディアに投稿した。
これに対し、ロシアは即座に反論。「何かを引き延ばす意図はない」とし、アメリカの支援に謝意を示した。
(英語記事 Three killed in Ukrainian drone attack on central Russia)