2025年7月13日(日)

BBC News

2025年7月4日

パレスチナ・ガザ地区の支援物資配給所で撮影されたとされる動画の一場面

ルーシー・ウィリアムソン中東特派員(エルサレム)

パレスチナ・ガザ地区でイスラエルとアメリカが支援する組織が実施し、物議をかもしている援助物資の配給をめぐり、警備を請け負っていた人物がBBCに、自分の同僚らがパレスチナ人に複数回、発砲するのを目撃したと話した。何ら脅威を感じさせない、腹をすかせた人たちに向けて発砲し、機関銃を使うこともあったという。

この元契約警備員によると、配給所から女性や子ども、高齢者らの一団が立ち去るのが遅すぎるとして、監視塔にいた警備スタッフが機関銃で発砲したことがあったという。

援助物資の配給に当たっている「ガザ人道財団(GHF)」は、そうした話は全くの虚偽だと主張。GHFの配給所で銃撃された民間人は一人もいないとする声明のとおりだとした。

GHFは5月末にガザで活動を開始。ガザ南部と中部の数カ所に設置した拠点で、限られた量の援助物資を配給している。活動開始までの11週間、ガザはイスラエルによって全面封鎖され、食料が一切入っていなかった。

この配給システムは、戦闘地域を通って数少ない配給所まで徒歩で向かうことを多くの人々に強いているとして、広く批判されている。国連や地元医師らは、GHFが活動を開始して以降、配給所で食料を受け取ろうとしたパレスチナ人400人以上がイスラエル軍に殺害されたとしている。イスラエルは、現在の配給システムによって、援助物資がイスラム組織ハマスに流れるのを防いでいるとしている。

元契約警備員は、配給所で同僚の警備員がパレスチナ人の集団に発砲した状況について、「出口を見下ろす土手の上に立っていた請負人が、群衆に向かって15発から20発連射した」と述べ、こう続けた。

「一人のパレスチナ人男性が地面に倒れ、動かなくなった。そこに立っていた別の請負人が、『やった、君が一人倒したぞ』などと言い、二人は声を上げて笑っていた」

今回、BBCの取材に匿名を条件に応じた元契約警備員は、この事態をGHFのマネージャーらに報告したが、偶然の出来事として取り合ってもらえず、パレスチナ人男性が「つまずいた」か「疲れて気を失った」のだろうと言われたという。

GHFは、この目撃談をした人物は「不満のある元契約者」で、不正行為があったため契約を解除したと説明した。一方、元契約警備員はこれを否定し、仕事をやめた後も2週間給与が支払われていたことを示す給与明細を見せた。

取材に応じた元契約警備員は、GHFの配給所4カ所すべてで働いたと言い、規則や統制がほとんどなく、何をやっても許される文化があったと話した。

また、契約者らには交戦規則も標準的な作業手順も明確にされておらず、チームリーダーから「脅威を感じたら撃て。まず殺すつもりで撃って、それから質問しろ」と言われたこともあったと述べた。

さらに、この企業には、「ガザに行くのだからルールはない。好きなようにやれ」という文化が感じられたと話した。

「パレスチナ人が配給所から立ち去ろうとし、何ら敵意を示していないのに、それでもその人たちに向かって威嚇射撃をするなら、私たちは間違っている。犯罪的な過失がある」

元契約警備員はまた、配給所にはすべて監視カメラが設置されていたと説明。けがをしたり銃撃されたりした人はいないとするGHFの主張は「真っ赤なうそ」だと述べた。

GHFは、BBCに提供された映像の中で聞こえる銃声について、イスラエル軍によるものだとしている。

元契約警備員によると、現地のチームリーダーらは、ガザの人々を「ゾンビの大群」と呼び、「それらの人たちには何の価値もないと暗に言っていた」という。

配給所ではパレスチナ人らが、スタン・グレネード(光や音が出る手りゅう弾)の破片に当たったり、催涙スプレーをかけられたり、群衆の押し合いの中で有刺鉄線に体を傷つけられたりし、さまざまな形で危害を加えられているという。

元契約警備員は、パレスチナ人らが深刻な傷を負ったと思われる場面も何度か目撃したと話した。男性が唐辛子スプレー1缶全部を顔にかけられたり、群衆に向かって不適切に発射されたスタングレネードの金属部品が女性に当たったりしたという。

「彼女は金属片で頭を直撃され、地面に倒れ込んで動かなくなった」、「彼女が死んだのかはわからない。意識がなく、完全にぐったりしていたのは間違いない」と、元契約警備員は述べた。

GHFをめぐっては、170を超える慈善団体やNGOなどが今週、活動停止を求めた。オックスファムやセーブ・ザ・チルドレンなどの団体は、援助物資を入手しようとするパレスチナ人に対し、イスラエル軍が「日常的に」発砲しているとしている。

イスラエルは、物資を求める人を兵士が意図的に撃つことはないとしている。また、GHFのシステムについて、ハマスの介入を防ぎながら、必要な人に支援を直接提供しているとしている。

GHFは、5週間で5200万食以上の食料を届けたとしている。そして、他の組織は「援助物資が略奪されるのをただ傍観している」としている。

ハマスは2023年10月7日、イスラエルを攻撃し、約1200人を殺害、251人を人質に取った。イスラエル軍はこれに対抗し、ガザで作戦を開始した。

ハマスが運営するガザ保健当局は、それ以来、ガザで少なくとも5万7130人が殺害されたとしている。

追加取材:ギディ・クライマン、サマンサ・グランヴィル

(英語記事 Gaza aid contractor tells BBC he saw colleagues fire on hungry Palestinians

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cdx5q24ykleo


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