
ウクライナの首都キーウで3日夜から4日朝にかけて、ロシアによるドローン(無人機)の集中攻撃があった。現地当局によると、1人が死亡、26人が負傷したという。これに先立ち米ロ大統領は停戦の可能性について電話会談したが、ドナルド・トランプ米大統領はウラジーミル・プーチン・ロシア大統領の反応に「がっかりした」と話している。
キーウでは夜通し、ドローンの飛来音と防空システムの砲撃音、爆発音などがひっきりなしに響き、朝には刺激臭のある煙が首都に立ち込めた。
ウクライナによると、ロシアはこの夜、過去最多のドローン539機とミサイル11発を発射した。これまでの最多記録は6月28日のドローン537機だったという。
この攻撃の数時間前には、アメリカのトランプ大統領とロシアのプーチン大統領が電話会談していた。トランプ氏は会談後、プーチン氏がウクライナへの戦争を終わらせようとしていないことに「がっかりした」と述べた。ロシア側は、目的達成のために必要な限り戦争を続けるとしている。
ウクライナ空軍によると、ロシアの今回の夜間空襲でドローン539機のうち72機が、ウクライナの防空網を突破した。空軍はメッセージアプリ「テレグラム」で、キーウが「攻撃の主な標的」になったとし、空襲警報は8時間以上にわたって鳴り続けたと明らかにした。
ウクライナ国家非常事態庁は、消防隊員がキーウで発生した火災の消火活動にあたる様子の映像を、ソーシャルメディアで公表した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、今回の攻撃がこの戦争の中でも最も「示威的で、かつ冷笑的」なものの一つだと非難し、「過酷で眠れない夜だった」と述べた。
ゼレンスキー氏は、この攻撃が米ロの両大統領の電話会談直後のものだったと指摘。「ロシアは再び、戦争を終わらせるつもりがないことを示した」とテレグラムに投稿した。
ゼレンスキー氏は、国際社会の同盟関係にある国々、なかでもアメリカに対し、ロシアへの圧力強化と制裁の拡大を求めた。
その後、ゼレンスキー氏とトランプ氏は4日に電話会談を行い、アメリカの武器供与について協議した。ゼレンスキー氏はこの会談について、「非常に重要で実りある会話だった」と述べた。この首脳会談に先立ちアメリカは、ウクライナにとって不可欠な兵器(防空兵器を含む)の一部の供給停止を決定している。
ゼレンスキー氏はソーシャルメディア「X」で、「我々は防空の可能性について話し合い、防空強化のために協力することで合意した」と書いた。
ウクライナは、武器の供給停止によって激化する空襲や前線でのロシアの進軍に対する防衛能力が損なわれると警告している。
ポーランド領事館も損傷
ウクライナ当局によると、夜間攻撃により鉄道インフラが損傷し、学校や建物、車両が炎上した。
ポーランドのラドスワフ・シコルスキ外相は、ポーランド領事館も被害を受けたと明らかにした。
ロシアの攻撃はキーウ以外にも、スーミ州、ハルキウ州、ドニプロペトロウシク州、チェルニヒウ州にも及んだ。
キーウ市の軍事行政責任者によると、スヴャトシンスキー地区のがれきの中から遺体が発見された。
ロシア国防省は、「キエフ政権によるテロ行為への報復」として「大規模な攻撃」を実施したと発表した。「キエフ」は「キーウ」のロシア語読み。
一方、ロシア南部ロストフ州の暫定知事は、4日夜に国境近くの村でウクライナのドローン攻撃で女性が殺害されたと発表した。
「とてもがっかり」とトランプ氏
停戦交渉が停滞する中で、ロシアはウクライナへの大規模な空襲を続けている。
ウクライナでの戦争は、ロシアが2022年2月に全面侵攻を開始して以来、3年以上にわたり続いている。
トランプ氏は3日にプーチン氏と電話会談した後、戦闘終結に向けた「進展はなかった」と述べた。
「今日のプーチン大統領との会話に、とてもがっかりしている。彼は(停戦合意の)段階にないと思うし、とても残念だ」とトランプ氏は言い、「彼が(戦争を)止めようとしているとは思えない。それは本当に残念だ」とも述べた。
これに対してクレムリン(ロシア大統領府)は、「ウクライナ戦争の根本原因」を取り除くことを引き続き目指すと改めて強調した。プーチン氏は、ウクライナをロシアの勢力圏に戻すことを目指しており、先週には「ウクライナ全土は我々のものだ」と発言している。
トランプ氏の発言について、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官はBBCに対し、政治・外交的手段でロシアの目的を達成することが不可能である限り、「我々は『特別軍事作戦』を続ける」と述べた。
トランプ氏はこれより先に、アメリカはウクライナに「武器をあげている」と述べ、弾薬の供給を完全に停止したわけではないと主張していた。トランプ氏は、ジョー・バイデン前米大統領が「(ウクライナに)武器をあげたせいで、この国全体を空にしてしまった」と非難し、「自分たち用に十分な武器を確保しなくてはならない」と述べていた。
北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長は4日、アメリカが自国の兵器備蓄を維持する必要があることには理解を示しつつ、ウクライナにも必要なものが行き渡るよう、「一定の柔軟性」を望むと述べた。
一方、ドイツ政府報道官は、ウクライナに供与するため、アメリカからパトリオット防空システムを購入する交渉を進めていると明らかにした。
(英語記事 Kyiv hit by barrage of drone strikes as Putin rejects Trump's truce bid)