2025年7月13日(日)

BBC News

2025年7月6日

米テキサス州を襲った河川氾濫で押し流されたピックアップトラック(5日、テキサス州カーヴィル)

アメリカ南部テキサス州の中南部で大雨のため4日未明に起きた河川氾濫で、確認された死者の数が5日、少なくとも51人になった。そのうち15人が子どもだった。現在も生存者の捜索が続いている。

特に被害の大きかったカー郡の当局によると、同郡内では43人が死亡し、グアダルーペ川沿いにあるキリスト教系の女子用サマーキャンプ場から、27人の子どもが行方不明となっている。

カー郡のほか、トラヴィス郡やトム・グリーン郡などで、複数の死亡が確認されている。

死亡した中には、8歳の子供や、11歳と13歳の姉妹が含まれるという。

当局によると、これまでに約850人が救助された。天気予報では、今後さらに雨が降り、再び洪水が発生する可能性があるとされている。

グアダルーペ川は4日未明、1時間足らずで8メートル以上増水。この間、多くの人が就寝中だった。川沿いではサマーキャンプが開かれていたほか、7月4日の独立記念日を祝うためにキャンプ場に多くの人が集まっていた。

テキサス州のグレッグ・アボット知事は5日午後の記者会見で、捜索活動を強化するため非常事態宣言の対象を拡大したと発表した。

アボット知事は、「この災害の被害に遭った全員」を見つけ出すまで、当局は徹底的に捜索を続けると述べ、「任務が完了した時点で、作業を止める」と強調した。

続けているのは捜索救助活動で、遺体収容作業ではないと、当局は強調している。救助隊は、グアダルーペ川を上下に移動し、洪水で流されたかもしれない人々を探しているという。

グアダルーペ川沿いにあるキリスト教系の女子専用サマーキャンプ場「キャンプ・ミスティック」からは、27人が行方不明となっている。

テキサス州のダン・パトリック副知事は、BBCラジオの番組で、「キャンプ・ミスティックで行方不明となっている27人のうち、多くは12歳未満の少女たちだ」と述べた。

副知事はさらに、独立記念日の週末を過ごすために川沿いを訪れていた人々も多く、地域全体でさらに多くの行方不明者がいる可能性があると話した。

自宅と経営するレストランが破壊されたロリーナ・ギレンさんはBBCニュースに、週末を過ごすため訪れていた人たちの車28台が川沿いにある自分の土地に駐車していたのだと話した。

氾濫する川に流される一家5人の悲鳴が聞こえたのだとギレンさんは言い、「あの人たちは救助を待って木にしがみついていたけれども、救助隊はそこまでたどりつけなかった」のだと話した。

「キャンプ・ミスティック」は、参加者約750人の保護者に対し、「直接連絡がなかった場合、その子どもは行方不明と見なされる」とメールで通知した。一部の家族はすでに、自分の子どもが死亡したと公表している。

一方、テキサス州中部トラヴィス郡の当局は、洪水のためさらに2人が死亡し、10人が行方不明となっていると発表した。

気象当局は、中部テキサスで引き続き週末にかけて雨が降る予報のため、洪水が発生する可能性があると警告している。

アメリカのドナルド・トランプ大統領は、連邦政府が地元当局と緊密に連携して緊急対応にあたっていると述べた。国土安全保障省のクリスティ・ノーム長官は、多くの命が失われたことを大統領が「深く悲しんでいる」と述べ、連邦政府による全面的な支援を約束した。

ノーム長官は5日午後の記者会見にアボット知事と共に出席し、連邦政府が近く沿岸警備隊を派遣して捜索活動を支援すると発表した。

予報や警報は

大雨がもたらした今回の災害の予兆は、3日朝に現れた。中部テキサスで複数の郡が雨と雷雨に見舞われ、米国立気象局(NWS)は午後1時18分にカー郡を含む地域に対して「洪水注意報」を発していた。

4日未明にはサン・サバ川、コンチョ川、コロラド川の水位が上昇し、状況がさらに深刻化。NWSは、緊急度を増した警報を次々と発した。

しかし、こうした警報は、NWSのソーシャルメディア・アカウントや放送ニュースを通じて拡散されたため、大半の住民は就寝中だった。

キャンプ・ミスティックに参加していた13歳のエリノア・レスターさんによると、自分より幼いキャンプ参加者たちは川岸に近いキャビンに寝泊まりしていた。その川岸に近いキャビンが、最初に浸水したのだという。

「キャンプは完全に破壊された」、「本当に怖かった」と、ヘリコプターで救助されたレスターさんはAP通信に話した。

BBCはカーヴィル近郊でジョナサン・ロハスさんとブリタニー・ロハスさんの夫妻に話を聞いた。親族の家がどうなったかを確認しに来たのだが、残っていたのは基礎部分だけだったと、夫妻は話した。

豪雨の夜、その家の中には家族5人がいたという。母親と赤ちゃんは今も行方不明だ。10代の息子レオさんは、有刺鉄線に引っかかり流されずに済み、一命を取り留めた。レオさんは現在、病院で手当てを受けている。

BBCがロハス夫妻にインタビューしていた最中、近所の住民が家から回収した品を手渡しに来た。それはレオ君の小銭貯金が入ったガラスびんで、ラベルには「レオのサバイバルキット」と書かれていた。

キャンプ・ミスティックにいた子どもたちの保護者らは、ソーシャルメディアで必死に安否情報の提供を呼びかけていた。フェイスブックの地域住民グループは、行方不明者情報の掲示板と化した。

一部の保護者は、行方不明だった家族が死亡したことをソーシャルメディアで報告していた。

カー郡は、州中央部にある丘陵地帯の中心に位置する。なだらかな丘陵とたくさんの川や湖、数々のワイン農園が点在することから、観光地として知られる。

しかしこの地域は「鉄砲水の通り道」とも呼ばれ、長年にわたり洪水被害を受け続けてきた。

なぜ川沿いのサマーキャンプに避難勧告が出されなかったのかと記者団が質問すると、現地当局は豪雨の規模が予想を超えていたと説明した。

カー郡行政トップのロブ・ケリー判事は、「このような洪水が来るとは誰も知らなかった」と述べた。

「すべて失った」

被災した自宅に5日になって戻った住民たちは、甚大な被害に直面していた。

カーヴィルに住むアンソニーさんの自宅の床は、泥とがれきで覆われていた。冷蔵庫は倒れ、家財道具のほとんどは使い物にならなかったが、幼少期の写真と赤ちゃんの頃の毛布が入った箱だけは無事だった。

「持っていたものは、すべて失った」と、アンソニーさんはBBCに語った。

アンソニーさんは、食料の配給を受け取るため、赤十字の避難所を訪れたという。この地域に家族がいないため、「今は、どうすればいいかを考えているところ」だと話した。

(英語記事 Search for missing continues as Texas floods kill 51, including 15 children / A boy saved by barbed wire, a 'destroyed' camp and missed warning signs in Texas floods )

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cdr3z36y4mko


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