暗号資産取引業最大手バイナンスの創業者で、「CZ」としても知られるチャンポン・ジャオ氏
オズモンド・チア・ビジネス記者
ドナルド・トランプ米大統領は2日、暗号資産取引業最大手バイナンスの創業者で、反マネーロンダリング(資金洗浄)法違反で服役したチャンポン・ジャオ氏について、「誰なのか知らない」と発言した。トランプ大統領は10月、ジャオ氏に恩赦を与えたばかり。
BBCがアメリカで提携するCBSニュースは、この日に放送した「60ミニッツ」のインタビューの中で、この恩赦についてトランプ氏に質問した。
「CZ」としても知られるジャオ氏は2023年11月、反マネーロンダリング法違反について罪を認め、バイナンスの最高責任者(CEO)を辞任すると合意。2024年4月に禁錮4カ月を言い渡され、同年9月末まで服役した。
ジャオ氏の企業は、トランプ氏と関係のある企業と提携しており、暗号通貨の新規プロジェクトを展開している。そのうちの一つ、トランプ・タワーに本社を置く「ドミナリ・ホールディングス」の顧問には、トランプ氏の息子たちが名を連ねている。
「60ミニッツ」のノラ・オドネル司会者は、トランプ氏に対し、政府の検察官らが「アメリカの国家安全保障に重大な損害を与えた」と主張したジャオ氏に、なぜ恩赦を与えたのかと質問した。
するとトランプ氏は、「いいか、準備はいいか? 私は彼が誰なのか知らない」と述べた。
トランプ氏は、ジャオ氏と会った覚えがなく、「彼が誰なのかまったく分からない」と話したうえで、ジャオ氏がジョー・バイデン前大統領の政権による「魔女狩り」の犠牲者だと聞かされたのだと述べた。
このインタビューの中でトランプ氏は、暗号資産を支持すると発言。アメリカがこの分野で主導的な立場を確保しなければ、中国やその他の競合国が優位に立つ可能性があると警告した。
ジャオ氏は判決により金融事業の運営を禁じられていたが、この制限は大統領の恩赦によって解除された。ただし、恩赦によってジャオ氏とアメリカの規制当局との関係や、バイナンスにおける同氏の役割に変化があるかは不明だ。
恩赦発表の際、ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、バイデン政権下でのジャオ氏の起訴を「暗号資産に対する戦争」の一環と位置づけ、トランプ氏の恩赦が個人的な財務的利益に基づくものだとする批判に反論した。
「これはバイデン政権による過剰な起訴だった」とレヴィット報道官は述べ、この件を「徹底的に精査」した結果、「大統領はバイデン政権による司法の逸脱を正すために、憲法上の権限を行使した」と語った。
バイナンスのプラットフォームは現在も、世界で最も利用されている暗号資産取引所となっている。
トランプ政権は以前、暗号資産起業家ジャスティン・サン氏に対する詐欺事件を停止していた。同氏は、トランプ一家の暗号資産企業「ワールド・リバティ・ファイナンシャル」に投資していた。
5月には、「ワールド・リバティー・ファイナンシャル」が発行したステーブルコイン(法定通貨やコモディティー価格と連動するように設計された暗号資産)が、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビの企業による20億ドルのバイナンスへの投資に使用されることが発表された。
トランプ氏はまた、マネーロンダリングに関連する罪に問われていた暗号資産取引所ビットメックスの創業者らや、違法薬物取引の場として知られるダークウェブ上のマーケットプレイス「シルクロード」の創設者ロス・ウルブリヒト氏にも恩赦を与えている。
(英語記事 'No idea who he is,' says Trump after pardoning crypto tycoon)
