2022年8月9日(火)

ネット炎上のかけらを拾いに

2016年11月22日

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 また、そもそもこの動画で訴えられている「日本女性のリプロダクティブ・ヘルスの知識、先進国の中で最下位レベル」という調査結果について、この国際調査(International Fertility Decision-making Study)自体が、信用度の低いものであることを社会学者の田中重人氏が指摘している。参考:日本人は妊娠リテラシーが低い、という神話――社会調査濫用問題の新しい局面 田中重人 / 社会学 参考2:2016-11-14 Probrem of ”New Femininity Test” 参考3:I LADY. 「新・女子力テスト」とニセ医学 ジョイセフ×電通「粉かけ罰ゲーム動画」の背景 (messy)

 

 対象者選択に偏りが見られることや、13個の質問項目に関する日本語訳が適切ではなく、日本の回答者が適切な回答を選べなかった可能性があることなどを田中氏は指摘している。

 筆者は田中氏の分析についてもっともだと感じるが(確かに質問の日本語訳がわかりづらい)、この調査が仮に信頼性が置けるものだとしても、粉ぶっかけ動画の内容には疑問がある。なぜなら、この調査で「先進国の中でリプロダクティブ・ヘルスの知識が最下位レベル」なのは、日本人女性だけではないからだ。日本人男性も、まぎれもなく最下位レベルなのである。なのに一体どういう理由で、「日本人女性が最下位レベル」であることだけ強調されているのか。同じく最下位レベルの「男性」を棚に上げ、女性の知識のなさをバカにするコメントも早速見かけてしまった。コメント主は恐らく、男性も最下位レベルという「結果」を知らないだろう。動画で言われてないのだから。女性への啓もうであったとしても、この調査を元とするのであれば、「日本人は男性も女性もリプロダクティブ・ヘルスの知識が先進国の中で最下位レベル」と書いても良かったはずだ。

怒る女性と怒らない男性

 女子力女子力って、メイクやファッションを頑張るのもいいけど、ちょっとリプロダクティブ・ヘルスの知識もつけなさいよ、という上から目線の説教。最近の若い女性はそもそも本気で「女子力磨かなきゃ!」などと言っているのか。これ自体がそもそも怪しい前提であり、早くも若い女性を小バカにした感があるが、なかなかターゲットにメッセージが伝わることのない啓もう動画の制作において、何とか面白おかしいものにしたいと四苦八苦した挙句の「女子力」選択なのだろうとは思う。結局すごく説教くさい仕上がりだけど。

 しかし、性に関する知識は、片方の性だけが覚えればそれでいいというものでは決してない。先に引用したコメントが指摘している通り、なぜ男性は「男子力」とやらを試されないのか。粉をぶっかけられないのか。女性が「コンドームつけて」と買ってきたコンドームを差し出したところで、「お前、俺のこと愛してないのか」などと言う男性だって腐るほどいるだろう。筆者は実際に何人もの女性から、「(性器が)デカいからコンドームがキツい」「とにかく中出しがしたい」「結婚するつもりだからいいじゃん」などなどの理由(言い訳?)でコンドームをつけない男性がいることを聞いた。

 女性がしっかりしないから、避妊が進まない。女性がコンドームを買い、「つけて」と言えば男性は素直につける。本当にそのようにこの動画の制作元は考えているのだろうか。ジェンダーギャップ111位の、この国で? 与党による男女共同参画法案会議で「女性の社会進出は社会全体を豊かにしない」などという意見が堂々と述べられているこの国で?

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