2022年8月9日(火)

ネット炎上のかけらを拾いに

2016年11月22日

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 今年の3月、大阪の公立中学校の校長が全校集会で「女性にとって最も大切なことは子どもを2人以上産むこと」などと発言し顰蹙を買いまくった。この校長は、「女性しか、子どもを産むことができません。男性には不可能なことです」などと言い、子どもを産んだ女性はその後で無料で国立大学へ行けばいい(能力に応じて)と続けたそうだ。

 このニュースを聞いて筆者が不思議でならなかったのは、「女性にとって最も大切なことは子どもを2人以上産むこと」ならば、必然的に男性にとっても、子どもを2人以上つくることが義務となるはずなのに、なぜか男性の存在がきれいに消えていたことだ。男子生徒は、「子どもを必ず2人以上つくりましょう」とはなぜか言われなかった。この後校長は、「子育ては必ず夫婦で助け合いながらするもの」などと続けているのだが、それだけに余計に、子作りの部分において男性の役目が触れられていないのが妙だった。

 女性は若いうちに子どもを産まなければならないというニュアンスを校長はちらつかせているが、それなら男性だってそれに協力しなければならない。自分の恋人が若いうちに結婚し、子どもつくらなければいけない。しかしそのことは、なぜか触れられない。まさか、男はゆっくりと教養を身に着け、確固たる地位を社会で築いてから、30代あたりで自分より10歳ほど若い女と結婚すればいい、とでも思っているのだろうか。付け加えれば男性だって加齢によって精巣が縮小し精液の量と質が低下する傾向があるのだが、なぜか男性は「若いうちに」とは言われない。

 女性向け媒体で「彼を結婚する気にさせる方法」の特集が組まれる一方で、男性の間では「結婚は墓場」とまことしやかにささやかれる。「女は早く産め」という圧力がかかる一方で、「出産適齢期を把握するのは女の役目」であり、「環境が揃うまではきっちり男に避妊させるのは女の役目」であり、「出産適齢期に合わせて男を結婚する気にさせ、子作りさせるのは女の役目」。だって産むのは女だから。粉ぶっかけ動画と、あの校長の発言には、「男の不在」という共通点がある。男はとにかく働けばいいのであって、女の体のことまで心配する必要はない。こんな、「男is働きアリ」な価値観を年長者から押し付けられている男も怒っていいはずなのだが、なぜか男性の多くは自分の体が雑に語られること(もしくは語られないこと)に無頓着だ。怒る女性はもっともだし、怒らない男性は鈍感である。

  
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