人間に奉仕する学問として、末来を予測する「法則」を重んじてきた自然科学。その代表格が物理学で、これまでに数々の法則や理論が打ち立てられてきた。その一方で、これまで不当に軽んじられてきたのが「偶然」である、と著者の斎藤成也氏はいう。
進化のほとんどは偶然に左右されて進んで行くとする中立進化論の「伝道師」を自任する著者。今回の「歴誌主義宣言」はその考えをさらに推し進め、真につじつまの合う世界観は「有限」「偶然」「時間」に裏打ちされたこの「歴誌主義」によってしか記述し得ないと高らかに宣言する。学問の世界に議論を巻き起こすべく、常識に歯向かう1冊。