2024年5月18日(土)

World Energy Watch

2024年4月22日

補助金制度への3つの疑問 

 産業への支援が物価抑制につながっているならば、家庭も間接的に恩恵を被っているが、補助金制度にいくつか疑問がある。

〇 2年以上も対策を続けているが、実質的には円安により影響を受ける産業への補助であり、円安が続く以上止めることができないのではないか。

〇 燃料費の補助を行うと、燃料消費が多い産業だけへの補助になり、公平性に欠けないか。違う形の補助にすべきではないか。

〇 脱炭素の動きに逆行する。たとえば、脱炭素のため電気自動車(EV)への補助を行っているが、燃料費への補助はEV導入政策と矛盾する。

 補助金を続ける背景には、主要国の中で為替の影響を受けている国が日本だけという事情もあるが、そもそも日本が貧しくなり、燃料費の値上げに耐性がなくなっていることがある。

 EUのいくつかの国の1人当たり国内総生産(GDP)とガソリン価格は、図-5の通りだ。日本はEUとの比較では、やはりガソリン価格が安い国なのだ。それでも補助金で支援が必要なのは、EUとの比較で貧しい国になったということだろう。

GXの時代に逆行する燃料補助

 ガソリンなどの生活必需品は価格に対する弾性値が低く、価格が上昇しても需要は大きく落ちることはない。ガソリン価格の抑制も大きく需要を増やすことにはならないので、補助金は温暖化対策には直接影響を与えない。

 ガソリン価格がEVの選択に大きな影響を与えることも日本ではないので、燃料油補助は家庭の脱炭素には大きな影響はないと考えられる。

 しかし、産業部門での脱炭素はどうだろうか。たとえばボイラーに代えヒートポンプを導入すればエネルギー消費は減少するが、重油、灯油への補助は導入のインセンティブを弱め、脱炭素の動きに反する。

 政府が脱炭素を謳いながら長期にわたり補助金の支出を続けるのは、それだけ日本の産業界が苦しいからだ。たとえば、2024年問題によるコストアップに苦しむ物流業界にとって補助金の効果は大きい。

 しかし、補助金が長期にわたる理由の一つは円安だ。経済成長により給与増と円安を止めることが当然優先課題であるべきだ。

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