個人的なことながら、先日ロシアに出かけてきた。前回のロシア訪問は、2019年秋にまで遡る。筆者にとり、ロシアでの現地調査は研究活動の肝であり、コロナ禍と戦争により中断していたそのライフワークを、6年振りに再開することにした。
とはいえ、研究費でロシアに渡航することの是非については、大学によって判断が分かれており、所属する北海道大学では現時点で業務としてのロシア出張が認められていない。埒が明かないので、もう休暇を利用して私費で行くしかないと覚悟を決め、ロシア渡航を決断した。
ただ、22年2月のウクライナ侵攻以降、ロシアは日本を「非友好国」の一つと位置付け、学者数人を含む日本人のロシア入国禁止リストを制定している。今のところ筆者はそのブラックリストには載っていないが、及ばずながら、プーチン政権のウクライナ侵攻策を批判する論陣を3年以上張ってきた。果たして自分のような人間がロシアに入国できるのだろうか?
ちなみに、現在、ロシアの短期滞在ビザを取得すること自体は、ごく簡単である。ネットで申請すれば、普通は数日後には電子ビザがもらえる。筆者も、内心冷や冷やしながら申請してみたところ、あっさりと下りた。しかし、ビザを発給することと、実際に入国を許可することとは、まったく別物である。ビザを持っていても、ロシア入国を拒否される可能性もいくばくかはある。
結論から言えば、ロシア入国を認められ、予定どおりロシア極東・シベリアの5都市を周ることができた。しかし、入国時の取り調べは、想像を絶するものであった。実に10時間に及ぶ聴取の末に、ようやく入国を認められたのである。
別室にご案内
日本との直行便が消滅した今、ロシア極東やシベリアに渡航するのには、中国経由が一般的だろう。今回、北京発の海南航空便で、ロシア極東の玄関口、ウラジオストク空港に降り立った。現地時間で、昼の12時前のことである。
ウラジオストク空港で、はやる気持ちを抑え、入国審査の係官にパスポートと電子ビザを提示する。しかし、先方はどうも難しそうな顔をしている。
「別の上官が来るから、待機列に戻って待つように」と告げられた。しばらくすると私服の男性が表れ、個室へと案内された。やはり素性がバレているのだろうか?