上部枠線

白隠禅師の不思議な世界
芳澤勝弘 著

目次 立ち読み


白隠慧鶴(一六八五~一七六八)という禅僧の名を聞いても、どういう方であったのかピンとくる方は、あまりいないでしょう。ましてや、いまや西洋世界も注目するZENが、彼によって広められたことを知る人も、意外に少ないのです。

白隠は、その功績から、「禅(臨済禅)の中興の祖」と呼ばれています。中国で生まれた「禅」を日本化したのです。室町時代以降、型にはまってしまい、あるいは知識ばかりになっていた公案(禅の修業者に課せられる問題)を生き生きと新しいものにし、日本語の公案もつくりました。そのシステムは、現在に至っています。

また白隠は、禅の教化の手段として、おびただしい墨蹟や禅画を人々に書き与えており、現在でもかなり多くのものが残っています。とくに一連の白隠禅画では、じつにさまざまな表現上の創意工夫がほどこされており、江戸時代のものとは思えぬような斬新な、時代を超えた表現方法が見られます。

本書では、それらのいくつかを見て、絵解きをしながら白隠が何を伝えようとしたのかを見ていきたいと思います。

<書籍データ>
◇B6判並製・186頁
◇1,470円(本体1,400円+税)
◇2008年7月20日

<著者プロフィール>
芳澤勝弘
(よしざわ・かつひろ)
花園大学国際禅学研究所副所長・教授。白隠禅画・墨蹟の調査を主なフィールドワークとし、学術的知見に裏打ちされ、かつわかりやすい絵解きには定評がある。著書に『白隠―禅画の世界』(中公新書)、『白隠禅師法語全集』全十三巻、禅文化研究所刊)、『白隠禅師自筆刻本集成』(禅文化研究所)、『基本典籍索引叢刊』全十三巻、主編(禅文化研究所刊)など。現在、白隠禅画・墨蹟1000点を収録した『白隠禅画墨蹟』全三巻を編集中(〇九年二月、二玄社より刊行予定)。

本書の主人公である白隠禅師は、江戸時代の禅僧で、禅宗の世界では「五百年間出」と呼ばれて尊敬されている方である。五百年に一人出るほどの偉人だというのであるが、世間一般にはさほど知名度のある日本人ではないだろう。その理由のひとつは、これまでこの人物が宗門というせまい世界に閉じ込められて来たことにあると思う。しかし、白隠は宗教の世界だけにとどめ置くことのできないスケールの大きな人物である。

一方で、禅師の書画は江戸時代から好事の士の注目するところであった。ここ数十年は海外のZENへの興味が高まる中で、その「芸術」への関心も高まってきており、国内でも美術として再評価する動きもある。しかし、禅師は芸術の範疇にのみ収めて語るべき人物でもない。

白隠は数多くの著作をのこし、また、おびただしい数の書画をのこしている。その多くは特徴ある雄勁な筆致で描かれたものである。けれども、中には一見して漫画と思われるようなものも多くあり、これらの絵ではじつにさまざまな表現上の工夫を凝らし、江戸期とは思えぬような斬新な、時代を超えた表現方法が駆使されている。本書では主として、このような禅画をとりあげ、そこに込められた意味を考え、白隠の思想の一端を窺い、白隠禅師の不思議な世界を考えてみた。(続きは本書でお読みください)
<目次>

第一部 禅と禅画 白隠とその作品をめぐって(芳澤勝弘)


・禅と室町文化
・江戸時代と白隠の出現
・「おふじさん霞の小袖ぬがしやんせ」
・「この絵は達磨の絵にあらず」
・二人の「富士見西行」
・「聖凡一如」
・上求菩提、下化衆生
・軸の中に描かれたもう一幅の軸
・白隠の禅画とマグリットのパラドックス
・隻履蘆葉達磨
・「メビウスの環」が示す禅の真理
・白隠の化身としての布袋像
・「親子布袋図」の入れ子構造
・白隠の円相
・究極の白隠禅画、地獄=極楽

第二部 鼎談 現代に問い掛ける禅(芳澤勝弘・松井孝典・合原一幸)
一、 われわれは世界をどうとらえるか ―白隠の禅画をめぐって
二、 共同体へのフィードバックとしての“悟り” ―インタープリター白隠の業績
三、 納得のシステム
四、 禅が現代に問いかけるもの
下部枠線
WEDGE最新号のご案内
2012年2月号

2012年2月号
(1月20日発売)

特集
「うつ100万人」は減らない

»詳細を見る

ひととき最新号のご案内
2012年2月号

2012年2月号

特集
椿─春つげる花

»詳細を見る

下部枠線
WEDGEInfinity へ
「ウェッジの書籍」の内容は、WEBマガジン「WEDGEInfinity」にて一部を読むことができます。
下部枠線