<大好評6刷>(2012年10月)
白隠慧鶴(一六八五~一七六八)という禅僧の名を聞いても、どういう方であったのかピンとくる方は、あまりいないでしょう。ましてや、いまや西洋世界も注目するZENが、彼によって広められたことを知る人も、意外に少ないのです。
白隠は、その功績から、「禅(臨済禅)の中興の祖」と呼ばれています。中国で生まれた「禅」を日本化したのです。室町時代以降、型にはまってしまい、あるいは知識ばかりになっていた公案(禅の修業者に課せられる問題)を生き生きと新しいものにし、日本語の公案もつくりました。そのシステムは、現在に至っています。
また白隠は、禅の教化の手段として、おびただしい墨蹟や禅画を人々に書き与えており、現在でもかなり多くのものが残っています。とくに一連の白隠禅画では、じつにさまざまな表現上の創意工夫がほどこされており、江戸時代のものとは思えぬような斬新な、時代を超えた表現方法が見られます。
本書では、それらのいくつかを見て、絵解きをしながら白隠が何を伝えようとしたのかを見ていきたいと思います。