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ヒトの心はどこから生まれるのか―生物学からみる心の進化
長谷川眞理子 編著

目次 立ち読み


さまざまな生物のなかで、人間だけが飛行機を飛ばしたり、戦争をしたり、学問をしたりしています。人間は、なぜかくも複雑な存在なのでしょうか? このことを考えるにあたっては、人間という存在をつき動かしている「心」を解明することが必至です。

本書は、従来、哲学や心理学、社会学など人文社会系の学問で膨大な蓄積がなされてきた「心とは何か」という問題にたいして、生物学からアプローチをする一冊です。

第一部では、動物行動学の事例から、さまざまな生き物の“心”とは何かを探ります。たとえば、女王アリを守るべく秩序正しい社会性を保つアリ、匂い(フェロモン成分)を介してコミュニケーションを図るイヌなどの行動には、“心”とも言うべき行動が見て取れます。
第二部の鼎談では、そうした事例を踏まえながら、そもそも生き物の“心”をどのように捉えるのか、他者の“心”に対する理解はどのようになされるべきか、ということについて、生物学、認知科学、哲学の見地から議論を行います。

人間の心を解明し、よりよい人間観を獲得していくことは、今後の現代社会のありようにも大きく関わるものとなるはずです。

<書籍データ>
◇B6判並製・176頁
◇1,470円(本体1,400円+税)
◇2008年10月20日

<著者プロフィール>
長谷川眞理子
(はせがわ・まりこ)
1976年東京大学理学部生物学科卒業。83年同大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。早稲田大学政治経済学部教授を経て、総合研究大学院大学教授。進化生物学専攻。著書に『クジャクの雄はなぜ美しい?』(紀伊國屋書店)、『進化生物学への道』(岩波書店)、『ダーウィンの足跡を訪ねて』『生き物をめぐる4つの「なぜ」』(ともに集英社)、訳書に『人間はどこまでチンパンジーか』(新曜社)他多数。

はじめに

なぜ人間は、こんな諸活動をする、特殊な生き物なのだろう? その鍵の一つは、「心」である。人間は、外界についても、自分についても、他者についても、さまざまなことを考え、感じ、それを伝える。そういう心の働きが、人間の文化を生み出している。この「心」こそが、人間を人間たらしめている特殊性の根源であろう。それでは、「心」とは何なのだろうか?(中略)

本書では、「心」とは何かについて、いくつかの側面から探求していきたい。しかし、「心」の科学に関する書物は大量に出版されているし、「心」の科学は多岐にわたる、たいへんに広い研究領域である。それらをすべて概説することはできないので、本書では、少し異なる視点を提供したいと思う。それは、人間と心にまつわるさまざまな二元論、二項対立的図式を再検討したい、ということである。それは、「心」と「からだ」、「遺伝」と「環境」、「本能」と「理性」、「本能」と「学習」、「意識」と「無意識」、そして、「動物」と「人間」といった二分法である。(中略)

近年の心の研究にかかわる自然科学の発展は、これらの二分法を大いに揺るがしてきた。「心」と「からだ」は密接に関連しあっている。「本能」という言葉は、もはやあまり意味がない。「遺伝」と「環境」という分け方は誤りである。人間は意識の部分だけで行動しているのではなく、意識下で行われている情報処理が非常に重要である。「動物」と「人間」と言っても、人間も動物であり、動物の祖先から進化してきた。それでも、これらの二分法は、相変わらず人々の思考の中に深く根をおろしている。どうも、人間は自分たちを本当に特殊な別格の生き物なのだと思いたいのだ。

これらの二分法を再検討すると言っても、これもまた大きな作業であり、本書の中で十分にすべてを検討できているわけではない。しかし、ここにまとめられたいくつかの考察をもとに、読者のみなさまご自身が、これらの二分法について、改めて考え直していただくきっかけになれば幸いである。(続きは本書でお読みください)
<目次>

はじめに

第1部 生物学からみる「心」のさまざま


第1章 心の探求
(長谷川眞理子・総合研究大学院大学)
・心身二元論
・現代科学による「心」の探求
・「遺伝と環境」という二元論
・本能と理性、本能と学習
・人間の「心」、動物の「心」
・意識と無意識
・匂いの感覚と認識
・進化の考えと社会生物学論争

第2章 動物の社会に見られる個体間の関係(粕谷英一・九州大学)
・はじめに
・巣とコロニー
・協同
・生物の進化
・利他性とは
・血縁選択
・半倍数性と血縁選択
・血縁関係を測る
・ワーカーという利他性進化と血縁選択―証拠
・直接B、C、rを測定
・多雌創設
・性比
・ポリシング
・結び

第3章 こころをえがく遺伝子―ふたご研究のはなし(安藤寿康・慶應義塾大学)
・遺伝のしくみ
・心を描く遺伝子
・遺伝は遺伝しない
・遺伝は変化する
・家庭環境は家族を類似させない
・遺伝率50%の世界
・イデオロギーの狭間の真実

特別寄稿 フェロモンを介する動物のコミュニケーション(森 裕司・東京大学)

・動物たちの豊かな匂いの世界
・ヒトの脳もフェロモンに反応する
・フェロモン研究の行方

第2部 座談会 人間の「心」とは何か―生物学、脳科学、哲学からのアプローチ
出席者:長谷川眞理子・岡ノ谷一夫(理化学研究所)・信原幸弘(東京大学)

1 「心」を知る ―心というものをどう捉えるか
2 心の出発点
3 心は何でできているか
4 現代社会における心のありかた
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