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気候は変えられるか?
鬼頭 昭雄 著

目次 立ち読み

2013年夏、高知県四万十市江川崎では観測史上最高気温を更新し、京都府・福井県・滋賀県に「特別警報」が発令され、10月には複数の台風が日本列島を襲った。そして、11月に入ってからも、台風第30号がフィリピンを通過し、想像をはるかに超える甚大な被害を引き起こした。
私たちを取り巻く自然環境は、いまどのように変化しているのか? 度重なる異常気象はなぜ起こるのか? 
2013年9月末に公表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第1作業部会第5次評価報告書の執筆者が、いま地球が抱える問題を解説し、将来の気候を読み解く。気候のしくみがよく分かる1冊!

<書籍データ>
◇B6判並製 240ページ
◇定価:本体1,400円+税
◇2013年11月20日発売

<著者プロフィール>

鬼頭昭雄(きとうあきお)
筑波大学生命環境系主幹研究員。1953年大阪市生まれ。京都大学大学院理学研究科地球物理学専攻、理学博士。専門は、気候モデリング、モンスーン、気候変動。1978年気象庁入庁後、2007年気象庁気象研究所気候研究部部長を経て、2013年5月より現職。また2011年より日本学術会議連携会員。
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第1作業部会評価報告書の執筆者を4度務める。第2次(1995):「気候モデル:評価」、第3次(2001):「モデル評価」、第4次(2007):「全球気候予測」、第5次(2013):「気候の現象およびその将来の地域規模気候変動との関連性」を執筆。

 

 

 

<立ち読み>

 2013年夏、日本は猛暑と大雨に見舞われました。中国大陸から日本にかけての広い地域を高気圧が覆ったことで、日本国内観測地点の3分の1で最高気温が35℃を超え、数地点で40℃を超えた日もありました。また「これまでに経験したことのないような大雨」と形容される気象情報も複数回出され、運用開始になったばかりの大雨に関する「特別警報」も出されました。そして、台風による大雨で土砂災害も起こりました。最高気温の記録更新には、工業化以降の地球の温暖化が底上げとなっていることは想像に難くありません。温暖化に伴って大気中の水蒸気量が増え、それが原因で雨の量が増えることも理解できます。将来の日本の気候はどうなるのでしょうか。将来の世界や日本の気候変動予測の「肝」は何なのでしょうか。

 2013年9月27日、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)」第1作業部会の第5次評価報告書の政策決定者向け要約が公表されました。これは気候変動の自然科学的根拠について、2007年に発行された第4次評価報告書以降の6年間の観測結果や研究成果をもとに、世界39カ国259人の研究者が4年の歳月をかけてまとめたものです。

 IPCCは、世界気象機関(WMO: World Meteorological Organization)と国連環境計画(UNEP: United Nations Environment Programme)との協力の下に、1988年に設立されました。その任務は、二酸化炭素等の温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化の科学的・技術的評価を行い、得られた知見を政策決定者はじめ、広く一般に利用してもらうことです。IPCCには、最高決議機関である総会と三つの作業部会、すなわち、第1作業部会(担当:自然科学的根拠)、第2作業部会(担当:影響・適応・脆弱性)、第3作業部会(担当:緩和策)と、各国における温室効果ガスの排出量・吸収量の目録の策定、普及および改定を行う運営委員会であるインベントリー・タスクフォースが置かれています。

 1990年以降、それぞれの作業部会による評価報告書が発行されており、2001年の第3次評価報告書からは全体を俯瞰する統合報告書も発行されています。それらの報告書は、世界中の自然科学および社会科学の研究者たちにより作成された、世界最新の研究成果の評価(アセスメント)であり、国連気候変動枠組条約、国連環境開発会議、締約国会議などにおいて、政策決定者の判断材料としてその機能を果たしてきました。また、IPCCは人為的に起こる地球温暖化の認知を高めたことを高く評価され、2007年に米国元副大統領アル・ゴアと共同でノーベル平和賞を受賞しました。

 IPCCの第1作業部会では、気候変動の自然科学的根拠の評価を担当しており、気候システムおよび気候変化について、世界的規模のみならず、地域的規模にも重点を置き、評価しています。気候変動の最新の実態はどうなっているのか、二酸化炭素に代表される温室効果ガスが地球の気候に与える影響について何が分かっているのか、地球の気候システムは長期的にどのように変わっていくのか、について答えるのが、この第1作業部会の役割です。

 第2作業部会では、影響・適応・脆弱性を担当しています。気候変化が生態系、社会・経済、人の健康などにどのような影響を与えるのか、それらの変化に適応していくにはどのような選択肢があるのか、について地域的規模および世界的規模で評価しています。

 第3作業部会では、温暖化の緩和策に関する科学・技術、環境、社会・経済の各面についての評価をしています。すなわち、気候の変化を緩和するために、どのような行動がなし得るのかの評価をしているのです。

 2007年に出されたIPCC第1作業部会第4次評価報告書では、

 ・気候システムの温暖化には疑う余地がない

 ・20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの観測された増加によってもたらされた可能性が非常に高い

 ・温室効果ガスの排出が現在以上の割合で増加し続けた場合、21世紀にはさらなる温暖化がもたらされ、その規模は20世紀に観測されたものより大きくなる可能性が非常に高い
と評価しており、この問題の深刻さと速やかな対応の必要性を示唆しました。

 今回2013年のIPCC第1作業部会第5次評価報告書では、

 ・人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な要因であった可能性が極めて高い
とし、人間の活動が原因で地球温暖化が起きている可能性は、「非常に高い」から「極めて高い」と上方修正されました。IPCCでは、確率が90%以上と判断した時に「可能性が非常に高い」とし、確率が95%以上と判断した時には「可能性が極めて高い」と表現する決まりになっています。6年前より確度が高まったということです。また、

 ・1880〜2012年において、世界の平均気温は0.85℃上昇した

 ・今世紀末に世界の平均気温が、1986〜2005年の平均と比べて、温室効果ガス濃度の低位安定化シナリオで約1℃(最小

 0.3〜最大1.7℃)、温室効果ガス濃度の最も高いシナリオで約3・7℃(最小2.6〜最大4.8℃)上がる

 ・ 今世紀末までに世界の海面が80センチメートル〜1メートル程度上昇する可能性がある

 ・ 二酸化炭素の削減対策をとらなければ、夏の北極海の海氷が今世紀半ばまでに消滅する可能性が高い
と、従来にも増して二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減が急務であることを示す内容となりました。

 ここで予測されている気温上昇は、2013年の夏に日本で起こった、「記録的猛暑」と「これまでに経験のない大雨」が、毎年のように起こることを意味しています。気候の変化は、長期的にじわじわと、私たちと関わりの強い気象に、バックグラウンドとして効果を発揮しているのです。二酸化炭素などの温室効果ガスの増加により気候が変わってしまった後に、それをもとに戻そうとするのは、大変困難です。変化する気候に、私たちはどう対処すればいいのでしょうか
──「はじめに」より

 

 

(続きは本書でお読み下さい)


 


 

 




<目次>

 

はじめに
序 章 四季に富んだ日本
第1章 異常気象はいつから現れたのか
第2章 地球の気候はどのように維持されているのか
第3章 気候は変えられるか
第4章 気候変動と上手く付き合うために
第5章 将来の気候予測の「きも」
第6章 これから気候はどうなるか
あとがき

 


 


 

 

 

 

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