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ネムリユスリカのふしぎな世界
―この昆虫は、なぜ「生き返る」ことができるのか?
黄川田隆洋 著

目次 立ち読み

 

世界でただ1ヶ所、ネムリユスリカの研究を手がけている施設が日本の「つくば市」にある。「独立行政法人 農業生物資源研究所」である。
ネムリユスリカとはなにか――。
魚釣りのエサにつかうアカムシ(幼虫)や、川や池の近くで群れをなして飛んでいる「蚊柱」(成虫)を御存じだろう。これが「ユスリカ」という蚊で、ハエ目ユスリカ科には、知られているだけで世界に1万5千種もいる。そのなかのただの1種、「ネムリユスリカ」だけが特殊な能力をもっている。体の水分を失い、カラカラに乾燥した状態の幼虫に、水を与えてやると、1時間たらずで「生き返る」のである。
乾燥した状態は「無代謝」、人間ならミイラ、イカなら干しイカである。いわば、干しイカを水に漬けてやると泳ぎだした、というような奇跡的な能力で、微生物には例があるが、目に見える大きさの昆虫類で、乾燥と蘇生を繰り返すことができるのはネムリユスリカのみである。乾燥状態で17年間睡りつづけた後、よみがえった記録が残っている。
著者は、この昆虫の不思議な能力に魅了され、10数年間、研究にたずさわってきた。ネムリユスリカは「死んだ」状態から、なぜ「生き返る」ことができるのか。この能力は、ほかの生き物に「移植」することができるのか。ネムリユスリカのDNAの研究からわかった「驚くべき事実」とは何なのか。驚異の昆虫の全貌がいま明らかになる。
「ネムリユスリカ」の名は、著者の属する乾燥耐性研究グループが「ねむり姫」から名づけた和名である。2014年、ネムリユスリカは宇宙へ行き、若田光一宇宙飛行士が乾燥したネムリユスリカをよみがえらせた。

<書籍データ>
◇B6判並製 184ページ
◇定価:本体1,600円+税
◇2014年12月22日発売

<著者プロフィール>
黄川田隆洋(きかわだ・たかひろ)
独立行政法人農業生物資源研究所遺伝子組換え研究センター昆虫機能研究開発ユニット 主任研究員 kikawada@affrc.go.jp
1994年岩手大学大学院農学研究科修了後、農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所に入所。2001年、組織改編により独立行政法人農業生物資源研究所 研究員。2009年東京工業大学から博士(工学)を授与。2011年より現職。

 

 

 

 

<立ち読み>

 

カラカラに干からびても、水をかけるだけでたちまち息を吹き返す生き物がいる。それは、100℃近い高温にも、マイナス270℃の超低温にも、ヒトが耐えられる量の1000倍近い放射線にも、アルコールに1週間も浸しても、全然平気な生き物です。しかも宇宙に放り出しても、死なない状態で存在し続けることができます。そんな生き物がいるなんて、SFの世界の話だと思うかもしれません。
でも、現実に存在します。ネムリユスリカというアフリカにしか生息しない昆虫は、そんな驚異の能力をもつ生き物です。
今から50年ほど前に発見されたその虫は、生物の能力にはまだまだ限界がないことを教えてくれます。アフリカのサバンナにある岩場の水たまりにひっそりと生きているちっぽけな虫が、人間を遙かに上回るストレス耐性を持つことを深く理解すればするほど、我々は全く霊長(全てに秀でた存在)などではないということを思い知らされます。
知恵は無いけど、人智を越えた環境耐性能力をもった奇妙な生き物の不思議な仕組みを紐解いてきました。その仕組みは、面白いだけに留まらず、人々の生活に役立つヒントを与えてくれそうだと期待しています。まずは、皆さんを、その不思議な世界に誘ってみたいと思います。

 


 

<目次>

まえがき 
第1部 ネムリユスリカのふしぎな世界
1 水がなくても生きてゆくには 
2 ネムリユスリカとはなにか 
3 細胞のなかで何が起きているのか 
4 ネムリユスリカはなぜ死なないのか 
5 ネムリユスリカ、宇宙へ行く 
第2部 無限の可能性に向かって
1 研究者に志した頃 
2 生死のはざまを生きる昆虫 
3 いかにして蘇生するか 
参考文献
あとがき

 

 


 


 

 

 

 

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