「花も嵐も踏み越えて 行くが男の生きる途?」 空前の大ヒットとなった映画「愛染かつら」の主題歌「旅の夜風」も、「貴様と俺とは同期の桜 おなじ兵学校の庭に咲く」と歌った「同期の桜」も、「若くあかるい歌声に なだれは消える花も咲く」と合唱した「青い山脈」も、そして「東京音頭」も「この世の花」も「王将」も、みんな西條八十のつくった歌だった。
フランス文学者であり、『かなりや』など童謡の作詞家、そして流行歌の作詞家として昭和の時代を大衆とともに駆け抜けた西條八十。しかし、その偉大な業績に比べて、西條八十はあまりにも忘れられた存在だった。
誰もが心の奥に抱いている昭和の記憶と切なく共振する思い出の歌の数々。哀愁に充ちた浪漫的情念、からっと明るい無常観といった庶民の心情をみごとにすくい上げた詩人・西條八十の生涯と、昭和という時代の意味をインタビュー、座談会などで多面的に描き出す。