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社会を変える驚きの数学
合原一幸 編著

目次 立ち読み


数学は、目的にもっとも有効な答えを導くための方法として知られています。加減乗除を使ってさまざまな数を任意に加工することはもちろん、列車の最短経路を調べる技術やキャッシュカードの暗号技術など、社会の至るところでその知見が使われています。

しかし数学は、数を無機質に扱うだけの学問ではありません。数学の哲学と技術は見事に応用され、わたしたちの生活を便利に、そして豊かにしてくれています。本書では、一見複雑で混沌とした日常の事象を数学的思考で見渡すことで、新しい視点や原則が見えてくる、そんな応用数学の魅力をたっぷりとお届けします。

第一章では、わたしたちの生命活動や、酔ったときの千鳥足(ランダムウォーク)、だまし絵が見せる錯視など、さまざまな現象を数学で解析することのおもしろさを探ります。
第二章では、「二十一世紀の数学像」と題し、日本の数学研究を牽引する三名が数学の魅力やエッセンスを語ってくれました。第三章で紹介するのは、数学研究の第一線で行われているトピックの数々です。たとえば、人間関係や音楽を数理モデルでとらえることはできるのか、学習における効果を数理モデル化することで、その応用にどのような期待ができるのか。わたしたちの複雑な社会を、数学的思考で考えたときに、どのような効果が得られるのか、その可能性をご紹介します。

日本の“数学最先端”や、社会に応用されている数学の成果を知ることで、数学の意外なおもしろさに気づくはずです。

<書籍データ>
◇B6判並製・220頁
◇定価:本体1400円+税
◇2008年6月20日発売

<著者プロフィール>
合原一幸
(あいはら・かずゆき)
東京大学生産技術研究所教授、科学技術振興機構・ERATO合原複雑数理モデルプロジェクト研究総括。専門は、カオス工学、数理工学、生命情報システム論。主著に『脳はここまで解明された』(ウェッジ)、『カオス――まったく新しい創造の波』(講談社)、『ニューラルコンピュータ・脳と神経に学ぶ』(東京電機大学出版局)、『複雑系がひらく世界――科学・技術・社会へのインパクト』(別冊日経サイエンス)など。

「数学はどれだけ世の中に役立っているのですか?」

よく聞かれる質問である。そして、学生時代数学にはずいぶん苦しめられたが、役に立ったためしはないと考える人は多い。しかしながら、実は数学は現代社会を根底で支えるとともに、様々な学問の基盤にもなっている。本書は、このような数学が拓く世界を一般の読者向けに紹介することを目的としている。

あまり知られていないかもしれないが、学問分野としての数学は、大きくふたつに分けられている。ひとつは「純粋数学」である。日本の大学のほとんどの数学科が対象としているのが、この純粋数学である。
(中略)
このような応用の種としての純粋数学の重要性が最近あらためて見直されてきている。数学のノーベル賞ともいわれるフィールズ賞受賞者の広中平祐先生は、「数学は科学技術すべての“母”である」と言われた。実に味わい深い言葉だと思う。さらに数学は、最近芸術にも応用されている。筆者の研究室の木本圭子さんは平成一八年度文化庁メディア芸術祭アート部門大賞を受賞したが、彼女の作品は多数の数式たちがコンピュータに支えられてダイナミカルに創り出したものだ。

他方で、応用数学や数理工学は様々な応用を指向し、そして実際に生み出しながら、現代の高度情報化社会をも根底で支えている。この分野の研究で重要な役割を果たすのが「数理モデル(数学モデル)」である。モデルと言う言葉は、たとえばプラモデルとかファッションモデルとかいう風に使われるが、これらと同様に数理モデルは現実に存在するものを少し単純化・理想化して模型にするものだ。ただし、数式を用いて。そして、この現実を写しとった数理モデルを数学の世界で解析し、その結果を現実にフィードバックしながら、現実を理解するとともにさらには制御や予測へとつなげていくことになる。

数理モデルの応用は、実に多様である。数学そのものを考える脳でさえもその対象になる。たとえば、脳を作っている細胞である神経細胞(ニューロン)の数理モデルが、一九五二年にイギリスのホジキンとハクスレイによって定式化され、この業績で彼らはノーベル生理学医学賞を受賞している。今では、脳の様々な機能のメカニズムが数理モデルを使って研究されている。さらに、数学者の脳が発明をどのようにして生み出すのかという問題は、昔から数学者自身によっても考察されて来ている。数学が、「数学を創造する脳」自体の理解にも役に立つのかもしれない。(続きは本書でお読みください)
<目次>

はじめに

第一章  日常を楽しむための数学散策

・生命の不思議を数理する  合原一幸(東京大学生産技術研究所)
・素数の神秘とその応用 諏訪紀幸(中央大学理工学部)
・酔歩の理論と応用 今野紀雄(横浜国立大学大学院工学研究院)
・錯視の数理 新井仁之(東京大学大学院数理科学研究科)

第二章  〔特別寄稿〕二十一世紀の数学像
・ラマヌジャン、数論、暗号 藤原正彦(お茶の水女子大学理学部)
・トポロジーの100年 小島定吉(東京工業大学大学院情報理工学研究科)
・無限と有限 広中平祐(財団法人数理科学振興会)

第三章 数学がかなえる未来―東京大学で行われている数学研究最前線
経済データの数理/人間関係の数理/腹話術の数理/複素数と情報処理/生体リズムの数理/脳とコンピュータをつなぐ数学/神経の統計学/強化学習の数理/音楽の数理/カオス理論の新展開/同期の数理

 

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