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これだけは知っておきたい認知症 Q&A 55
丸山 敬 著

目次 立ち読み

 

<本書 著者インタビューはこちら>

 最近、メディアで認知症が取りざたされています。新聞・雑誌などで、認知症・アルツハイマー病の文字を見かけない日はないほどです。65歳以上の10人に1人が認知症になると言われ、〈認知症800万人時代〉というキャッチフレーズが各誌面に躍っています。2013年12月にはロンドンで主要8カ国による「認知症サミット」も開かれ、認知症やアルツハイマー病はわが国だけでなく世界的な関心事となっています。
  では、「認知症ってなんですか?」とあらたまって聞かれると、正確な知識をもっている人は意外と少ないものです。年をとるにつれて誰しも記憶力が衰えてくるものですが、正常な老化と認知症とはどこが違うのでしょうか。また、認知症のなかにも、予防可能なもの、治療可能なものがあります。主として脳の血管障害によって起こる認知症ですが、こうした違いをよくわきまえていないと、適切な治療ができずに症状を進行させてしまうことになりかねません。

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<書籍データ>
◇B6判並製 200ページ
◇定価:本体1,400円+税
◇2014年2月20日発売
◇ISBN: 978-4-86310-122-7

<著者プロフィール>

丸山 敬(まるやま・けい)  
埼玉医科大学医学部薬理学教室教授。1957年生まれ。東京大学医学部医学科卒業後、東大医学系大学院で研究を開始。医学博士。カナダ・トロント大学医学部へ留学後、臨床研修を開始する。その後、東京都精神医学総合研究所、国立生理学研究所などを経て現職。
研究テーマはアルツハイマー病・アミロイドタンパク質の代謝、神経特異的遺伝子など。著書に『最新カラー図解 はじめての薬理学』(ナツメ社、 2013年)、『休み時間の薬理学』(講談社、2008年)、訳書に『イラストレイテッド薬理学』(監修・翻訳、丸善出版、2012年)、『アメリカ版大学生物学の教科書』全3巻(監修・翻訳、講談社ブルーバックス、2010年)など多数。

 

<立ち読み>

 

7 認知症にもいろいろある

●確実に予防可能な認知症

 認知症にもいろいろあり、確実に治療することができる認知症がある。25年以上前は認知症と言えば、脳血管障害によるものであった。20年ほど前から、アルツハイマー病の分子生物学が進歩し始めて有名になると、突然、アルツハイマー病の頻度が上昇しはじめた。そのため認知症とアルツハイマー病はほぼ同義で使われるようになっている。最近は、さらに別の種類の認知症も喧伝され始めているので、認知症の原因疾患の頻度はさらに変化することになろう。

 アルツハイマー病が突然増えたと記述した。これは脳血管障害の減少に伴ってアルツハイマー病が実際に増加したとも考えられるが、それまで脳血管障害と診断されていたのが、アルツハイマー病に診断されるようになったという要因もある。後で説明するが、脳血管障害ともアルツハイマー病とも異なる認知症に「レビー小体型認知症」というのがある。この認知症は最初に報告されたときは非常に希なものとされていたが、最近はアルツハイマー病に次ぐ地位を占めるようになった。おそらくそれまでアルツハイマー病と診断されていたのが、正しく診断されるようになったことが、増加の主要因と想像される。

 確実に予防可能な認知症は「脳血管性認知症」である。これは高血圧症や脂質異常症(いわゆる高コレステロール血症)によって血管がぼろぼろになり、詰まったり破れたりして、脳の循環不全により機能障害が生じるものである。いうまでもなく血圧を下げる薬、コレステロールを下げる薬、そして、メタボ対策(適切な食事と適度な運動)によりかなり防ぐことができる。

●レビー小体型認知症とピック病

 アルツハイマー病は原因不明(仮説は2章で説明する)で脳の神経細胞の機能が失われている疾患である。細胞の機能が失われることを「変性」というが、アルツハイマー病は神経変性による認知症の代表とも言える。

 脳血管性認知症は高血圧症や高コレステロール血症の治療によりかなり予防ができるとはいえ、高齢者の脳にはかなりの頻度で脳血管病変が生じている。アルツハイマー病といえども血管障害が加味されていると言える。アルツハイマー病以外の神経変性疾患による認知症としては、レビー小体型認知症と前頭側頭型認知症が注目されている。前頭側頭型型認知症の分類は未だ確定していないが、代表的なのがピック病である。脳血管性認知症以外はアルツハイマー病のみと思われがちだが、現時点では、それ以外にレビー小体型認知症とピック病があると考えておけばよいだろう。今後、もっともっと様々な認知症の原因疾患が明らかになってくると思われる。

 先に説明したように、レビー小体型認知症も最初は非常に稀とされていたが、近年はアルツハイマー病の次に位置されると言われる。突然、はやり始めたというのではないだろう。それまで脳血管性認知症と診断されていたのが、アルツハイマー病と診断され、さらにアルツハイマー病のかわりにレビー小体型認知症と診断されるようになったのだろう。

 各認知症の特徴を簡単に説明しておこう。アルツハイマー病は物忘れから始まり、日常活動ができなくなる認知症である。レビー小体型認知症は幻視(亡くなった親族が家にいるといった具体的なもの)が出現し、症状が著しく変動するのが特徴である。パーキンソン病という運動が低下する疾患を合併しやすい。ピック病の特徴は性格の悪化で、罵詈雑言や道徳を逸した行動が全面に出てくる。記憶力の低下は少なくとも初期はそれほど目立たない。

 新聞などではしきりに「早期発見・早期治療」が強調される。が、それをそのまま受け取ってはいけない。たとえば、癌については、すべての早期癌が本当に進行して生命を脅かすのかどうかは不明である。早期癌のようなものは、出ては消え、消えては出てくるという考え方もある。しかし、早期でも発見された以上は治療せざるを得ない。また、治療困難な進行癌が見いだされた場合には、早く発見されればされるほど、その癌と長くつきあっていかなくてはならない。

 アルツハイマー病も基本的には早く診断がついたからといって特別な治療法があるわけではない。しかしながら、認知症といってもいろいろなのがあり、比較的容易に治療できる認知症もある。アルツハイマー病と決めつけないで、治る認知症を見いだすという意味では、認知症を疑ったら早いうちに専門機関を一度は受診することは必要である。

 

 

 

 

(続きは本書でお読み下さい)

 


 


 

 




<目次>

 

まえがき 
1章 認知症ってなんですか?
1  脳の神経細胞は休むことなく働き続けている
2  脳の働きはどこまでわかっているのか
3  認知症ってなんですか?
4  認知症の定義とは?
5  認知症はどうして起こるのか?
6  認知症のなりかかり――軽度認知障害
7  認知症にもいろいろある  立ち読み
8  認知症を合併するパーキンソン病
9  レビー小体型認知症
10 ピック病
11 前頭側頭型認知症
12 鬱病と認知症
13 治る認知症
14 認知症の診断はどうするの?

 

2章 アルツハイマー病ってなんですか?
15 アルツハイマー病ってなんですか? 
16 タングルと老人斑 
17 アミロイド仮説 
18 アミロイド悪者説 
19 家族性アルツハイマー病 
20 若年性アルツハイマー病 
21 アルツハイマー病の原因遺伝子 
22 アルツハイマー病の診断 

 

3章 治療法
23 エビデンス――臨床研究という科学的根拠 
24 ネガティブ・フィードバック 
25 遺伝子治療 
26 体細胞の遺伝情報はすべて同じか? 
27 患者に合わせた治療法 
28 ワクチン療法と非特異的免疫療法 
29 アルツハイマー病のモデルマウス 
30 ネズミの学習テスト 
31 老いたネズミと若いネズミ――老化とはなにか 
32 マウスはマウス、ヒトはヒト 
33 捏造される論文 

 

4章 治療薬
34 コリンエステラーゼ阻害薬 
35 メマンチン 
36 老人斑生成阻害薬 
37 薬の心理的効果 
38 サプリメントは有効か? 
39 スタチン 
40 コエンザイムQ10 
41 医薬品だったコエンザイムQ10 
42 抗酸化物質 
43 アガリクス 
44 大豆イソフラボン 

 

5章 予防法あれこれ
45 早期発見・早期治療 
46 血圧は下げれば下げるほどよいか? 
47 糖尿病は万病のもと 
48 アルツハイマー病は3型糖尿病 
49 アルツハイマー病に「よい」食事 
50 微量元素とアルツハイマー病 
51 プリオン病 
52 ワインでアルツハイマー病を予防できるか? 
53 脳トレは有効か? 
54 認知症は鼻と腸管から? 
55 腸内細菌と疾患 

 

あとがき

 

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