上部枠線

生物学者と仏教学者 七つの対論
斎藤成也・佐々木閑 共著

目次 立ち読み


科学の発展は「合理性」や「法則性」を追求した結果の、その連続のもとに成立している。かつて世の物事はすべて「神」の視点から語られていたが、科学者たちがその「神の業」を解き明かすべく自然や現実世界を観察・実験を重ねるほど、「創造主の存在」という世界観からは離れていくことになった。これが「近代科学」発展の礎である。
一方、約2500年前に釈迦が創始した仏教は、現代の日本人が日常接している仏教とは様相を異にし、“絶対者”の存在を認めず、自己の精神的鍛錬で煩悩に打克って涅槃に到達することを目的としたもので、その合理性・法則性に沿う方法は、科学的思考と親和性がある。  本書は、「科学と宗教」という二つの世界観において、その類似点と相違点について、生物学者:斎藤成也氏と仏教学者:佐々木閑氏がそれぞれの知見から考察するものである。

<書籍データ>
◇B6判並製、364頁 
◇定価:本体1,400円+税
◇2009年11月20日発売

<著者プロフィール>
斎藤成也(さいとう・なるや)
1957年生まれ。東京大学理学部生物学科人類学課程卒業。東京大学大学院理学研究科人類学専攻修士課程修了後、米国テキサス大学ヒューストン校生物医科学大学院修了(Ph.D.)。現在、国立遺伝学研究所集団遺伝研究部門教授。主な著書に『遺伝子は35億年の夢を見る』(大和書房)、『DNAから見た日本人』(ちくま新書)、『ゲノム進化学入門』(共立出版)、編著に『ゲノムはここまで解明された』(ウェッジ)がある。

 佐々木閑(ささき・しずか)
1956年生まれ。京都大学工学部工業化学科および京都大学文学部哲学科仏教学専攻卒業。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。米国カリフォルニア大学バークレー校仏教学科留学。現在、花園大学教授。文学博士。主な著書に『出家とは何か』、『インド仏教変移論』、『犀の角たち』(以上、大蔵出版)、『日々是修行』(ちくま新書)、訳書に『大乗仏教概論』(鈴木大拙著 佐々木閑訳 岩波書店)がある。

 

第一の対論 物質と精神 生物学者の視点―斎藤成也
霊魂は存在しない
日本人は、どれくらいの人々が魂や霊魂の存在を信じているのだろうか。ある意識調査によれば、存在すると思っている人が、男性では4割弱、女性で5割強いるそうである。インターネットを利用している人を対象にしたアンケート調査なので、日本人一般で考えたら、割合はもっと高くなるだろう。
私は霊魂の存在を信じてはいない。もっとも、精神、あるいはこころの存在は受け入れる。問題は死後の話であり、ある人間が死ねば、その人間のこころも滅びるはずである。ところが霊魂と言うとき、普通は死後も存在するものを考えるのではなかろうか。若い時からのスターウォーズ・ファンとしては、オビワンやヨーダが、死後もこの世とかかわりを持つすがたをほほえましく思うが、これはあくまでもファンタジーの世界の話である。死んでしまった人々が、七個のドラゴンボールで呼び出された龍によってつぎつぎと生き返るドラゴンボールZの話も、痛快ではあるが、コミックのなかの話である。……(以下略)

 

第一の対論 物質と精神 仏教学者の視点―佐々木閑
釈迦は輪廻を「苦」と見た
約二五〇〇年前の古代インドで仏教が生まれた頃、一般的なインド人の世界観は、輪廻と業が基本原理だった。この世は無限の過去から無限の未来へと果てしなく続いており、その中で我々は生まれ変わり死に変わりを、何度も何度も、まさしく永遠に繰り返していく。これが輪廻である。「あなたは輪廻したいか、それともしたくないか」と尋ねられたら、誰でも答えに詰まる。なぜなら、輪廻それ自体は、幸福とも不幸とも判断のつかない、単なる現象だからである。永遠に「不幸な状態が続いていく」のなら、輪廻などしたくないし、逆に「幸福な状態が続いていく」なら、それはまことに結構なことである。輪廻を、不幸の繰り返しと見るか、それとも幸せの永続と見るか、そこに価値観の分かれ目がある。もしもこの世に慈悲深い絶対者がいて、その恩寵によって永遠の幸福が得られると考えるなら、そういう生き死にの繰り返しも喜ばしいものになる。「神とともに永遠に生きる」という思いがかなうからである。これは、キリスト教やイスラム教における「天国の生活」と幾分似たものである。ところが、仏教が生まれてきた頃のインドでは、そういった絶対者の存在を否定する傾向が強くなってきていた。……(続きは本書でお読み下さい)

 


<目次>
第1部
第一の対論 物質と精神 
生物学者の視点―斎藤成也・仏教学者の視点―佐々木閑
第二の対論 意識と無意識 
生物学者の視点―斎藤成也・仏教学者の視点―佐々木閑
第三の対論 生と死 
生物学者の視点―斎藤成也・仏教学者の視点―佐々木閑
第四の対論 科学と宗教における絶対的存在 
生物学者の視点―斎藤成也・仏教学者の視点―佐々木閑
第五の対論 科学と宗教の重なる部分 
生物学者の視点―斎藤成也・仏教学者の視点―佐々木閑
第六の対論 科学と宗教の将来 
生物学者の視点―斎藤成也・仏教学者の視点―佐々木閑

第2部
第七の対論 科学と宗教 


 

 
 

 

下部枠線
Wedge最新号のご案内
2016年6月号

2016年6月号
(5月20日発売)

特集
自動車産業が壊れる日 自動運転の〝先〟にある新秩序

»詳細を見る

ひととき最新号のご案内
2016年6月号

2016年6月号

特集
だから、伊勢の味は日本の味

»詳細を見る

下部枠線
WEDGEInfinity へ
「ウェッジの書籍」の内容は、WEBマガジン「WEDGEInfinity」にて一部を読むことができます。
下部枠線